パパです。
6月7日(木) 入院6日目
脳波の結果説明をパパとママ二人で主治医から説明を受けました
その時のブログ
上記では病状説明の用紙に書いてあったものをそのまま載せただけなので、書ききれなかった口頭での説明や質疑応答などについてまとめます。
主治医による脳波の解説
脳波は心電図を頭につけたものとイメージしてもらえば良い。
ちなみに心電図は必ず脳波と同時に記録することになっている。
心臓の電気信号が脳波に入り込んでくることがあり、心電図と同じ刺激が脳波に出てくれば、「心臓の電気信号を拾ってるんだな」と考えられる
通常の感度(左上の赤丸で囲った部分)で波形を表示した場合、上下に隣り合う波形がぶつかり合うことはない。
センちゃんの脳波はめちゃめちゃ振れ幅が大きい
興奮がデカ過ぎる
試しに感度を通常の1/5(左上の赤丸で囲った部分)にすると・・・
これでやっと正常の脳波の興奮の度合いになる。
センちゃんの脳波は普通の人の5倍は荒れてるって感じですね
全ての電極で同様の波形を示しており、脳全体で異常な興奮が起こっているが、どちらかというと脳の前側で興奮が強い。
脳波の振幅が大きく不規則バラバラな波形
ヒプスアリスミア(アリスミア=『リズムが無い』と言う意味)という脳波の所見がみられる
脳波検査中に発作はなかったが、通常時でこれくらいの所見があれば診断として十分なくらいの特徴的な脳波である。
点頭発作(トニックスパスム)と思われる発作もあり、脳波と併せてウエスト症候群と考えられる。
<点頭発作の特徴>
頭をうなずいたり、体を折り曲げるような動作、両手を振り上げたりする動作が突然出る
以下では、先日渡された説明用紙の内容に補足しました。
小さい赤字が補足です
脳波検査の結果、ヒプスアリスミアという所見を認めました。
発作形式と合わせて、West(ウエスト)症候群と診断します。
West症候群について
点頭発作(群発する(発作が続けて起こる) = シリーズ(発作の開始~消失するまで)形成と言います)
脳波
ヒプスアリスミア 上記参照
発達遅滞・退行 退行=できでたことができなくなる。笑ってたのに笑わなくなったなど。センちゃんもそんな感じです。
上記の3つが特徴と言われています。
てんかんは、その中にも様々な種類がありますが、West症候群は小児における「難治性てんかん」の代表格です。
脳波の異常がかなり強いてんかんであるため、発達面への影響が出やすいもののひとつです。
発作を抑え、さらに脳波所見を改善することは、これからの発達を促す上でも重要となってきます。
ウエスト症候群は生後半年~1歳くらいで発症する。新生児期は少なく、5~6歳で発症ということもない。
他のてんかんに比べ、ウエスト症候群は脳波の波の異常が強い、脳波が派手なのでそれだけ発達に影響がある。
てんかん性脳症とも言われ、それだけ脳への影響が強いてんかんの代表格。
脳波の乱れが強ければ強い程、発作が長く続けば続くほど発達への悪影響がある。
まずは発作のコントロールが目標、次に脳波の乱れをいかに抑えるかが、発達を促していく上で重要。
ウエスト症候群は乱れた脳波が多く残っている程、再発のリスクが高いと言われている。
治療法として以下の提案をします。
ビタミンB6投与
副作用として嘔気などあるが、比較的少ない。しかし、有効率は1割程。
だいたいどの施設でも最初に使用するのが、ビタミンB6。
メリットは副作用が少ない、嘔気が出たり、まれに肝機能の数値が上がることがある。
投与量は大人に処方するくらいの量だが、外来で処方することは可能。
有効率は1割くらい、2割とは言い難い。
効く人は確かにいる。
1週間くらいで有効かどうか判定する、効いてなければ発作が続くだけで長く内服する意味はない。
ACTH療法 ACTHがなぜ効くかははっきりしていない部分が多い。
人工的に作られたホルモン(ACTH=副腎皮質刺激ホルモン)の薬で、West症候群に対する治療の中では、他の治療よりも有効率は高い(7~8割程度)と言われています。
入院での治療となります。治療中は外泊・外出はできません。
筋肉注射(大腿部、左右交互)で、朝1回投与します。
通常、2週間連日投与、その後(3週目)隔日で3回投与して終了します。
(注射の期間としては、おおよそ3週間となります)
West症候群に対する各種治療法の中では、治療効果は高いと言われてますが、その分他の治療法に比べて副作用が多いのが特徴です。
また、治療によりいったん発作がおさまっても、しばらくしてから再発することもあります(約半数が再発)。
<ACTH療法における副作用> ステロイド全身投与の副作用を強くした感じ
・不機嫌、不眠 8割くらいの人は出る
・食欲亢進
・肥満、満月様顔貌
・肝機能障害、電解質異常(特に低カリウム血症) 低カリウムは結構あり、適宜カリウム補充を行う
・易感染性(感染症が重症化した場合は、時に生命に関わることもある) 風邪から肺炎など
・高血糖 あまりない
・高血圧 たまに血圧が上昇する人がいる
・胃腸障害(消化性潰瘍など) あまりない
・心機能障害(睡眠時の徐脈・不整脈、心筋障害など) 睡眠時の徐脈は結構あるが、血圧が下がることは少ない。
・脳萎縮(可逆性といわれている)
主治医の印象だと100%みられる、30~40例経験してるが全員あった。
