Bärlauch(クマニンニク)摘み | 生物学者ママの実験的スイス生活

生物学者ママの実験的スイス生活

スイスドイツ語圏最大の都市で、仕事と子育てに奮闘中の研究者ワーママ。
夫とチビちゃん二人の家族4人の日々の生活を、生物学者としての視点で(独断と偏見も交えつつ)考察します。

スイス在住者の間で、Bärlauchはおそらく最もメジャーな山菜だろう。

日本の行者にんにくと近い種類で、形は違うがニラのような匂いがする。

花が咲く前が食べごろなので、チューリッヒ周辺では場所にもよるだろうが今週来週辺りまでが採集のチャンスだ。

大量に摘んでおいて一年分冷凍しておく強者もいるそうだ。

 

ニラの代わりとして刻んで餃子などに入れるのもいいが、スイス人の間でメジャーなのはペストソースにしてスパゲッティなどに絡める食べ方だ。

ニラに比べると香りが繊細で、火を通しすぎると消えてしまうので、私も風味を楽しむならペストソースが良いと思う。

 

山の日当たり悪めのちょっと湿った斜面などが生息地だ。

地下茎で増えるようで、たいてい広い範囲の地面を覆うように生えている。

そのため、あるところには大量にあるが、ないところには全く見つけられない。

 

うちの近所の山では、ちょっと湿気が足りないためか、それほどたくさん見つけることができないが、先々週いつもは通らない小道を散歩で通った際にかなりたくさん生えている場所を見つけた。

その時は袋を持っていなかったので、後日出直して、ぶぶちゃんといっしょに摘みに行った。

散歩にいくというと嫌がるくせに、食い意地の張ったぶぶちゃんは、美味しいスパゲッティペストが食べられる!となるとご機嫌でついてきた。

 

Bärlauchを摘むときに注意すべきは、以下の二点である。

1.間違ってすずらんなど似た植物を混入させない(葉の形が似ており、毒がある)

2.キツネなど動物に汚染されてないか気をつける(このあたりには寄生虫エキノコックスがいる)

 

1は正直植物学者としては間違えようがないと思う(すずらんは厚みや質感がぜんぜん違う上、匂いがしない)が、うっかり混ぜると致命的なので慣れない人は要注意だ。

2は、エキノコックスは感染すると相当痛いらしいので(肝臓などを食いちぎられるとか!)ぜひ気を配りたいところだ。

 

私が摘むときには、歩道のすぐ脇などのアクセスしやすい場所からは取らないようにしている。

キツネだけでなく他の動物も接触しやすい場所だからだ。(お散歩中の犬とかね)

少し奥まった場所の、細い木が沢山生えている間あたりが動物が入り込みにくく、枝が折れていれば近づいたのがわかるので良いと私は思っている。

また、何かしらの汚れのついている葉は取らない。

昔エキノコックスの専門家に聞いたときには、あからさまに汚れてさえいなければ、よく洗えば大丈夫でしょうとのことだった。

 

エキノコックスの潜伏期間は長く、数年以上に及ぶ。

それだけ長いと、正直感染がわかったところでいつ感染したのかなんて絶対わからないので、時限爆弾のロシアンルーレットのようなものだ。

 

感染予防には、本当は加熱するのが一番良い。

エキノコックスの卵を死滅させるには、100度なら1分の加熱が有効らしい。

(こんな情報が自治外のウェブサイトにのってるなんてさすが北海道)

ただ、加熱すると風味は弱まる。

よく洗うというのは加熱に次ぐ次善の策ではあるが、風味を考えると良い方法だ。

というわけで、クマニンニクを摘んでくるのは一瞬でかなり簡単だが、持ち帰った後に台所でえんえんと時間をかけて何度も水を替えて大量のクマニンニクを洗い、オリーブオイル、塩、胡椒でペストを作った。(チーズを入れても良いらしい)

 

一部はその日のお昼ごはんのスパゲッティソースに、残りは冷凍庫行き(また次回)となった。

旬のものは体に良いというが、ニンニクよりも爽やかな風味で色鮮やか、春のこの時期におすすめのレシピである。