Requiem et Reminiscence~鎮魂と再生~(中編) | 空白の瞬間

Requiem et Reminiscence~鎮魂と再生~(中編)

LAST VISUALIVEに向けてのおさらい記事その5いきます。
まだの方は先にこちらに目を通して下さいね。

【1】ソロ始動に繋がるマリスのストーリーおさらい
http://ameblo.jp/xxxxasukaxxxx/entry-12098655456.html

【2】MARS~空からの訪問者~(前編)
http://ameblo.jp/xxxxasukaxxxx/entry-12104129073.html

【3】MARS~空からの訪問者~(後編)
http://ameblo.jp/xxxxasukaxxxx/entry-12115674521.html

【4】Requiem et Reminiscence~鎮魂と再生~(前編)
http://ameblo.jp/xxxxasukaxxxx/entry-12117518897.html



『Sayonara』が終わった後のステージで
白い服を着た女性が軍服姿のGacktさんを撃ちます。
撃った後の女性が膝から崩れ落ちることから
ただの敵ではなく何かしらの葛藤の末に殺したような雰囲気。



「泣いてた昨日までの僕」を殺したのなら、女性じゃない方がしっくりくるので
『seven』でお腹にマイクを刺したのとは意味が違いそう。
となると残る選択肢は「愛した大切な人」です。

表のストーリーで考えても意味が分かりませんが裏だと納得の展開。
Gacktさんのことが好きだったけれど、もうついていけないと感じたファンが
「さよなら」と言って離れていくことを表現したシーンだと思います。


RRツアーでは1つのステージが4つのミッションとして区切られていて
前回書いた部分が-1st Mission-で、ここからが-2nd Mission-とされています。
これは魂(記憶と意思)の入れ物=体が何であるかで区切られているんじゃないかと。
1stはサイボーグ、2ndは入れ物を失って体から離脱していきます。

この銃殺シーンが大きな鍵となり、存在が見えない関係が始まります。



Secret Garden

タイトル解釈は「極秘の手術室」。
『Rebirth』のブックレットに廃墟と化した手術室に葉っぱが生い茂った写真があり
シングルのジャケット写真にリンクしていると思います。
全裸は生まれる時の姿の象徴。
「極秘に誕生した罪深いサイボーグ」という感じだと思います。



この曲はプロトが記憶を取り戻して、軍から姿を消すことを決意する時のお話。
『月の詩』MVの設定が濁ってきたので一旦置いておいて
教会で爆破はせず、懺悔の後にまだ生きていると考え直します…。

硝子の中に瞳が浮いていて君を見てる状態というのは
サイボーグであるプロトのアイモニターにエレナの姿が映っているんだと思います。
人物検索で次々と色んな女性を映す「目の前に現れては消え」の後
この記憶だ!って確信してエレナとの思い出をアイモニターで再生してる描写。

愛しさが募るものの、アイモニター越しに見る自分の体では
記憶をなくしたくてサイボーグになった罪悪感を実感した筈。
このまま殺戮マシーンでい続けたくないと、自ら「体中に巡るプラグをはずし」ます。
当然、電源を抜いた機械は動かなくなります。

RRⅡでゼロが動く様子を見ると実際にコードが体から出ているわけではないので
「背中に刺したナイフ」というのが自害を意味する流れでしょうか。
普通に考えて自分の背中にナイフって刺しづらいと思うんですが
自害で「刺した」のか、戦争で「刺された」のか
『月の詩』PVみたいな爆発で「刺さった」のか分かりませんが、抵抗するつもりはなかった筈。

「宇宙を煽ぎ続け」とあるので、上体は両手が広がって上向きのようです。
PVのこのポーズが多分そのイメージかと。



その時視界に映った空を見て「今からエレナの元へ行くよ」と死を覚悟し
まるでナイフが羽のようだと感じたんですね。
ここで『OASIS』の「翼を広げ空へ舞い上がれ」に繋がってきました。

車や飛行機が事故を起こしたら爆発して炎上するように
サイボーグも燃料で動いていた機械なら最期は同じく燃える気がします。
しかし、自分から「記憶の媒体(サイボーグの体)を焼き尽くす」意思が見え
『OASIS』の「焼かれる前に太陽になれ(自分で燃えろ)」に繋がります。
「風に乗り空へ導いて」は幽体離脱した魂のことだったんですね。
「君(エレナのこと)だけを」考えてプロトは空へ向かいます。

このシングルのジャケットは縦長の大きなボックスでしたが
実は裏面と繋がった1枚の写真になっています。
当時CD屋さんに頼んで貰って来たボードだと全体図が分かりやすいかな。
1輪の白い花が添えられています。



