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 DVの加害者も過去を遡れば、DV目撃や児童虐待の被害者ということがあります。DVの連鎖と呼ばれる現象です。そのメカニズムは専門家から色々な知見が出ているところですので詳しく述べることはしませんが、DVや虐待がある家庭でサバイブするためには、自己保身のために都合の良い嘘をつかないといけない場合も多く、良心の呵責から脳内で嘘を正当化する事が日常化し、自分は絶対に正しいという鎧でがんじがらめとなりながらも、意見を言われただけでも自分が否定されたのではないかと怯える、という形で人格形成がされた結果であるという説明がしっくりきています。

 それと同じくらい多いのは、溺愛による万能感を植え付ける子育て、具体的には家父長制の考え方のもとで長男を溺愛する場合です。一定の世代の方にしか分からないと思いますが、ドラマ「ずっとあなたが好きだった」の冬彦さんのような親子関係です。マザコン息子がDVをふるうという事案をいくつも経験して思うのは、あのドラマを視聴していた当時は、狂気だと思って観ていましたが、実はリアルで、脚本家の方は丁寧な取材に基づいて書かれたのだろうと感じています。

 マザコンに限らず、「◯◯家の嫁なんだから」という言葉を出すような家庭で、DV加害者が生み出されていると感じています。そして、そのメカニズムは、溺愛という愛情は、他者への差別意識の裏返しであることが多く、親からの賞賛を得続けるためには、◯◯家の長男に相応しい自分でなければならず、自己保身のために嘘をつくことが平気になっていくのみでなく、親も「そうだね、お前は悪くない」などと言っちゃうもんだから、親子揃って嘘を正当化していくというふうに理解しています。

 虐待も溺愛も、不適切な子育てであることに違いはなく、DV加害者は元を辿れば、不適切養育の被害者であることが多いと思います。

 ここ数年で、DVに対する社会的理解は一定程度進んだと感じていますが、逆にステレオタイプな理解になっていることを危惧しています。

 DV加害者の矛先が、配偶者と子どもに向かう場合もあれば、DV加害者の矛先が配偶者のみに向かい、子どもには溺愛という形を取ることがあります。そうした時の子どもは、DV加害者と一体になって、配偶者を無力な存在として扱います。

 まだ、未就学の年齢の子どもが、法律相談についてきて、母親に向かって「まだ?いつ終わんの?いい加減にしろよ」と言って背中を蹴るようなシーンに出くわすことがあります。皆さんはどう感じるでしょうか?子どもは天使とは限らず、DV加害者予備軍でもあります。

 事務所のスタッフにお願いして、子どもを別室に連れていってもらい、疲弊した母親に、「もうこれ以上頑張らなくていい。子どもを置いていくという選択肢もある」ということがありますが、私の発言に誰もがびっくりして、「先生、何を言ってるんですか?置いて行くことなんてできませんよ」と言います。

 「日本は連れ去り天国だ。」 共同親権推進派がよく言う、悪意ある主張は間違っていると思います。ケア労働のほとんどを女性にうけおわせる社会構造。職場でのセクハラやマタハラ、男女の賃金格差、結婚や出産で労働力率が下がりM字型カーブと呼ばれる日本ならではの特徴、男女共同参画といったって、男性並みの仕事をして家庭と両立するためには周囲の理解とサポートする環境がないと絶対に無理。弁護士は、男性33000人に対して、女性7700人という割合。東京医科大学の男女差別入試のような不正があったとは信じたくありません。社会の構造や、女子は勉強できなくていいという文化が、人権擁護の担い手の男女比にも影響しています。PTAのほとんどが女性が担っているのに、会長だけは男性なのはなぜなの?

 私は私の受任した事件の話をだけをしています。狭い世界というならそうかもしれない。でも、みんながみんな、育児に責任を持ってる。涙が出るほどに。だから連れて出ています。子どもの連れ去りが社会問題だ、外国なら犯罪だという言葉が何を生むか。私の依頼者に理不尽に投げつけられるDV加害者による「虚偽DV」「実子誘拐」という言葉、DV被害者救済をしている弁護士に投げつけられる「連れ去り指南の悪徳弁護士」と言う言葉は、弁護士に対する攻撃であるとともに、DV被害者である依頼者自身への強烈な攻撃でもあります。

 DVの構造は、自分が絶対に正しいと考えている人が押し付けてくる上下関係に他ならず、自分が絶対に正しいというDV傾向が強い人ほど、自分のDV傾向と向き合うことができず、虚偽DV論と一体化した共同親権論や片親疎外論で自分を正当化していくわけです。

 共同親権と聞くと、論理的には正しいものに見えてしまうかもしれない。でも、共同監護親、共同養育できる関係性にある離婚後のパートナーであれば、現在の法制度で何もそれを妨げるものはありません。私自身、事実婚で、単独親権ですが、共同親権でなくて困ったことは一度もありません。共同親権の理論を欲しがる人たちは誰なのでしょう?共同親権が導入されたら、現在、面会交流が制限されている人たちが無制限に子どもに会えるようになるんですか?学校行事に自由に参加できるようになるんですか?学校の先生は、その人たちからの問い合わせの全てに、子どもの情報を教えるのですか?

怖すぎる。




 

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