『日本国紀』読書ノート(1) | こはにわ歴史堂のブログ

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(1)司馬遷の『史記』は日本が縄文時代の頃の歴史書ではありません。[2018年11月10日第1刷より]

縄文時代と他地域を比較している説明がP10~P11にみられます。

「当時の世界は日本の縄文時代よりもはるかな高度な文明が誕生していた。」

として中国文明・インダス文明・メソポタミア文明・エジプト文明が説明され、紀元前500年の釈迦や孔子、紀元前400年代のヘロドトスの『歴史』が紹介しています。

しかし、なぜか唐突に紀元前100年前後の司馬遷の『史記』が「同じ頃」、つまり日本が縄文時代であったころの著作として紹介されています。

縄文時代は紀元前400年くらいまで。

司馬遷の『史記』は弥生時代の著作になります。この部分の例とをあげるとするならば(歴史書にこだわるならば)、

 

『春秋』

 

が良い例になるのではないでしょうか。

ところで、P10に「縄文時代の人々の生活は、採取・狩猟・漁撈が主なもので、本格的な農耕や牧畜は行なわれていなかった」と説明されています。教科書でも「本格的な農耕の段階には達していない」(山川出版・詳説日本史B・P13・2017年発行)となっていますが、ムギ・アワ・ヒエなどの栽培が始まっていて採取・狩猟・漁撈中心の縄文時代に、すでに農耕の萌芽がありました。弥生時代の稲作は大陸伝来の農業ですが、縄文時代の栽培は、日本の豊かな自然を背景にした日本独自のものです。P12のコラムでせっかく「世界有数の高度なものといえる」と紹介されているので、「すでに縄文時代にも作物の栽培がみられた」とあればうれしかったです。

 

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