この光景は『Le ciel~空白の彼方へ~』のPVで死んだ少女と同じ。



となると、これは「輪廻が繰り返される物語」の始まりでもある気がしてきました。
おさらい記事の最初のマリス考察内にも書きましたが
あのPVの少女は話を分かりやすくしたモデルでしかないのです。


裏の解釈。

『小公女』『小公子』を書いた有名な小説家フランシス・ホジソン・バーネットの作品に
『The Secret Garden』(邦題:秘密の花園)というお話があります。
亡くなった妻との思い出が溢れる庭に鍵をかけて
「思い出を閉じ込める」という意味で名付けられたタイトルです。

Gacktさんにも、ファンたちにも、そんな大切な思い出がありました。
Gardenを花園ではなく楽園と訳せば、ここまでの考察に何度も出ている言葉です。

誰にも触れられずそっとしておきたい大切な記憶。
別の人が語る過去は「異なる追憶」だから
自分が信じてきた過去を崩されてしまうかもしれない。

Gacktさんは「嘘」「偽り」とマリスメンバーに言われました。
ファンは「キミがなぞっていたのはクローンだ」と言われました。

ならば鍵をかけて誰も入れないように、そっと自分だけのものにしてた方がいい。
「でも もう気付いているよ」
「"信じる者は救われる"なんて」ありえないことに。

「大きく腕を振りあげた君」とは、ライヴに来たファンのよくある姿。
Gacktー!って叫びながら手をあげますよね。
『uncontrol』で「踊り狂えばいい」と言っていたのはこのことで
「震え」ることがあっても、思わずはしゃいじゃうならそれでいいじゃないかという。
難しいこといっぱいあるけど、一緒にいて楽しいって思う感覚も確かにあるよね?と。

でもライヴには「現れ」ずに、鍵をあける気のないファンも当然いるわけで。
そんな、かつて花束をくれた『Sayonara』することを決めた人たちには
「もう君の中で消えてしまうなら忘れないで…抱きしめたことを」と言っています。

後にリリースされる『Last Song』の歌詞も同じです。
「寄りそって抱き合った温もりは忘れないでね 違う誰かを愛しても」
離れると決めたなら強引に引き留めても無駄だと分かっているけど
せめて好意があったことを否定しないで欲しい
最後が苦痛でも、楽しかった思い出だって確かにあったことを忘れないでいてねと。

そうやって現実から逃避する秘密の楽園を「夢の中」と表現しているのに対し
Gacktさんが今抱えている「腕の中」にはライヴに「現れ」たファンがいます。

「最後の楽園」の最後が意味するものは
もう今後こんな素晴らしい場所は見つからないだろうというニュアンス。
「マリス以上の凄いバンドなんて現れるわけがない」と確信してるミゼラーは多いし
Gacktさんにとっても、最後の望みをかけた楽園。
絶対にこの子たちは裏切っちゃいけない、大切にしようという強い意思を感じます。


「信号」はKamiくんが亡くなって新ボーカル加入前だった
当時のマリスメンバー3人のテーマカラーでした。
Mana様=青、Koziさん=赤、Yu~kiちゃん=黄色。
「優しさの破片も見えない繰り返される信号が口元にだけ愛を語り続け」
というフレーズは、マリスが批判されたように感じて物凄くショックでした。

脱退したけど「僕はMALICE MIZERを愛してる」と言ったGacktさんと
マリスを守ることを誓い、活動を続ける決意表明をしながらも
「Gacktと絆を感じないまま僕らは誤魔化しながらやってた」と言ったYu~kiちゃん。
私が感銘を受けた作品が誤魔化したものだったなんてあまりにショックで
Gacktさん同様に過去を否定されて足場はとても不安定でした。

マリスを本当に大切にしてるのはどっちなんだろうという考えがぐるぐるしてた当時の私には
口元にだけ愛を語ってるのは残ったメンバーなんじゃないかって発想が元々あったんですね。
Gacktさんに対して確かに優しくなかったし、しっくり来すぎてしまった。

仲直りを求めに行ってくれると信じてたGacktさんに望みを絶たれた気がしました。
私がマリスを好きなままGacktファンでいることすら否定された気がして
この歌詞をきっかけに、私はゆっくり時間をかけて楽園に鍵をかけ始めます。
積り積った嘆きがあったからですが、直接引き金を引いたのはこんな勘違い。