1年後くらいには治療開始前の状態に戻る。そもそも頻回にMRIを撮ることがないのでいつ元に戻るという具体的な時間は分からない。
・硬膜下血腫など脳内での出血、硬膜下水腫 報告としてはあるが稀である。
・白内障、緑内障などの眼科的合併症 頻度は少ないが眼科で治療前後に診察してもらう。
などが挙げられます。
これらすべてが起こるわけではありませんが、ACTH療法を行う場合はこれらに注意しながら治療を進める必要があります。
ACTH療法は、定期的に血液検査や尿検査を行いつつ、脳波検査を週に1回確認しながら治療を進めていきます。
なお、治療中に重篤な副作用がみられる場合は、そこで中断となります。
治療中、週1回は脳波、週2回は血液検査、週1回は尿検査
治療と同時に副作用チェックも進めていく
3週間の投与が終わっても、治療の副作用チェックなどでその後4~5日程度の入院となります。
抗てんかん薬の内服
バルプロ酸がよく使用される薬です。
それで効果がみられない場合は、その他にも様々な抗てんかん薬を使用します。
ゾニサミド、クロバザム、クロナゼパム、トピラマート、レベチラセタムラモトリギンなど。
ACTH療法に比べると、いずれも有効性は低いといわれています。
有効率は5割程度。
ビガバトリン(サブリル)
特に結節性硬化症という疾患をお持ちのWest症候群の患者さんで、有効性が高い(ACTH療法と同等レベル)と言われていますが、その副作用として高頻度に不可逆性の視野狭窄がみられるという特徴があります。
去年やっと承認された新薬で国内での使用経験が少ない。
結節性硬化症(てんかんを合併しやすい)の方だと効きやすいというデータがあり優先順位は高い。
不可逆性(一旦なったら二度と戻らない)の視野狭窄という副作用がある、20%とかかなり高い確率。
我々の施設で多い方針は、入院が可能ならまず(ビタミンB6)を行い、その間にACTH療法を見越して検査を追加し、
が無効ならそのまま
(ACTH療法)を行う。
の後も、何らかの抗てんかん薬は外来で飲んでいただく。
最初に(抗てんかん薬の内服)を選択した場合。
週に1回受診していただき、内服を調整。
やってみて途中でACTH療法をする場合も多い。
他の治療方法としてガンマグロブリン(有効率5割以下)、TRH療法などがある。
ぐちゃぐちゃの脳波が続くと発達への悪影響が懸念される。精神・運動の発達以外にも嚥下機能への影響もあるので、いかにこの脳波をコントロールするかが大切。
ビタミンB6が無効だとすれば、次の手として当院ではACTH療法を優先的に勧めている。
先に抗てんかん薬を試す方法もあるが、入院治療が可能かどうかなどの状況も考慮して治療方法を選択していく。
~質疑応答~
※施設や個人により考え方が異なります
ビタミンB6大量療法の効果判定は
最大まで増やした後、最終日くらいに脳波を再検査して判定する。
明らかな脳波の改善がない限り、ACTH療法へ進む。
また、ビタミンB6大量療法中にACTH療法前の検査を済ませることができる。
同様の手順を取る施設は多い。
有効率の『有効』とはけいれんが完全に消失すること
けいれん発作が抑えられること=有効、と捉える。
脳波に多少異常が残っていても、実際にけいれん発作が起きなければ有効とする。
逆に言うと、無効の場合は脳波異常も残り、けいれん発作も残るという解釈。
ウエスト症候群の脳波が完全に消失する場合はある
健常者と全く変わらない脳波に戻る人もいる。
全体であった異常波が一部分に限定される人もいる。
入院での抗てんかん薬調整のメリットは
外来では週単位での調整となるが、入院中だと3~4日で薬の増量が可能である。
特に、息止めを伴うウエスト症候群は自宅で看るのは不安が大きいので入院して調整するメリットが大きい。
ACTH療法後に抗てんかん薬は必須
いつからどんな薬を使う
脳波に少しでも異常波があれば抗てんかん薬を内服する。
バルプロ酸を退院直前に開始して、外来で増量する。
ACTH療法で投与するACTHの量は
0.0125mg/kg、連日投与も隔日投与もこの量で投与する。
昔はもっと多かった。
《参考》
ウエスト症候群の診断・治療ガイドライン(PDFファイル)
ACTH療法の第3周目の隔日投与の意味は
連日投与が効いた後のダメ押しというよりも、副腎不全の予防のための意味合いが大きい。
ACTH=副腎皮質刺激ホルモン
ACTHによる刺激が急激に減ると、副腎が「ホルモンを出せ」という命令が来ないと思ってその機能が低下する。
低血圧、ショック状態など。
ACTH療法の効果は長く残る
いつまで効果が残るといった具体的な数値は分からない。
ACTH療法が効いて一生発作が起こらない人もいる。
発作の再発が月単位の人もいれば年単位の人もいる。
症候性(原因となる病気が脳にある)のウエスト症候群のACTH療法に対する反応は
脳に何らかの異常がある人は再発する可能性が高い印象はあるが、効く人にはよく効く。
皆が皆、同じ反応を示す訳ではない。
それなりの効果は出ている。
脳に全く異常がない、遺伝子異常もないウエスト症候群の人でも全く効かない人がいる。
先生(主治医)のお子さんが同じ状況だったらどうしますか
ACHT療法をまず第1にやります。ビタミンB6を飛ばしても良い、それくらい。
「へぇそうなんだー」くらいで流して読んで下さい
疑問があれば必ず主治医に確認を
ではでは