スイスの予防医療に対する意識 | 生物学者ママの実験的スイス生活

生物学者ママの実験的スイス生活

スイスドイツ語圏最大の都市で、仕事と子育てに奮闘中の研究者ワーママ。
夫とチビちゃん二人の家族4人の日々の生活を、生物学者としての視点で(独断と偏見も交えつつ)考察します。

私と夫が日本に行くときに、真っ先に予約するもの。

それは、人間ドックである。

 

スイスあるいはヨーロッパどこでもそうだと思うが、予防医療に対する意識は著しく低いと感じる。

というか、世界中で日本だけが突出して高すぎるのかもしれない。

日本だと雇用主が年一度雇用者の健康診断を行うのが義務付けられているとおもうのだが、こちらではそのようなものはない。

 

こちらの大学の中に、保健管理センターなるものはない。

医学部付属の大学病院はどちらにもあるが、それとは別に、日本では一般的には学生と職員向けの保健管理センターがあり、そこで学生の健康診断などもやっている。

毎年ではなかったが、節目の年(入学時とか、放射線取扱者登録時とか)の簡単な健診は少なくとも私が学生の頃には義務だった。

 

こちらでは、自分の健康は完全自己責任である。

私はこれまでの経験からいうと、医療関係者の間でもどうやら予防医療の意識は高くはない。

というのは、こちらに来てまもなく、まだ30台前半のころに、かかりつけ医に

「毎年の定期健診はあるのか」

と尋ねたところ、

「なにか気になるところでもあるの?無いなら大丈夫、まだまだ若いんだから!」

と軽くあしらわれた。

日本なら、20代だろうと健診は普通である。

この瞬間に、この国の予防医療はあてにならん、と我々は悟った。

そこで、毎年か隔年に帰国するたび、日本で人間ドックに足を運ぶ。

 

なんといっても日本の人間ドックは素晴らしく効率的である。

一箇所でほとんど体すべてをチェックしてもらえるのだ。

胃カメラとか、脳ドックとか心臓ドックとか、気になるところは更にオプションを加えることもできる。

しかも、半日もかからずに、全部がおわる!

もちろん同じような検査設備はスイスにもあるだろうが、おそらく、この検査はここ、あの検査はあちらと別々に日時を指定されて、同じ内容をこなすのが数週間がかりになるのは簡単に予想できる。

さらに費用はおそらく桁がひとつあがる、いや下手したら2つあがるかもしれない。

 

持病があればその検診に定期的に通う人はいるだろう。

私は歯医者と産婦人科も、毎年自主的に健診にいく。

この年になれば、残り定年までは体力勝負であると思っているので、忙しくても行く。

 

スイスの医療は高度である。それは間違いないと思う。

ただ、病気が進行してからでは、遅いのだ。
ここ15年ほどで、同じ学科の同僚二人(ともに50そこそこ)も病気でなくなっている。

発見が遅れたのだろう、見つかってから二人ともあっという間だった。

酷くなるまえに見つけるのが大切。

これだけ健康オタクなスイス人たち、どうしてそのことに無頓着なのだろうと不思議である。

もしかして、適当に顧客が死んでくれないと経営が成り立たない医療保険会社の陰謀なんじゃなかろうかと、ブラックな想像までしてしまう。

 

早期発見早期治療にまさるものなし。

そう思うので、自費で払ってでも我々は毎年日本で人間ドックに行く。