今は当たり前に理解出来るGACKTさんの価値観が当時は分からなかったから。
本当にマリスを大切に思っているのか
ミゼラーに対してどこまで本気で向き合う気があるのか
どこを目指して誰に何を訴えようとしているのか。
今まで大切にしていたものが全て壊れて不安だらけの疑心暗鬼な中で
何をどう受け取ったらいいのか本当に手探りの時代でした。
だからこそ彼は繰り返し叫んで伝えようとしてきた今日までの軌跡があります。

「愛してる」と言ったのはGacktさんだけだったと、何年も経ってから気付きました。
「(僕の)優しさの破片も(マリスメンバーたちには)見えない」
まるで心が伴わずに「口元にだけ愛を語り続け」ているようにしか見えなかったから
マリス側は自分を批判したんだろう、というGacktさんの解釈の話だったんですね。

「彼はマリスミゼルを愛してるって言ってますが
 それならどうして今回のような行動をとったのか信じられません」
と怒りをあらわにしていたKamiくん。
Gacktさんは自分の愛が全く伝わらなかったことを知ったのです。

今まで一方的に絆を感じていた感覚(夢)から目を覚まし
「現実を見た」=現状を冷静に受け止めたということなんだと思います。
繰り返しますが、現実をそらと読んでいるのは空は元いた場所=マリスのことだからです。


ライヴではこの曲も紫が目立つ照明。
マリス全員の批判を浴びた中でも、Kamiくんの言葉は特別刺さったのだろうし
それをもう撤回する機会がないからこそ歯痒いのかもしれません。



歌い出しの「君を見てた」のところも空に向けて手を伸ばしています。




この曲のPVはバスターミナルか空港の待合場所でしょうか。
「色んな人がたくさん行き交う場所」を表現する為に選んだ場所だそうです。
しかしGacktさんは他の人には見えていないようで、幽霊なんですね。



自動ドアの前に立ってセンサーが反応しなかった時
「私ここにいるのに!」って存在を認識して欲しくなるあの感覚が
このPVにおける幽霊の意味だと思います。
「マリスを愛してるって言ってるのに」全く伝わらない状況を描いた映像。

花束を持った女性が何度も映るのは
「手にした花束も過去の姿をなくしてしまって」を表現している気がします。
その花束(優しい想いの象徴)は自分には捧げられずに目の前を通り過ぎていくっていう。



でも1人の女性には見えているのかもしれないと感じる視線があり
少しでも自分を見てくれようとする人がいるのなら
そこに希望を託そうと「君だけを見た」と自分の存在を訴え続けることにしたのだと思います。
99人がGacktさんのマリス愛を否定しても1人は分かってくれる人がいた、ということ。





Kalmia

カルミアとは、白っぽい花を咲かせる木のこと。



この曲では死んだプロトが空へ向かうシーンが描かれています。

地面から浮いて、魂が空へ向かいながら「街を遠くから眺めていた」。
そこでは戦争の荒んだ喧騒は「聞こえなくて」
「首のない人形(死んだ人たちの魂)が」
生前の苦しみから解放されて「笑ってる(安らかに微笑んでる)」。

「泣き叫びながら」「生まれた場所へ」(産声を上げて生まれた場所へ)
=「宇宙(そら)へ還っていく」

「僕の」頬を伝って「流れ落ちた」「涙を受けとめたときに」
「(爆破する自分の体が)砕けてゆく音まで」何も聞こえなくなって
「すべては消えてゆく」のだと感じた。
(涙を拭ったタイミングでプロトは死を迎えた)

「黄昏(夕暮れ時)」の「カルミア」の白い花が
夕焼けのオレンジと溶け合った熱そうな色に染まっている。
太陽は沈んで夜になり、暫く経てばきっと夜は明ける。

「夜明けのまばたき(生まれ変わった新しい世界)」があるなら救われるけど
「夜明けのさよなら(現世への別れ)は今の僕には哀し過ぎて」
一緒に空に向かう他の人たちのように穏やかに微笑むことは出来ず
「僕の笑い声は喜劇のように」ちょっと不自然だ。

「飛び散るガラスの」音で夜も安心して眠れない戦争。
燃え上がる炎で「歪んだ(本来の形と変わってしまった)街」に
空に浮いた僕の涙が「一雫の雨」となって消火してあげられたらいいのに。
それが戦争でたくさんの命を奪った罪深い僕の「最期の祈り」。


続いて裏の解釈。

「街」という単語は『uncertain memory』で
「凍りついた町並み」=冷え切った関係の人たちがいる場所=「消え去る楽園」と表され
自分だけ一方的に信じていた過去のマリスを意味します。
「歪んで」バランスを崩し「何も(新しく生まれる音は)聞こえない」
既に終わってしまった2期MALICE MIZER。

