第10章 裁判所の明細により生じる危害
10.1 イントロダクション
裁判所の命令に関する回答には、父と母とで一般化することができる違いが存在した
母親:子の安全に対する強いレベルの不安を表明した。
父親:裁判所の命令の結果ないし実効性についてフォーカスしていた。
10.2 コンタクト命令を通じた虐待の継続
何人かの母親が、家庭裁判所での手続の後に虐待が悪化し、子がより重大な危険にさらされている事態を憂慮していると回答した。母親や子は、裁判所が命令した虐待であると受け止めている。「虐待を許しただけでなく、虐待に関与した」
多くの母親が、子と自らを虐待から守るため、父との関係から逃れたのものの、家庭裁判所によって、逃れたことで得た保護を破壊ないし弱体化しただけであったと説明。
虐待が、第三者に報告されたら現状が好転するという被虐待者の期待が、むしろ事態が悪化したという現実と矛盾していることについて、調査を行った実務家により確認された。
虐待がなされるようなコンタクトへの懸念を提起すると、それが虚偽であり子を引き離す者と非難され、虐待する親に送り返されたという話が提供された。子どもへの虐待のみでなく、子を人質にして、母親らに対して強制的な支配が継続的に行使されたとも報告された。
子どもの電話やタブレットに、追跡アプリがインストールされた事例もあった。同居親への虐待は、子どもにとって直接的にも間接的にもDAの影響がある。
子が父親と同居する場合、母親が被害者であっても母親を経済的に困窮させ、ホームレスになるような結果を生じさせた。
移動に関する禁止命令は、虐待者から安全な場所にいくことを妨げ、もしくは、虐待の犠牲者にコンタクトのために長距離の運転を強いることとなっている。
母親にとって、裁判官が自分の話を聞いてくれているという実感はなく、裁判官の力を恐れていた。夫を恐れるように法律も恐れるようになった。何人かの母親は、虐待者と一緒にいる方が安全だと結論づけた。その方が、子が虐待者と一緒に放置されないようにすることが確保できるから。
支援グループによれば、性的虐待を受けた子どもの親の多くは、子どもの性的虐待について当局に報告しない。裁判所のシステムや安全を守る能力を信頼していない。そのため、コンタクトの取り決めに同意するか、DAのリスクの高い生活に戻るしかない。
10.3 コンタクトに対する抵抗及びコンタクトを強制することの害悪
コンタクトしたくない子どもが、無理やりつれていこうとする母親を恨むようになる。
子に望まないコンタクトが強いられ、母親には子らにそのようなコンタクトを強いることが求められる。
10.3.1 コンタクトを強いられた子らの経験
多くの母親が、子らが虐待親とコンタクトを強いられることへの不安を表明した。
強制的なコンタクトは子らに対して重大な結果をもたらす。
①子らが安全だと感じない状況下でのコンタクトを強いることが有害
・恐がっているのに連れて行く
・騙して連れて行く
・暴れるのに連れて行く
②子らが大人は耳を貸さないと感じたり、子らの強く示した意見を無視することが有害
子らの力を削ぐ
③子らが当局の職員などに虐待を訴えても我慢しろと言われる。変容を求められるの が親ではなく子ども
④子らの虐待の影響から回復する際に鍵となる、子を保護する親の側の支援を奪われる。
子らは、思い切って、同居親に虐待を打ち明けることができない。
それをいえば、片親引き離し、不可解な敵意などと言われるからである。
⑤子どもの孤立や支援を奪われるという事態は、子どものメンタルヘルスやカウンセリングのサポートが欠けていることでさらに悪化する。
10.3.2 母親によるコンタクトに対する抵抗
父親からの回答の多くは、同居する母親からコンタクトを完全にコントロールしたこと、母親のコンタクト命令違反に処罰がないこと、家庭裁判所がコンタクト命令を執行するのに十分な力を有していないことに対する不満だった。
