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第9章 裁判所の命令
 

9.1 裁判所のアプローチ
   委員会に寄せられたエビデンスは、家庭裁判所が命令を作成する際の4つのテーマを浮かび上がらせた。





9.2 子どもたちはコンタクトしなければならない
 上級審裁判所は、家庭裁判所に、子どもたちとその親たちの間のコンタクト(面会交流)を維持するためにあらゆる努力を払うよう指示してきた。
 「親と子の関係を維持し復元する方法を講じる、端的にはコンタクトを維持し、回復させる積極的な義務がある。・・・コンタクトが行楽地で行われたきり途絶えているとか、コンタクトを継続してもその子に利益がないことがたった1回明らかになったからと言って、早まった決定をしないよう注意しなければならない。」

 司法円卓会議に参加した裁判官たちは、「DAの認定はコンタクトの障害にならない」と述べた。「どのレベルならコンタクトを許してよいリスクとして受け入れられるのか。どのレベルを「ダメ」とするのか?そこが難しい;むしろDAによる害は明白かもしれないが、(別居親との)関係がないとかほとんどないということには、はるかに大きいつかみどころのない危害がある。


 多数の専門家「総じてDAが見いだされた事件での終局命令と、DAが見いだされずまたは主張もされなかった事件でなされたそれとの間に、ほとんど差がない」と報告した。
 -時に、Cafcass/Cafcassウエールズやソーシャルワーカーが行った評価や勧告も無視することの懸念を表明した。


・Cafcassが、各週末と週に1~2回訪問、宿泊なしを強く勧告していても50/50を勝ち取った事例
・DAで逮捕され、ソーシャルサービスもCafcassも監視なしコンタクトをすべきでないと良い、虐待禁止命令が出て、裁判でDAが認定されても、監視なしコンタクトが認められた事例
・加害者が、「被害者はホームレスで安定した環境を提供できないから避難所にいると主張し、裁判官はそれを認め、加害者と同居するよう命じた。被害者は、子どもと別れることができず、彼のところに戻った。

9.3 コンタクトは進展すべきである
 ある裁判官「深刻な加害を受けた子どもたちであっても、父親を知る権利がある・・・仮に何か特別深刻な虐待があったとしても、それでコンタクトが制限されるべきとは思わない」

9.3.1 暫定命令
 DAの論争に決着がついていない段階での暫定命令
 いくつかの事件では、安全ほどのチェックが終わる前に、コンタクト命令や共同養育命令を出している。
 しかし、父親や父親支援者は、「裁判所は事実認定前のコンタクトに過剰に慎重である」と苦情を述べた。母親の子どもに対する片親引き離しを許し、親子断絶になり、回復に長期間を要する結果を引き起こすという懸念を強調した。
 これは、手続きの遅延や事実認定のための聴取には時間がかかることとも関連している。
DAの主張があったときのコンタクト禁止や制限付きコンタクトは、終局が11%に対して、13%発令された程度である。
 
9.3.2 DA加害者プログラム
 加害者プログラムは、事実認定がされて最後の聴取の間に命じられる。
 加害者プログラムは、虐待親の危険が取り除かれたようなふりをしてコンタクトが許されるようにすることができる装置(ある母親の言葉によれば「コンタクトの食券」であると。)
 地域によって、加害者プログラムが受けられない。
 女性加害者が利用できる加害者プログラムが存在しない。
 加害者プログラムに時間がかかりすぎて融通がきかないことの懸念の声が出ている一方、虐待親の考えを改めることには相当の時間がかかるという指摘もされた。
 加害者プログラムの委託は、2016年で1.4%、2017年で1.9%、2018年で2.1%にすぎない。
 ある加害者「私が彼ら(子ども)に会いに行くか、コースを終えてから会いに行くかだ」
 被害者側からは肯定できない。
 ・最小限の参加条件で、適格性も満たされない
・チェック項目を全部満たせばコースを通過する
・リスク評価に、被害者や子どもの見方は取り入れられていない
 ある地方では、加害者プログラムを終えると、同居親にコンタクトへの同意を期待する。
 単に、コンタクトを進めるための救済措置となっている。
 