ここで言う「首のない人形」は
『NINE SPIRAL』の「声を奪われて目を塞がれた君」のこと。
Gacktさんを見ることをやめて、声援を送ることをやめた、かつてのファンです。

ミゼラーとして「生まれた場所」はファンになった当時のマリス。
「君も」「君も」「君も」皆
「古き良き時代はどこに行ったの?」と過去のマリスを求めていて
自分から離れていった「たくさん」のファンが今を歩くことをやめ
過去のマリスに触れて楽しそうに「笑ってる」光景。

「小鳥の群れ」は『Dears』の「自由を求める鳥の群れ」のこと。
Gacktさんが自由を求めた代償に傷付けた「君」は
マリスじゃなきゃ嫌だと「宇宙(そら)を見上げたまま」過去を恋しがり
「泣き叫びながら」思い出の中のマリスに帰っていったのです。

「こぼれた涙を受け止めた」とは
『Le ciel』の歌詞にも「こぼれ落ちる涙はお別れの言葉」とありますが
悲しみが心の中に留まらず外に溢れ出て、目に見えて実感する表現。
Gacktさんが脱退前に想像していたよりずっと
ファンは深く傷付き、絶望して苦しんでたってことでしょうね。
悲しみや苦痛をハッキリ認識したファンはGacktさんとの『Sayonara』を決意し
Gacktさん自身もその現実を「受け止めた(理解した)」と。

ソロになっても大半はついてきてくれるだろうと思っていた甘い考えが
「砕けてゆく」音。
そんな状況に悲しむGacktさんの涙も共に「流れ落ちた」。


「黄昏」とは、沈んだ夕陽の赤みが空に残っている時間のこと。
一般的なカルミアは蕾の時は赤くて、花開くと白に変わることから
「カルミアの黄昏」=カルミアの花が赤い時=蕾を意味するんだと思います。



蕾は花開く未来がある途中段階。
天下を取ろうとしていたマリスのことを蕾と表現したんじゃないでしょうか。

Gacktさん加入前のマリスもインディーズシーンで異色を放ち
怖いもの見たさが話題を呼んで、バカにされながらも虜を獲得していきましたが
常識に捉われないGacktさんの加入によって「普通のバンドっぽさ」が更になくなって
音楽シーンでも唯一無二の存在として認知度が急上昇しました。
動員をグイグイ伸ばして、待望のメジャーデビューで華々しく世間にエリアを広げます。
バカにしていた人たちも見直す程の快進撃でした。

TVや雑誌では「究極のビジュアル系」と呼ばれ
連日メディアに引っ張りだこの超人気アーティストになりました。
武道館も横アリも発売開始と同時に即ソールドするくらい皆が求めていたバンドです。
しかし本人たちはまだまだこんなのは序の口で
やりたいことがやっと少しずつ実現し始めたばかりだと語っていた時期に
Gacktさんが失踪し、脱退していきました。

まさにこれからという、花開く直前だったMALICE MIZER。

予算が増えたから今度はこんなことも出来るかな
そうだね、俺はこんなものを作ってみたい
皆をあっと驚かせることしたいよね
こんなのはどう?
それ面白そうだね、どうやったら実現するかな
えーとね、こうやったらうまくいくんじゃないかな?
すごい!それいいね!!

各メンバーのアイディアが「溶け合うほど」
夢を語るミーティングが「熱くなって」いた懐かしい思い出。
あまりに楽しくて、柄にもなく「喜劇のように」大きな「笑い声」をあげた。

『seven』に「硝子の夢」とあるので「ガラス」は夢を意味する筈。
しかし描いていた夢(未来予想図)は割れて飛び散って
心地良い夢の世界から叩き起こされ「眠りを邪魔された」と「泣き叫ぶ」。

私にとってはクローンだと突きつけられたことが「眠りを邪魔された」でした。
そんな現実知りたくなかったよって思いながら、当時このフレーズをよく口ずさんでました。
他の細かい考察はあまり追求していなかったけど
心地良かった世界が壊された意識にとてもシンクロしやすい歌詞でした。


「君も生まれた場所へ泣き叫びながら」の主語は「君」
「冷たい月が泣き叫ぶ」の主語は「月」
君と月、どちらも泣き叫んでいます。

月には殆ど大気がなく、地史学的には死んだ星と言われています。
(月面に水が発見されたのはこのツアーより後のことで、当時は大気圏も気象もないとされていた)
「凍りついた町」も機能していない場所として同じニュアンス。
そんな場所にいる首のない人形=君。
死んだ場所に死んだ者がいることになります。

