・究極の『思考停止』が生んだ災厄
‐シリーズ・明かされる『満鮮史』 その6(対ソ戦・幻の日本艦隊救援)‐
現在わたくしは、在日コリアンの友人から貸与された歴史書物(近代史)をもとに、今までまったく語られなかった「北朝鮮(当時は「北鮮」<※差別用語>と呼ばれた)」における日本帝国主義の現実を、実際の兵士や指揮官たちの体験記をもとに、新シリーズとして鋭意執筆中でございますが、現在の在日朝鮮人に対する差別構造を論ずる上で、興味深い論稿をかっちんブログ(大手在日ブロガー)で拝見いたしました。
ひとたび朝鮮半島を語れば、一から十まで「韓国(大韓民国)」としか変換できない人間が大勢いるなか、昨今の日本リベラルにおける『陥穽』について、ここまで踏み込んだ内容を記した記事はかつてなかった。
つまり中国や琉球・日本の構造で『朝鮮』と言える人々が、あまりにも少ない現実と、逆にそういう表現を出来る方は、本当の意味で“歴史に対する造詣が深い”と私は思います。
ここから出発して、「なぜそういう状況」になったのかと、深く反芻してみると、日々のマスコミ報道の中で繰り返される『北朝鮮バッシング』が無意識な刷り込みとして、“「朝鮮」に対するネガティブなイメージ”を流布させ、人々の精神構造に多大なる「変化」を生み出したと考える。
かつて、ヨーロッパを恐怖におとしいれた(とされた)モンゴルこそは、遅れた征服さるべきアジアの代名詞として、歴史と時代をこえる格好の標的となった。
近代欧米において、異常なまでに昂揚した「文明主義」と自己愛、そしてそれによる偏見と傲慢の産物である。かの名高いアブラハム・コンスタンティン・ムラジャ・ドーソンの『モンゴル人の歴史』(日本語翻訳では『モンゴル帝国史』)が、一八二〇年代から三〇年代のヨーロッパにおいて大歓迎されたのは、事実とは別に、モンゴルをことさらにおとしめる論調が、いまやアジアへの本格侵略に乗り出さんとするヨーロッパ列強たちの「時宜」やその時代の雰囲気・気分にかなっていたからである。
<中略>
モンゴル帝国を筆頭とする過去の歴史への負のイメージ化は、欧米による価値づけを前提とする史家たちに引き継がれた。
<中略>
「文明化の使命」をもって自己を正当化した欧米の自負と傲慢、そしてことさらな嘘は、たとえばアレクサンドロスの極端な英雄化ともちあげ等々、枚挙にあまりある。そこに通底するのは、ヨーロッパを高しとし、それ以外のアジア等を蔑視するまなざしである。
※<>は筆者註
興亡の世界史09 『モンゴル帝国と長いその後』 杉山正明著 講談社 38~39頁より
‐『日朝関係の視角』のまとめ その5(『韓国人の日本人観』シリーズ)‐
かつて19世紀欧米人が「モンゴル人」を悪魔化して、東洋世界に対する『支配欲』をめぐらしたかのごとく、近代帝国主義の残滓としての“オリエンタリズム”が、現代日本における金権政治の「欧米民主社会」を無批判に擁護し、対する「憎悪の矛先」を北朝鮮をはじめとした「反米国家」(アメリカ軍事連合に組み敷かれない諸国)に振り向けられていることを忘れてはならない。
これは在日コリアンにも多大な影響を与え、「朝鮮」を嫌い、「韓国」に鞍替えする人々が続出する現実をみても、旧宗主国の『罪』は戦後になっても更新中だ。
‐【修正加筆】『香港問題』で発狂する日本人(アジアでの孤立化と欧米帝国への従属)‐
‐韓国関連や消費税問題で「デマ」を吐いた池上彰氏がロシア問題でも「デマ」を拡散する‐
日本がアメリカの「植民地」で、中国やロシアに露悪的態度をとらされる一方、こと北朝鮮については『過去の植民地被害国』でありながら、日本からの謝罪や補償も一切なく、日本人の記憶からも「そういう事実」が消え去り、近視眼的な報道による洗脳によって、自国が抱える本質的問題を見失って久しい。
さて、今回の議題として日本リベラルに蔓延する「朝鮮に対する悪魔化」については、アメリカのマスコミがロシアを「悪魔化」するのと『同一線上』にあるとみられる(植民地だから当然だが)。
日本のリベラル派の中には、安倍政権の暴政やNHKの翼賛的な報道を批判するにあたって、「まるで『北朝鮮』のようだ」と朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮と略す)を引き合いに出す人が少なからず見受けられます。彼らは、「まるで『北朝鮮』のようだ」というのは「『北朝鮮』を差別しているのではなく、批判しているのだ」と言います。しかし、彼らは勘違いしています。「まるで『北朝鮮』のようだ」というのは、「北朝鮮」に対する批判ではなく、朝鮮を悪魔視するものです。
もっとも、こう言うと彼らは「『北朝鮮』を批判してはいけないのか」と反発するかもしれません。どうか、誤解しないでください。私は、朝鮮を批判するなと言いたいのではありません。私が言いたいのは、朝鮮を悪魔視するなということです。
