大学事件簿15、教授の論文不正に巻き込まれて不正を指摘した助手が研究室で服毒自殺(大阪大学)


小川和宏です。

いつも有り難うございます。
秋らしくなってきたと思ったら、今日から10月ですね。
今日で私が金沢大学に着任してからちょうど10年になります。

 前回は、上司教授の不正経理通報後に、同僚の技術職員が「死ね!このキチガイ!」と叫んでいるところや(同僚は訴訟で私に解決金を支払って和解)、教授懲戒処分後に「殴られた、見たね、YT君」のデッチアゲなどの裁判証拠をお示しし、自殺多発でブラック企業特別賞を受賞した東北大学、教授がPTSDで労災認定され学長と大学を提訴した浜松医科大学など、2004年法人化後の国立大学の荒廃にも触れました。

 今回は、2006年に大阪大学で起きた、教授による論文不正に巻き込まれて不正を指摘した助手(ご本人は不正に関与せず)が研究室で服毒自殺したとされる事件です。

 なお、小川ブログのほうでは、本日開始された医療事故調査制度を掲載中です。
http://ameblo.jp/iryouziko/

●朝日新聞2006.9.7「助手が自殺、阪大調査 教授らと執筆の論文「疑問」」より引用

 大阪大大学院生命機能研究科(大阪府吹田市)の教授らのチームが専門誌に投稿した論文について、同研究科の助手(42)ら複数の共同執筆者から「データに疑問がある」という指摘が出され、大学が8月初めから調査をしていることが分かった。この助手は今月1日に自殺しており、大学は関係者から聞き取り調査を進めている。
(中略)
 しかし、8月2日に筆者側の申し出で論文は取り下げられた。関係者によると、助手を含む複数の共同執筆者が「オリジナルデータと論文のデータとの間に食い違いある」と指摘。大学は同9日から調査を始めた。
 助手は今月1日に同研究室内で自殺。吹田署は毒物のアジ化ナトリウムによる服毒自殺とみている。家族あての遺書とみられるメモには、論文などに関する内容は書かれていなかったという。
 同大学院生命機能研究科長の近■■■教授は「助手の自殺と調査との間に因果関係があったことを示す事実は今のところなく、助手が(不正などに)かかわった事実もない」と話した。
 阪大では、05年5月、大学院医学系研究科のグループが発表した論文のデータが捏造(ねつぞう)されていたことが発覚。今年2月、2教授を停職の懲戒処分にしている。
<引用ここまで>

●朝日新聞2006.12.21「論文捏造の教授解雇 大阪大「著しく反社会的行為」」より引用

 大阪大生命機能研究科のSA教授(63)が米国の専門誌に投稿した論文のデータを捏造(ねつぞう)していた問題で、同大学は20日、S教授を同日付で懲戒解雇処分にしたと発表した。処分理由について、「科学者として決して行ってはならない著しく反社会的な行為をした」などとしている。阪大での教員の懲戒解雇処分は記録のある1970年以降で初めて。
(中略)
 共著者の助手らが気づき、生命機能研究科の研究公正委員会に申告。同科は今年9月、S教授が単独で捏造や改ざんをしたと認定した。
(以下略)
<引用ここまで>

Nature, 443, 253 (2006) の記事  “Mystery surrounds lab death”(ミステリーに包まれた研究室での死)より一部を引用(日本語訳は小川による。以下同じ)
http://www.nature.com/nature/journal/v443/n7109/full/443253a.html

Some of the details surrounding Ka●●●’s death are also mysterious. Although suicide is relatively common in Japan, the cause of death tends to be hanging or gassing. Ka●●● died from ingesting sodium azide, a white odourless solid that causes convulsions and respiratory failure within minutes. Such a method of suicide is extremely rare in Japan, according to National Police Agency statistics.
 カ●●●の死を包んでいる詳細の幾つかもミステリアスだ。日本で自殺は比較的よくあるものの、死因は首つりかガスが多い。カ●●●はアジ化ナトリウムを飲んで亡くなった。アジ化ナトリウムは白い無臭の固体で、数分以内にけいれんと呼吸不全を起こす。警察庁の統計によると、こうした自殺方法は日本では極端にまれである。

The suicide note was also unusual – rather than being handwritten, it was printed out from a computer. And despite being addressed to his family, it was found, along with an empty container of sodium azide, in the lab where Ka●●●’s body was discovered. According to the Osaka police department, the note was an explanation of Ka●●●’s emotions. 
 自殺に際してのメモもまた、普通ではなかった。手書きではなく、コンピューターから印刷されたものであった。そして、家族宛てであるにもかかわらず、カ●●●の遺体が発見された研究室で、アジ化ナトリウムの空になった容器とともに見つかった。大阪府警によると、そのメモはカ●●●の感情を説明したものだという。
<引用ここまで>

 ご本人が知らないうちに不正に巻き込まれ、組織内へ通報後の「調査中」に悲惨な結末に至った事件で、国立大学の荒廃を示す1例と私はとらえています。
 亡くなられたカ●●●さんは私と同世代の方です。心よりご冥福をお祈り申し上げます。

<上記事件の追加情報>

 北海道大学教授の方は、次のブログ記事の最後で、この件の内部告発を呼びかけておられますので、その箇所を引用させていただきます。
http://shinka3.exblog.jp/4511478
「今回の件でも学内に箝口令がしかれていると書いてあります。個人的には、そういう状況の中でこそ、内部告発(情報漏洩)によって不正は隠しきれないという現実をつきつけるべきではないかと思っています。内部の方々、匿名で情報をどんどん公開して下さい。その真偽については、関係者が告白する義務があると思います。」

 次のブログでは、大学での研究データ捏造等の事例が幾つか示され、初めにこの件の読売新聞記事が、少し後のほうで金沢大学の論文盗用事件(裁判初日にハラスメント調査委員の医学部教授急死を本ブログで以前ご紹介)が掲載されています。

  大学事件簿9(裁判初日にハラスメント相談員の医学部教授が急死)
  大学事件簿10(検察審査会が研究盗用疑い教授の不起訴不当議決)
 
次のブログでは、本件で撤回された論文や撤回告知記事などがまとめられています。
http://phddna.exblog.jp/tags/助手が自殺/