こんなに長く書くつもりじゃなかった
"100分de宗教論"
視聴感想観その1、その2


…に続いてその3です。



最後に紹介されたのは
神はどこにいるのかを探るための名著として
中島岳志氏が紹介
遠藤周作 「深い河」



12歳の時
カトリック教会で
洗礼を受けたキリスト教徒であり小説家

宗教は
宗教対立とか戦争を繰り返したりもするが
真理は多元的に現れるものであり
最後はひとつの真理に行き着くのだという
宗教多元主義を記しているのが「深い河」

無意識に信仰する大津と
信仰心を奪おうとする美津子
毎日祈る大津
からかう周囲の人間
神から大津を奪ったあと
容赦なく捨てる美津子

そんな大津が神を捨てなかったわけ

それは
ぼくが神を棄てようとしても
神はぼくを棄てなかったから。



ここからは
美津子が「神」という言葉を嫌ったので
ここからは神=玉ねぎです。



玉ねぎは愛の働く塊りなんです。
玉ねぎはある場所で棄てられたぼくを
いつの間にか
別の場所で生かしてくれました。
ぼくの意志など越えて
玉ねぎが働いてくれたんです。

大津は
玉ねぎの存在を
ユダヤ教の人にも
イスラム教の人にも感じるし
玉ねぎはどこにでもいるとさえ思うのだという。

しかしヨーロッパでは
こういった多元的な考えは
受け容れてもらえなかったために
大津はヨーロッパから離れ
インドに向かうのですが
ここでも美津子は
なんだかんだとちょっかい出してきますので
本当は玉ねぎが気になるのだけれど
認めたくないみたいな
矛盾が美津子の中に見え隠れしていますよね。

大津はこうも言っています。

玉ねぎは死にました。
でも弟子たちの中に転生したのです。
玉ねぎは今あなたの前にいる
このぼくの中にも生きているのですから。





玉ねぎ(神)は
自分の中にいる。





随分前にこの記事↓でも書きましたが


私もこの考えに近いかなと思います。
私は神社に神様はいないと思ってます。
神様は自分の中にいるんだけど
弱ってくると外に求める。
それが神社とかパワースポットなんて
呼ばれている場所なんじゃないかな。
人が元気になれる場所
そういう気持ちにさせてくれる場所
それが神社やお寺なんだろうなと思うし
神社はそう作られているし
その建造物や空間はとても素晴らしいので
行くのは好きですし
マナーとして端を歩くとか、
(違うところもありますが)二礼二拍手一礼とか
そういうことはちゃんとやっています。




それでも
日本人は
真似事の祈りをやる美津子のように

神社やお寺に参拝に行ったり
お守りを身に付けたり
神棚を祀ったり…

商売繁盛や恋愛成就
合格祈願や病気平癒など
神仏を信じることによって得られるとされる
様々なご利益を求めて
大した信仰もないのに
たまに来て
お願い事をするけれど
無宗教ですという日本人

その心に染み付いている"宗教"は
神道であり
いわゆる八百万の神なんですよね。
月の神様、海の神様、山の神様…
学問の神様や薬の神様
そして
家の中で言えば
キッチンにもトイレにも神様がいます。



遠藤周作は
キリスト教徒ではありますが
やっぱり日本的な神道が
心の何処かに入り込んでいるのでしょう。

私の中では「深い河」が
一番しっくり来ましたので
物心ついたときから
無意識に心の中に入り込んでいるのは
キリスト教やユダヤ教などの一神教
ではなく
神道の多神教が
知らず知らずのうちに染み付いていたんだな
と妙に納得しました。

神道は教祖がいるわけでも
教義があるわけでもないから
無宗教だと思っている人が多いけれど
実は無宗教ではなく
アニミズム的な民族宗教が
意図せずとも心に入り込んでいる
ってことですかね。

でもまあ、
先にも書きましたが
大人になって現実を知れば知るほど
基本的には
神様なんていないと思って生きています。





前にマタギの特集のときに感じた
宗教的、日本的な思想
というのは
まさに神道のことなんですよね。
"熊は山からの授かり物"
というアニミズムの思想そのものであり
あくまで"山の神様"を崇拝しているのであって
崇拝している神からの最大級の授かりものは
有り難くいただく
ということなんだろうけど
あのときは
その最大級の授かりものが
もう神様みたいなもんだと話されていたので
それだとちょっとなんかおかしくない?
と思ってしまいましたが
基本の考えはここにあるんですよね。



物事を知るってのは楽しいなぁ
と心から思いました。



……………



美津子のように
真似事の祈りをする。
それが
現代の日本人なのかも知れません



……………



それにしても
最相葉月氏は
この回に必要だったのかな?
くだんの件以外にも
全体的に的はずれなことを
話されていたように感じましたし
視聴者と同じように
勉強しに来ているように見えてしまいました。



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