安倍政権の暴政やNHKの翼賛的な報道を批判するにあたって、なぜわざわざ朝鮮を引き合いに出すのでしょうか。わざわざ引き合いに出さなくても、安倍政権の暴政やNHKの翼賛的な報道は十分に批判できるはずです。それに、そもそも安倍政権の暴政やNHKの翼賛的な報道は、ほかでもない日本の「内なる悪」です。しかるに、日本国民が日本を「内なる悪」を朝鮮に背負わせて悪魔視するというのは、リベラル派が安倍政権を批判するにあたって「主権者」であることを強調するのであれば、それこそ「主権者」の態度として無責任であると言わざるを得ません。それとも、まさか朝鮮を悪魔視することも「主権者」の権利だとでも言うのでしょうか。
朝鮮に対する悪魔視は、たしかにそれ自体は朝鮮に対する差別ではないかもしれません(もっとも、朝鮮を差別しているからこそ、平気で朝鮮を悪魔視できるのでしょう。)。しかし、それは決して差別と無関係ではありません。つまり、朝鮮に対する悪魔視は、「非理性的な存在である悪魔・朝鮮を差別することには『理』がある」と差別を正当化せんとし、また、「朝鮮」を悪魔的な記号とすることで在日朝鮮人とその団体に対する差別やヘイトクライムを助長します。その具体例は、日本の政府と自治体による朝鮮学校差別*1、国際政治学者の「スリーパーセル」発言*2、チマ・チョゴリ切り裂き事件*3、レイシストによる朝鮮学校襲撃事件*4、右翼による朝鮮総連銃撃事件*5などなど、枚挙にいとまがありません。
日本のリベラル派が平気で朝鮮を悪魔視できるのは、つまるところ朝鮮を蔑視しているからですが、その「朝鮮蔑視」観とその裏返しとしての優越感こそ、まさに朝鮮を侵略し植民地支配した日本の帝国意識を支えてきたものです。そして、今も継続する日本帝国主義によって生み出されたものが、まさにリベラル派が批判する「アベ政治」なのです。つまり、平気で朝鮮を悪魔視するリベラル派には、安倍政権を批判する資格がないということです。
もしかすると、安倍政権を批判するにあたり朝鮮を引き合いに出すリベラル派は、「『北朝鮮悪魔視』が多くの国民の共感を呼ぶことで、結果として安倍政権を倒すことができるのであれば、それでいいじゃないか」と言うかもしれません。しかし、もしそれで安倍政権を倒すことができたとしても、リベラル派が批判する「アベ政治」を終わらせることは決してできないでしょう。リベラル派は、本当に「アベ政治」を終わらせたいのであれば、日本の「内なる悪」を朝鮮に背負わせるのではなく、それと真摯に向き合うべきです。「アベ政治」というのは、まさに戦後の日本が「内なる悪」と真摯に向き合わずにやり過ごしてきた「結果」なのですから。
あしべの自由帳
『「まるで『北朝鮮』のようだ」は、「北朝鮮」に対する批判ではなく、朝鮮に対する悪魔視である。』記事より
https://yukito-ashibe.hatenablog.com/entry/2020/07/23/155816
知的にも経験的にもウブな彼らは、己の「未熟さ」に対する謙虚な気持ちを持たず、強情っぱりの感情論で『ネトウヨと同レベル』のやり取りを展開している。
‐三浦瑠麗氏の『スリーパーセル』問題を考える(「疑似科学」と「悪魔の証明」)‐
そもそも、私たちには「批判」を行なうための、歴史的な見識や海外ニュースの見識だったり、とにかく「足りないものが多すぎる」訳で、穏やかな感情も持たず、レッテル貼りや言葉狩りでもって、常に異論を排除する思考は、もはや矯正不能の境地にあり、とことん“堕ちるところまで堕ちろ”という結論だが、もう少し「自分の心のうちを見直す時間」をもうけるべきだと、私は思うのですね。
モノリンガル(単一言語話者)ゆえ、現地の人々と直接思考も共有できず、コミュニケーションもままならない国民が、当然『独善的』になるのは致し方なく、大西つねき氏(れいわ新選組)の件でやらかしたI〇Jの代表が、かなり前の動画で「イカレた国家」と名指しで北朝鮮を攻撃し、同国に親戚がいらっしゃる在日コリアンの友人を持つ身としては、その低劣な品性に驚愕したわけで、中国香港に対するネガティブな報道(洗脳)もやるし、もちろん「影響力」の見地からすれば、大メディアのそれとは比較にならぬほどチープなものだが、こうした認識が隅々にまで行き届いている日本国家の未来は、間違いなく『危険な方向』に向いつつあるのが率直な印象です。
<参考資料>
・かっちんブログ「堅忍不抜」 『「まるで『北朝鮮』のようだ」は、「北朝鮮」に対する批判ではなく、朝鮮に対する悪魔視である』記事
https://ameblo.jp/sanpurena/entry-12613111663.html
・あしべの自由帳 『「まるで『北朝鮮』のようだ」は、「北朝鮮」に対する批判ではなく、朝鮮に対する悪魔視である。』記事
https://yukito-ashibe.hatenablog.com/entry/2020/07/23/155816
・興亡の世界史09 『モンゴル帝国と長いその後』 杉山正明著 講談社
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