しかし、3分の1のケースは、DAや児童虐待に関する現在の危険または安全性に問題があることが判明し、これらは命令が安全でないから功を奏していない。さらに、不可解な敵意を伴うものと誤解されたが、実はリスクあるケースであるという命令も判明した。これらは、裁判所におけるプロコンタクトカルチャーに起因するという研究結果がある。
片親引き離しの主張とDAの強い関連性があり、片親引き離しという告発は、しばしば、DA被害者を脅したり、非難することに用いられることを示唆するものである。
片親引き離しの主張は、母親に落ち度があると認識された場合、母親らに否定的に扱われ、行動の変化を求められやすい。母親と父親に適用される明らかなダブルスタンダードは、幼少のDA被害者にとっても受け止められる。
10.3.3 虐待的なコンタクトによる長期的影響
回答者による裁判所の命令によるコンタクトによる子らの長期的影響の報告は、子どもに関する各文献と一致する。
加えて、回答は、裁判所が命じたコンタクトによる成人の虐待被害者への継続的な影響への洞察や、家庭裁判所の手続き及び命令が子や被害者がトラウマからの回復のプロセスを介する能力を積極的に妨げる可能性があることを示した。
10.3.4 回復の妨げとなること
家庭裁判所の手続きの家庭で、サポートや治療サービスへのアクセスが妨げられている。
性的虐待を受けた子どもに、手続係属中は、専門家のサポートや治療が禁じられた。
最終的な命令が下されると、虐待親との継続的なコンタクトが始まり、子と被害者の被害回復のプロセスを開始することの妨げになる.サバイバルモードに残り続けてしまう。
10.3.5 子に長期間にわたり生じる害悪
虐待親とのコンタクト命令に起因して、子が被った害悪について報告があった。
身体的障害、性的虐待や心理的攻撃による経験、摂食障害、睡眠障害、夜驚症、おねしょ、腹痛、心配、不安、過覚醒、怒り、問題行動、過小評価、ADHD、OCD、PTSD、うつ病、学習障害、自傷行為、自殺
虐待父からの、子らの関係性破壊も認められた。母からの引き離し、健全・不健全の区別がつかない、支配・虐待・暴力のサイクルを継続してしまう。
母親らへの虐待を続けるために搾取された子らが、愛されず、利用され、孤独を感じている。一生にわたる無力感がある。
10.3.6 成人の被害者に対する長期的な害悪
母親のおかれた状況は悲惨。
長期慢性的な健康状態の悪化及び障害、PTSD,ノイローゼ
家を失い、貧困に陥り、訴訟費用のために負債をかかえる。
一部の父親も、うつ病や自殺願望を訴えた
家庭裁判所は、子や被害者を保護する方向でも、虐待心をサポートする方向でも失敗している。
10.4 コンタクトを行わないことによる長期的な影響
DAを行う親との子らとの間で関係を持たないことによる害悪のリスクとして、確立された関係の喪失、家族のつながりの喪失、子どものアイデンティティの一部の喪失が述べられた。
しかし、子どものための法律家協会は、子らと虐待親が関係を持たないことについての害悪に関するエビデンスは、それほど明らかになっていないと回答した。
虐待親との関係性を有しないことで生じる苦痛よりも、継続的に虐待を経験したことによる深刻な害悪及びトラウマの方がはるかに重大だと考えられる。
コンタクトの中断による回復、緩和がみられる。
10.5 結論
家庭裁判所は、効果的に子どもや被害者を害悪から保護していない
プロコンタクトカルチャーは、子と子を保護する側の親を深刻な危害のリスクに置く
不適切なコンタクト命令は、被害者に長期的広範的な悪影響を及ぼす。
継続的に関係をもつときに子への安全と利益に適うかは、虐待親が虐待的な行動を認識し改善したかにかかっている。
子と同居親が安全でないコンタクト命令下で暮らすことを強いるべきでない。
このことで、同居親が脅迫、非難、処罰されるべきでない。
命令に子が不安を感じたときには、命令を再検討され、不安に対処すべき。
被害者への治療支援、加害者への行動変容プログラムに大きな資金投入をするべき。
以上