TAC「4A基礎講座」関係の告知 』という記事に、

「成川豊彦先生の12月9日の司法試験ブログの記事で最近の受験生の再現答案中心の勉強姿勢について批判をしています。」

「中村先生が提唱されている再現答案を見ながら合格ラインギリギリのレベルを見据える勉強法とは真っ向から対立していると思います。」

「どちらが正しいのでしょうか?」

という旨のコメント(№92)をいただいた。


これに対し、私は、以下のように返信した(№93)。

「成川先生も、その記事の最後のところで、「合格者答案」を気休めに見るのは意味がある旨を書いていますから、重点は異なるにせよ、これと出題趣旨・採点実感等と併用する点は同じといえると思います。
違うのは2点。
・両者への重点の置き方(私は再現答案がメインで、それを読み解くための補助資料として出題趣旨・採点実感等を使うスタンス)
・私は“不合格者答案”も見るべきだと考えていること
です。
ようやくテキスト地獄から脱出できたので、近いうちに記事にしてみようかと思います。」


で、記事の構想を練っていたところ、そういえばNOAさんのブログ『司法試験情報局』で同様の記事を見たことあるかも…と気づいて探してみたら、ありました。

再現答案 vs. 出題趣旨

この記事で、理論的なところはほぼ語り尽くされていると思うので、まずはこれを読んでください。


その上で、やや蛇足気味に、3つ付け加える。


1.まず、NOAさんとランチしていて、「大は小を兼ねる教」の落とし穴を感覚的に伝えるには?という話から出てきた具体例。

“エベレストに登る重装備で、東京の高尾山に登る”

司法試験系における「大は小を兼ねる教」は、これとだいたい同じだと思う。

いきなり「大」を目指すと、少なくとも「小」の実現においては、遅れをとるのだ。


2.次に、「再現答案には穴が多い」論について。

まずは、『問題を「解く」とはどういうことか?~その2 』を読んでほしい。

要するに、間違えることが本質的に重要だということを説いている。

で、再現答案ってのは、あの厳しい本試験現場で、我々の身代わりになって、間違いを重ねて傷だらけになった姿を、堂々と晒してくれているものなのだ。

少なくとも、本試験にできる限り近い条件下で答案を書いた経験のある人ならば、その傷や「穴」こそが最も雄弁であることを実感できるはず…その傷や「穴」こそが、我々に、その再現答案作成者の間違いを追体験させてくれるのだ。

だから、私は、上中下位の再現答案どころか、合格ラインに達していない再現答案も見るべきだと考えている。


ただ、特に可処分時間が少ない人は、そんなに多くの再現答案を見る暇もないと思うので、やはり合格ラインギリギリの再現答案を見るのが最優先(cf.『上位合格を狙う≠合格可能性を上げる 』)。その次に何を見るかは、好みが分かれるところだけど、たとえば上位再現答案と合格ラインに達していない再現答案を見比べるとかやってみてはいかが?

あと、直前期に論文過去問を解くときに見る答案(直前期になってたくさんの答案を見るのでは手遅れの人が多いよ~)をセレクトしていくという方法もオススメ。ちなみに私も受験生時代、問題によっては10通以上の予備校答案のセレクト作業をやっていた(cf.『憲法過去問答案(構成)採用リスト 』以下の記事)。当時の私は、再現答案分析は充分すぎるほどやっていて、むしろ予備校答案的な要素が足りなかったからだ。このセレクト作業によって、答案の細かい内容にこだわらずに、答案の共通点(≒合格要件)と相違点(≒加点事由)をあぶり出せたように思う。


このように再現答案を見つつ、できれば出題趣旨や採点実感等にも目を通せるといいな~という感じ。再現答案を見ながら、なぜこの答案が上位・下位・不合格なのかを解明する手がかりを探す一資料として扱うとかね。


3.ただ、成川先生のブログをザッと見た限りでは、どうやら超上位合格を目的としているような気がする。

もしそうだとすると、出題者の提示する完全解が書いてある出題趣旨や採点実感等を重視するのは、理論的には筋が通っているといえなくもない。少なくとも、「基本書等を読み込まないと上位合格できない」といった言説と比べればね。

問題は、出題趣旨や採点実感等を重視した勉強によって、現実的に、初見の本試験問題が解けて、答案が書けるのか?という実践面だ。

具体的・実践的に何をやるのか、よく分からなかったので、この点については沈黙しておく。

誰かご存知の方、教えて~(^人^)