9.3.3 コンタクトの支援と監視
 監視付き、もしくは、支援付きコンタクトは、暫定命令では使われるが、最終的な命令の一部である長期の選択肢として採用されることはまれである。
 監視付き命令を、コンタクトを進めながら虐待被害者を保護することができていいという考えがある「安全に子どもと親の関係を進展させる」
 リソースの制限がそれを妨げている。
 地域格差がある。
 高価で、柔軟性がない

 裁判所が、安価なボランティアが運営するコンタクト支援や、被害者、もしくはその家族に監視を願ってコンタクトを命じる場合がある。監視付き面会は、子どもに対する深刻な身体的・性的リスクがあるときに限定されているという指摘がある。被害者が監視するとき、被害者のトラウマにより有害な影響を受け続けることになる。

 裁判所は、長期にわたる監視付きコンタクトを命じたがらない。裁判所からは、「進展する」ことが期待される。

 間接的なコンタクト(間接交流)は、子どもたちと被害親を守ると想定されているが、これにも警告が発せられた。加害者は、元パートナーを脅かし、ストーキングする虐待的な手紙を送ることで虐待を継続させることができる。
・小児性愛の父が刑務所から送ってくる手紙で、子どもは心身に不具合を生じた例

 コンタクトセンターでの監視付きコンタクトでも、上手にとりつくろって虐待を継続できる。
 ・小さな声で、遊んで見えるように脅迫をささやく。「誰もお前を信じないさ」現に、信じてもらえず、母親からは会いに行かないと私が監獄にいれられると言われた。
 

9.4 共同養育(co-parenting)の奨励
 裁判所は、両親がうまく共同養育できるだろうと期待している。
 『子どものために一緒に子育て』の4時間コース。ストレスに満ち、無神経であったと。
 裁判所がコンタクト支援に力をいれるのは、虐待的な言動に焦点を当てた介入を限定していることとの対称をなしている。

9.5 裁判所への依存を減らす
 裁判所は、両親に離別後の養育について、自分たちで決めることを長年にわたって奨励
 裁判所に来るような事件について、ほかの紛争の解決策を奨励したり、裁判所の決定よりも和解を奨励する。

9.5.1 コンセント命令への依存
 コンセント命令(合意に基づく命令)は、共同養育の推定の結果として、また、裁判所の限られたリソースで処理件数をこなすための両方の必要性があり、4分の3以上が、合意で行われる。それにより、DAの訴えがなかったかのようにみなされている。

 コンセント命令への同意のプレッシャーは巨大な社会的文化的プレッシャーを受ける。
 単に虐待親が何をするかわからないというだけでなく、それに合意すれば、最終的に大きな害を引き込むことがわかっているのに、被害者がその命令に従わなければ、その子どもの監護権を失うというリスクがある。

9.5.2 レビュー聴取が行われないこと
 2014年に子の処遇プログラムが導入されてから、裁判所はレビュー聴取に消極的に。
 裁判所が子どもの安全を確認することを怠り、当事者任せになった。
 ・「コンタクト命令にしたがって面会をさせようとしても、子どもが呼吸発作を起こす。
  もう一度裁判所に行けといわれたときは、無力感を感じた。専門家は別れるように言う。
  だが、裁判所がこれほどだめな決定をしてさらに悪い状況に置かれた」事案
 
9.6 結論
  DAが認定されにくい
  DAが認定されても被虐待ケースと異なった扱いを受けていない
  リソースの制約とプロコンタクトカルチャーの力でDAが軽視される
  制限付きコンタクトとなっても制限なしへの移行が期待される
  保護措置は、ほどんどとられず、とられても不十分で期間が限られている。
  コンタクトが促進される一方で、虐待者の行動に対処する努力は限定的