つまり、月は2期MALICE MIZERの象徴であり
そこに縋るミゼラーの象徴でもあるんじゃないかと。
この先掲げられるMOON PROJECTにはそんな意味もあると思います。



Cube

プロトが爆破するシーンの詳細。

「踊り続けた」は立っていられずよろめいている姿。
背中から刺されたナイフ(矢)の先端は前を向いていて「空を見上げ」とあるので
「胸をつらぬく矢が」「指し示す」行き先はやはり空です。



月も太陽と同じように地平線近くにいる時は赤く見えます。
地平線近くということは地球と距離が近くて、大きく見えるので迫力を感じる筈。
そんないつもと違う空の様子は神秘的で
「深紅な月が肌を溶かし あるがままの姿になれと真実の僕をさらけだそうとする」
と、まるで空が意思を持って自分を燃やしているかのように感じたんですね。

プロトの罪は、大切な人を忘れようとしたことと、戦争でたくさんの人を殺したこと。
それらを自分の命を持って償う光景。
色んなパーツが埋め込まれた体が爆破して解体されていきます。
「痛みなど(感じる機能は)ないはずの心が」
サイボーグになった後悔から解放されることに「喜びを感じてる」。

「銀色の木々が銅色の僕の躯を侵食して」は爆発する光景。
炎の色が銅色、細長く伸びる煙は銀色の木々に見えます。



「僕の姿が見えますか?」
飛び散って行く「(機械化された)僕の(忌わしい)破片が見えますか?」
空に向いて語りかけたら「貴方(エレナ)にもこの声が届いているはず」。

体が燃えて「あるがままの姿」を取り戻した「僕の心が見えますか?」
もう二度と「こなごなにこの記憶をこわしてください」なんて言わないから
「からっぽの(何のパーツも埋め込まれていない頃の)躰にもどして…」。

『Cube』は機械パーツや魂が入っていた箱という意味です。
「躯」はサイボーグ、「躰」は肉体という漢字の使い分けがされています。


裏の意味。

ファンが離れてしまい、心に穴が開いたGacktさん。
裏ではその「心」が『Cube』です。

この曲が収録されたシングル『君のためにできること』のリリースで
うたばんに出演した時「ゴキブリって凄いよね」というトークをしました。
「あんなに人間に嫌われてるのに人前に出てくるんだよ」と理由を添えて。
私はTVに出演しているGacktさん自身に重ねた発言だとしか思えませんでした。

どんなに憎まれても忘れられたくない。
批判されるきっかけになるだけだったとしても、自分の姿を見て欲しい。

「僕の姿が見えますか?」
「この閉ざされた世界なら(TVをつけた時に僕が映るなら)
 (物理的には)貴方にもこの声が届いているはず」

「僕の心(マリス愛やファンへの深い想い)が見えますか?」
「もう二度と離さないから
 (君を失って)からっぽのこの躰(心)にもどして…」

「塞がれた雲」は、マリスを意味する空と、自分のいる大地の壁となるもの。
その「隙間から」Gacktさんは空の様子を見ています。
そこには「僕の記憶を切り離して(僕のことを忘れようとして)」
『Sayonara』と言って「別れもすませたはず」の君がまだ「哀しみに」泣いている姿が。

私は『Secret Garden』で楽園にゆっくりと鍵をかけ始めたものの
そんなにスッパリ関係を絶てなかったからこのうたばんも見ていました。
嫌いとか飽きたからファンをやめるんじゃなく
辛いから離れようとしてた私の毎日に涙はつきものでした。

ほんの少しなら僕の想いが分かってくれますか?
(僕の破片が見えますか?)

離れることを決意した後でも、僕が君を求めていることは気付いているはず
(この閉ざされた世界でも貴方への祈りなら届いているはず)

僕と離れることでもう泣かなくなりますか?
(涙の痕は消えますか?)

本当にもう二度と好きになれないと思うなら
これ以上苦しまないように僕のことを忘れて下さい
(もう二度と戻れないならこなごなにこの記憶を壊してください)

とは言え、最後に繰り返されるフレーズの方が強く響きます。
塞がれた雲の隙間が少しでも広がるように、同じ問いかけを繰り返している気がします。

「僕の姿が見えますか?」
「もう二度と離さないからからっぽのこの躰にもどして…」



鶺鴒~sekirey~

新しく見えたことを踏まえて再考察。

『U+K』で「風」は死者の魂を意味すると分かったので
「風の声を聞いた」というのは、死者の声に耳を傾けたということに。

表の意味。
「君だけにはわかっていてほしい還らなければいけないことを」
というのは、空にいるエレナからのメッセージで
いつか人は皆死ぬものだから空でまた会いましょうという感じでしょうか。
けれどプロトにはその声が聞こえず(誰も教えてはくれない)
ただひたすら傷付いて悲しんでいる様子(胸が赤く染まった)。
広大な大地で叫んでもその想いがエレナに届かないと嘆いている感じ。

