ロンドンつれづれ

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数日前に、フランスのメディア、AFPが報道したところによると、トランプ政権は米国と取引のあるフランスの企業に対し、「多様性推進プログラム」を実施していないことを証明するように求めたという。

 

一言で表せば, "outrageous"、とんでもない話だ。

 

 

自国アメリカでは、トランプ政権は政府関連の組織の中で、トランスジェンダーをはじめ女性や黒人をショートノティスで要職からはずし、多様性推進を根元からひっくり返す姿勢を著している。

 

その理由は、有色人種や女性などに機会を提供するための思索は、「差別的であり、能力主義に反する」としている。

 

能力主義と言えば、一理ありそうな言い草だが、イギリスでも良く言われる、「白人男性が一番損をしている」という理屈と根っこは同じ。

 

つまり、自分が努力もしないで社会の底辺に落ちてしまった白人男性が、「俺がこんな暮らしをしているのは、黒人・中国人・アラブ人・インド人が逆差別でいい思いをしているのに、白人である俺にはなんのゲタもはかせてもらっていないからだ」という理屈である。

 

トランプの支持基盤には、白人貧困層が多く入っているので、自分たちのアル中や麻薬中毒といった問題、勉強もしないで落ちこぼれてきた背景を無視して、すべてを移民や非白人、女性のせいにすることで安心したいのだろう。 

 

彼らを喜ばせ、票を入れてもらうためにトランプは、要職についている優秀な女性や黒人を、次々に首にしたのである。

 

しかし、トランプの手は、よその国の企業にまで伸びているというから、内政干渉も甚だしい。

 

私も「女性だったら誰でも政治家になればよい」とか、「まずは女性を管理職に」というつもりはない。 性別関係なく、優秀な人がちゃんと評価され、それなりの地位に上がっていくことが一番理想だ。

 

しかし、日本のみならず、これまでは仕事のできる女性であっても管理職になれる人は、実に少なかった。それをグラス・シーリング(ガラスの天井、目に見えない限界)と呼び、女性の場合、同じ能力があっても男性よりも出世は遅く、トップクラスの管理職になれることはなかなか無かった。

 

また、履歴書に性別や民族背景を書かないイギリスであっても、その名前からアラブ人、中国人、その他、非白人系とわかると、まずはジョブ・インタビューに呼ばれる可能性が、白人の場合よりもだいぶ低くなるという実証調査結果も読んだことがある。

 

そういった不公平、不平等をなくすために生まれたのが、機会均等法であったり、多様性推進プログラムなのだ。

 

マレイシアでも政府組織内や、大企業などでの中国系(人口の3割)の人の多さに、多様性推進プログラムをとりいれてマレー系(人口の6割)やインド系を優遇していた期間があった。その結果、バランスの取れた社会になった、とマレーシア人の友人から聞いたことがある。

 

また北欧の国々でもかつて国家を上げて女性の管理職登用や政治分野への参加を奨励したことから、今の大変に男女差の少ない社会ができている。それが当たり前になれば、もう政策として行う必要はなくなるのだ。

 

しかしアメリカ社会が、多様性推進を止めて良いほど公平で平等な社会になっているとはとても思えない。

 

 

白人にしろ、非白人にしろ、男性にしろ女性にしろ、自分だけが損をしていると思う層が増えると、社会は不穏になり犯罪も増える。なぜなら、自分の不幸を人のせいにしだすからだ。その心の隙間をうまく利用しているのがトランプなのだ。

 

社会を分断し、数の多い方の喜びそうなことを政策に取り入れると約束して、票を集めるのだ。これには頭を使わなくても良いし、なんの努力もいらない。約束した通り、女性や黒人、マイノリティグループを首にすれば、大喜びする人たちが票田だからだ。

 

日本もそうなりつつあるが、アメリカのように貧富の格差が激しい社会では、多くの人は貧しい側になってしまう。貧しくて苦しい人たちに、「お前たちがワリを食っているのは、こいつらのせいだ」とやれば、人はそのアイデアに飛びつくのだ。

 

そして、彼らが「敵」とみなした人たちに罰をあたえれば、民衆は熱狂するだろう。

 

 

トランプがアメリカの社会で今壊しているものは、アメリカ人が長年かけて積み上げてきた文化や価値観である。これを取り戻すのは、彼が去った後に実に長い時間がかかるだろう…。

 

同じ態度で、欧州が培ってきて、いま大切にしている価値観や文化に対し、マスクのように札びらで顔を叩くようにして介入したり、トランプのように民間企業まで干渉してその企業風土をコントロールしようとすることが、果たして許されるのだろうか。

 

日本製鉄とUSスティールのやり取りにも、口を出してきているが、これもおかしな話である。(介入し始めたのはバイデンだが)トランプは今日、審査見直しを発表したが、日本からの投資をあきらめることはできないだろう。民間企業同士のことにここまで干渉するなら、もう日本企業はアメリカに投資するのを止める!と言えばいいのに。

 


フランスもアメリカ大使館と協議なんて言ってないで、こんなもの、頭のネジのはずれた老人の世迷いごととして無視すればいいんじゃないか。 いちいちまともに受け取る必要すらないと思うが、いかんせん、あいては大統領という権力を持っている。 

 

トランプ氏とその一味は、あきらかに帝国主義の独裁者の道を歩んでいるように見えるが。

 

 

以下、AFPの記事から。

 

 

米大使館、フランス企業に多様性政策めぐり警告 「新たな治外法権」

 

【AFP=時事】駐フランス米国大使館が、多くのフランス企業に対し、多様性(ダイバーシティ)推進プログラムの実施に関する警告を発したことを受け、ローラン・サンマルタン対外貿易担当相は31日、「深い衝撃を受けた」と述べた。ドナルド・トランプ米大統領は、多様性推進策に反対する立場を明確にしている。

仏経済省によると、米国と取引のある、または取引を検討中のフランス企業数十社が、米国大使館からこの件に関する書簡を受け取った。その中には、「多様性・公平性・包括性を推進するプログラムを実施していない」ことを証明するよう求めるアンケートも含まれていたという。

DEIプログラムは、有色人種や女性など、歴史的に不利な立場に置かれてきた人々に機会を提供するための施策。しかし、トランプ氏とその支持者らは、「差別的であり、能力主義に反する」としてこれを激しく非難している。

 

サンマルタン氏は、仏民放RTLの取材に対し、「この件について米国大使館と協議する予定だ。この書簡の真意を理解する必要がある」と述べた。

また、エリック・ロンバール経済・財務相も事務所を通じて、「トランプ氏のDEIに対する見解は、われわれの立場と相容れない」とコメントした。

サンマルタン氏は31日、こうした書簡について「フランスや欧州の法律に沿った包括政策を放棄するよう企業に求めるものに等しい」と批判。特に「男女平等、差別や人種差別との闘い、障害者支援に関する多様性の促進などが問題視されている」と指摘した。

「こうした包括政策は、何よりもフランスの価値観に根ざした前進であり、われわれはこの価値に誇りを持っている。
決して妥協するつもりはない」と強調。

さらに、フランス企業に送られた警告について、「価値観の問題において、米国が新たな形で治外法権を及ぼそうとしている」と非難した。
(c)AFP

【翻訳編集】AFPBB News

 

米大使館、フランス企業に多様性政策めぐり警告 「新たな治外法権」