ピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーピーポー・・・・・・・・・
この素敵な音・・・間違いなく自分がターゲット・・・・・。 This song for me ・・・・・
お迎えのリムジンが・・・いや違う、これはまぎれもなく「お迎えの救急車」の奏でる漆黒のシンフォニーが、
この平和ボケした週末の深夜の街の空気を切り裂くように近づいて来る・・・・・。
今現在、自分が倒れている店の前には、救急車の到着と同時に狂乱と歓喜のピークを迎えるであろう
「路上のパーティーピーポー達=野次馬軍団」が、やがて店内から救急隊員によって「お神輿=担架」で
運び出されるであろうはずのメイン・アクトである「お祭り騒ぎ野郎=オレ」の登場を、
今か、今か、と腹を空かせて待ちわびているのに違いないのだ・・・・・・・。
「翼の生えた肥満少年」の空中殺法で瞬殺ノックダウンされ、床に仰向けでくたばっているオレ・・・・・。
あまりにも突拍子も無い出来事に、まずは夢か現実かの判断をくだそうとした・・・・・
意識モウロウとしている「我が脳内検索機能」を必死で回転させようとしたものの・・・・・
全く記憶に前例が無い・・・・・神様はあまりにも苦い初体験をこのオレに与えてくれたのだ・・・・
しかしおそらくこれは世界初の快挙だ・・・・・やったぜ!BABY!・・・・・いや喜んでいる場合ではない・・・・・・
野次馬達の好奇心を満たす為だけの餌食になって、救急車に運び込まれるのだけはゴメンだ。
オレの夢は、パパラッチをかきわけ、レッドカーペットを颯爽と歩いて、リムジンで走り去る事・・・・・だったはず
だったら、ちょうどイイ予行演習になるのではないか?・・・・・・そんなの、なるわけがない・・・・・。
ついに救急隊員1号が、床でダウンしているオレを見おろしながら言った・・・・・
「大丈夫かな・・・・・?前まで救急車来てるからね・・・・・まず担架に乗ろうか・・・・・」
オレは、マット=床に沈んだ瞬間をハッキリとは覚えていない・・・・・
身体のどの部分が床に叩きつけられたのかさえ実際わからないのだ・・・・・
後頭部をもろに直撃した可能性もある・・・・・実際、意識はモウロウとしていた・・・・・。
「じゃあ、そっと担架に乗せるからね・・・・・じっとしていてね・・・・・」
救急隊員1号と2号が、共同作業でオレを担架に乗せようとした・・・・・これは、やばいことになるぞ・・・・・
「ちょっと、待ってくれ・・・・オレは担架にも、救急車にも乗りたくないんだ・・・・・!」
「そんなこといっても・・・・・・あなたを早く病院に早く連れて行かなければならない・・・・・
それが我々、救急の仕事なんだから・・・・・さあ、そんな事、言ってないで・・・・担架に乗せるよ・・・!」
「頼むからやめてくれ・・・・・救急車に乗るくらいなら、ここで死んだほうが・・・・・マシだ・・・・・」
ホントに死んでしまいたい気持ちだった・・・・・。
この救急隊員1号と2号にオレのこの今の崖っぷち心理状態などわかるはずもないだろう・・・・・
「はたしてFATBOY SLIMとは・・・?」から全部彼らに説明しないといけない・・・・・そんな暇は無い。
「あなた・・・・・イイ大人が何子供みたいなこと言ってるんですか・・・・・倒れたまま起き上がれないでしょ・・・・
担架で救急車まで運ぶしかないんだから・・・・・ホントに・・・・・!」
「救急車に乗るくらいなら、死んだほうがマシ・・・・・なんて言葉・・・・・初めて聞いたよ・・・・」
「オレが、動かないから担架に乗せようとするんだろ・・・?じゃあ起き上がればいいんだな・・・・?」
「ま、まあそうだけど・・・・でもそんなこと言ってもあなた立ち上がるの無理でしょ・・・?それじゃあ、10秒間だけ
・・・・・10秒間だけ待つから、立てるなら立ってごらん・・・・・!私が10数えるうちに立ち上がれなかった
ならば、そのときは・・・・・・」
「立ち上がれなかったら・・・・そのときはどうするんだ・・・・・?」・・・・・オレは訊いた。
「そのときは当然あなたを担架に乗せて救急車に運ぶよ・・・・・・これは遊びじゃないんだ・・・・」
次の瞬間、レフェリー=救急隊員1号によるカウントが始まった・・・・・・
「1・・・・・・2・・・・・・・3・・・・・・・4・・・・・・・5・・・・・・!」
ここで立ち上がれないと、オレの歴史的悲劇な夜が待っている・・・・・・オトコなら、起てよ・・・・・!
オレの身体の奥に眠っていた深層マグマがここで一気に噴火し・・・・・奇跡は起こった・・・・・!
「・・・・・6・・・・・・7・・・・・・・8・・・・・・・9・・・・・・・」
10カウントの直前・・・・・オレは・・・・・・マット=床のうえにしっかりと2本足で立ち上がった・・・・・・。
カウントしていたレフェリー=救急隊員1号は、一瞬驚きの表情を見せた・・・・・。
オレは、レフェリーの目をしっかりと見据えながら、なぜか・・・・・「ファイティング・ポーズ」をとっていた・・・・・
まわりにできていた見物人たちから、なぜか、どよめきと同時に拍手がわいた・・・・・・・・これはエンターテイメント
じゃねえよ・・・・・・!!!
これでピンチはなんとか、切り抜けた・・・・・・。
こんなお祭り騒ぎは無期延期だ・・・・。これからもそうであることをただ祈った・・・・・。
そのあと自分で、TAXIを拾い、24時間救急病院へと走った・・・・・。
その車中、ある言葉をふと思い出した・・・・・・
「苦しみや、哀しみは、乗り越えられるひとに、降りてくる・・・・・。
幸せは、苦しみや哀しみを知るひとに、降りてくる・・・・・。」・・・・・確かそんな言葉だ・・・・。
ああ・・・・天の神様は、オレを何に「育てあげよう」としているのだろうか・・・・・・。
あの「翼の生えた肥満少年」は多分、答えを知っているのかもしれない。
その答えを見つけるまで、オレは死ぬまで、街を彷徨い続ける・・・・・・・。
(実際今回の診断結果・・・)鼻の骨が折れようが・・・・・・。
~ Fin ~