『Rebirth』のブックレットには軍服のGacktさんが雪に埋もれる写真があります。
空からの訪問者との設定解釈がややこしくなるんですが
全ては裏の意味を分かりやすく表現する為の設定だと思ってるので仕方ないのかな…。
ナイフで爆発する最期の設定どうなっちゃうの?だし
カルミアが咲く季節と雪の降る季節も一致しない筈(汗)。



「空からの優しさと共に眠って」というのは土に還ることで
空にいるエレナが会いたがって呼んでいる「優しさ」という意味かなと。

『Cube』の「銀色の木々」は雪(白銀)が積もった場所のこととも読めます。
銅色は美白感はないですが肌の色。
雪に埋もれるシーンは雪が体を浸蝕してるとも言えます。



寒くてかじかんで震えている指には感覚がないはずなのに
(痛みなどないはずの心が)
大地のぬくもり(喜び)を感じています。





裏の意味。
「風の声」は、Gacktさんの脱退によって亡き者と化した傷心の者たちの声。

夢の続きを知りたいのに、誰も(再び夢を見る方法を)教えてくれない。
『Asrun Dream』では再び寝てみたけど見たい夢は見れませんでした。
「マリスじゃないGacktは嫌」「壊した幸せを返して」「全部お前が悪い」など
聞こえてくるのは風の声ばかり。
皆を傷付け、傷付いた者の暴言に更に傷付けられるGacktさんの心を
「胸が赤く染まった」と表現しています。

「たとえ夜が終わらなくても」「その瞳に映る月は綺麗で」というのは
たとえ明日のこない(未来のない)過去でも
2期MALICE MIZERは輝き続けているという描写。
それはミゼラーにとってだけでなく、Gacktさんにとっても同様だと思います。



高い場所に登っていくことに関してはSHOXXでこんな発言がありました。

「空から堕ちて痛みを知った彼は、地上で人間と言う試練を感じた時に
 心で何を最初に感じるだろう、って考えた時に
 “空から堕ちてきたなら空に近いところで何かを探しに行くんじゃないか”って思った。
 孤独と痛みを正面から感じるために。」

多分これが『Blue』でピアノごと宙に浮く演出で表現されたのだと思います。


「還らなければいけない」というのは前回も触れましたが
一旦離れて別の形になった上でそこに戻ることであり
ただ戻ることとは意味が違います。

それを「わかっていてほしい」と訴えているのは
マリスが嫌いだから離れたんじゃない、メンバーが嫌だから遠ざかったわけじゃない
でも、今のマリスにはいられなかった
今のメンバーとは今は一緒にいられないんだと。
でもそれは永遠の別れではなく、還る意思があってこその別離のつもりだと。

マリス加入時にGacktさんが出した条件を振り返ってみました。

「俺がいなきゃダメなバンドで
 全員で新しいものを作るって世界観があって
 俺という素材がそこに必要であればOKって言ったんです。
 "やって下さい"って言われても多分やらなかったと思う。」

私が思うに、脱退を意識し始めた頃には
メンバーは自分を必要としてないように感じたんじゃないかなぁと。
マリス側は脱退後のGacktさんに対して
「アーティスト性は認めているけど人として理解出来ない」と言っていました。
仲良しである必要性は誰も語りませんでしたが
自分に対する不満が募った目で見られていると感じたら
Gacktさんはそこにいられないと思っても不思議じゃないと思います。

SHOXXでのGacktさんの言い分はこうでした。
「僕の目を見れないっていうメンバーがいて、もう僕はどうしようもないじゃない」

それに対するマリス側は「紳士的な対応で待ってたのに帰ってこなかった」。
どちらも嘘じゃないんだろうと、思います。

マリス側はGacktさんを待ってた。
Gacktさんも離れたくなかった。
けれど、円満な空気ではなかったから帰りたいと思える場所じゃなくなっていた。
でもGacktさんにとってその原因はメンバーに対する好意云々ではなく
過密スケジュールや関わるスタッフとのしがらみで関係が濁っただけだったと。
マリス側にはそれが伝わらず、いなくなった癖に愛してるとか綺麗ごと言うなと。
あくまでも私の印象ですが、双方の言い分の違いはこんなところかと。


『Kalmia』では月を死んだ星と訳しましたが、対する地球は生きている星。
「大地のぬくもり」とか、雪のことを「空からの優しさ」と言っていたのは
生きている場所にいる実感だったのかもしれません。
月は何年経っても何も変わることはありませんが、地球は変化していくので
まだ何か良い方向に動く可能性のある場所なのです。

『日本書紀』によると、鶺鴒は歴史上最初に出てくる鳥だそうです。
尾をパタパタさせる動きが人間の性行為を思わせることから
性交の先生としてイザナギとイザナミにお手本にされる存在。
恥じらいを知って男女であることを意識するきっかけとなる
アダムとイブの禁断の果実と同じ効果とも言えます。

VHS『ヴェル・エール~空白の瞬間の中で~』のブックレットに載ってる鳥が
恐らく鶺鴒なんじゃないかと。
禁断の果実も載っています。



雪国北海道の神話の創世記では
まだ地上がドロドロの泥だった頃に神は最初に鶺鴒を造り
その尾で地面を叩いて土地をならしたという話もあります。

つまり鶺鴒は「大地を造った存在」「人間の命を造った存在」ということに。

「鶺鴒の優しさ」とは、そんな生命の誕生を実感し
悲しいながらに希望を持てる歴史を知り、安心感や勇気を得たのではないかと。
また生まれることが出来る、何もないところから作り出していける、と。
「歴史の時間の流れを知ることで救われる」というマヤ文明の教えにも繋がっていきます。
『Dears』の「降り出した雨はいつかやむんだね」もその1つですね。



ここで「見せる1部」が終了して「楽しむ2部」に切り替わる映像タイム。

軍服を着たGacktさんが自分のお墓の前に立ち
投げ捨てるように赤い薔薇の花束を供えます。



ライヴ中の歌詞の時系列から逆戻りしますが
「自分が死んでいることを自覚した」ということが分かりやすく描かれたシーン。

薔薇が地面に落ちるのと同時に銃声が鳴り
上官の前に立ったGacktさんの手に銃がありますが
謀反を起こしたわけではありません。
『RE:BORN』の設定説明本によると、彼は病死したことが書かれています。



後のゼロは陥れられた形でサイボーグ化するので軍を憎むのは当然ですが
プロトは自分で志願したので、自分の決断に後悔はしても軍への反乱は起こさない筈。
パンフには「セカンドタイプの暴走」という事件が書かれていますが
具体的に誰かを殺したとか他者への攻撃エピソードはなく
『uncontrol』が暴走の詳細だったのではないかと。

記憶を取り戻して脱走したことが「セカンドタイプ(プロト)の暴走」です。

手術室で鞭打ちされる映像は
オープニング同様に「軍の為に働け!」という手術のイメージ映像と解釈。
人間だった頃に鞭打ちされる理由は描かれてないし
サイボーグには「痛みなどない筈」だし叩いても故障になるだけだろうし
何より場所が実際の拷問ではなく手術を意味する光景だろうと。



このシーンが載っているRRパンフには
「誰かを守るための戦いは終わり、利益のための戦いが勃発した」
と書かれています。

プロトが記憶を取り戻して脱走したことを知って
「RRプロジェクトは失敗」だと分かったのにプロジェクトメンバーは事実を隠し
戦闘中の騒ぎの中で見失って詳細不明と記録します。
しかし研究者にとって、サイボーグ発明の成功は大手柄でたくさんお金を貰ったので
「実はあれ失敗でした」なんて今更言いたくないわけです。

つまり、記憶を取り戻したサイボーグは「自国を守る為の戦力」ではなく
「研究者たちがお金を貰い続ける為の道具」になってしまいます。
しかし管理されるだけの機械は要求されるままに動くしかなくて
「希望しない戦争を続けさせられている」イメージ映像なんだと思います。

RRⅡは、そんな悪い人たちが次々とサイボーグを量産する物語。


鞭の音が軽くなり、よく見たら猫の着ぐるみ同士がSMプレイで遊んでいるという
シリアスな流れから一変したおふざけ映像へ。



着ぐるみとのお戯れタイムにもメッセージが添えられています。
猫ちゃんが上げたがる手を無理矢理下げてもまたピーンとなるくだりは
「押さえつけてもダメなんだね」って子供でも分かる光景。



その前の鞭打ちも、痛めつけて「無理矢理言うことをきかせる」光景で
表現方法を変えた同じ『uncontrol』です。



そんな流れからの「皆で踊ろうにゃあー☆」という声で
自由に楽しんでねっていう空気に変わっていきます。
ここからが-3rd Mission-になります。
生前の思い出、器が人間の肉体だった頃の回想に入ります。



U+K』『Mirror

MARSに書いたので省略しますがひとつだけ追記。
『Mirror』の途中で曲を中断してコール&レスポンスの煽り大会が始まりますね。
その締めにGacktさんはなんと言っているでしょうか。

「愛してるよ」

これはリップサービスなんかじゃなく、マリスに届かなかった呪いの言葉です。
でも、この会場に集まったファンなら受け取ってくれる筈。
Gacktさんを見て、声を届けて、大きく腕を振りあげている「君」。
『Secret Garden』で幽霊の存在に唯一気付いている存在
「君だけを見た」の「君」は
ソロからのファンも含めた「会場に集まったファン」だと思います。



Papa lapped a pap lopped

「君を抱いて宇宙の波方へ」とあるので
プロトの魂がエレナを探し求めて宇宙を彷徨ってる感じでしょうか。
エレナへの想いを胸に「抱いて」宇宙を旅するという意味とかけて
性的に「抱いて」いた時の思い出が描かれています。


この曲のタイトルは通称「パパラパ」。
「パッパラパー」を思わせる適当な表記を用いたんだろうと思います。
『U+K』の「shalla a le rilla」は存在しない単語だったから
意味を調べることなく流れ星の擬音なんだろうとスッと解釈しましたがこれも同様。

MCあけでお客さん参加型タイムに切り替わるノリノリ曲の前には
最近だと「アホになってくれますかー!」なんて煽りがあって
頭をからっぽにしてはっちゃけてくれと誘導されます。
『uncontrol』の「踊り狂えばいい」の実践です。
そんなテンションを上げるかのような奇声で始まるアゲアゲ曲。



ソロのGacktコスとソロを追わないマリスコスが顔を合わせる集会で
ミゼラーたちが「Gacktは今こんな格好するの…?」って
顔をしかめてパパラパコスに驚いていたのを覚えてます(笑)。

マリス時代の衣装は絶対私服として着れないレベルの派手さが前提で
動きづらくて当たり前、衣装によっては座ることすら出来ないものもあって
非日常的な創作性が誇らしかったものです。
Gacktさんが脱退直前に1番のお気に入りと挙げていたのも
「首に5kgの飾りがついている衣装」というとんでもない設計でした。



そんな世界にいた人がパーカーにスニーカーを衣装とするなんて
目が飛び出る程の衝撃展開。
それだけ「頭をからっぽにして体を動かす」ということに意識が注がれています。


『NINE SPIRAL』で「妄想だらけのノアの船」は溺れることになったと訳しました。
信じても救われない、そこには絶望があったというここまでの流れ。

そんな絶望への嘆きを忘れてしまうように楽しませて
(溺れることさえ忘れてしまうように「狂わせて…」)

「僕の引き金に爪を立てている」は
『Vanilla』の「長い爪を立てられたボク」と同じで
ファンが怒りながらGacktさんに触れている描写。
しかし「綺麗な指でボクをなぞる」が「燃える月をナゾる」に変わっています。

「燃える月」は、死んだ筈の星がまだ生きている矛盾した描写。
過去停滞型ファンに対して今も動くGacktさんのことです。
冷凍した遺体として静かな過去の中で愛でていたいのに
望みに反して「僕はまだ生きてるよ!」と熱く生命を訴えています。

それをなぞっている夜=ライヴ中は
余計なことを考える隙を与えないくらい夢中にさせてやる、と。

「潤んだ瞳」=涙目。
泣かせたままなんて男として「我慢できないから」
君が空に行きたいのなら、僕も一緒に行くよと。

「いつまでも動かないのなら切り裂かれればいい」と攻撃してみたり
「ぎゅっと抱きしめて」と今の自分を愛して欲しくてメッセージを投げかけたのに
「もう一回は無理だわ、さよなら」と消えていってしまったファン。
気を引こうとしても思い通りにいかないことを「無重力な関係」としています。

『鶺鴒』で「君だけにはわかっていてほしい還らなければいけないことを」と言ったのに
それが伝わってないから「君」は安心出来ずに爪を立てて
今を生きているGacktさんではない「誰かに夢中」になっています。

しかしGacktさんは「君を抱いて宇宙の彼方へ」飛び立ったので
気付いてないだけで本当はとても近くにいる筈。
「誰かと旅の途中」の方の「誰か」は今を生きてるGacktさんです。

脱退後の時間は、空に還る為の旅なのです。

それと、間奏で客席を煽る時に言っている「ついてこいよー!」という言葉も
リズムについてこいという意味にかけて、自分の活動についてきてという想いがあると思います。



文字数制限に引っかかったので中編として一旦投稿。
次こそ後編で完結予定です。