《監督》 石田雄介
(「 ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー」「Still Dreamin'〜布袋寅泰 情熱と栄光のギタリズム」)
《脚本》 三嶋龍朗
(「愛のこむらがえり」「シティーハンター」)
《出演》赤楚衛二、白石麻衣、柳俊太郎、市川由衣、川崎麻世、早見あかり、筧美和子、佐戸井けん太、北村一輝、ほか
漫画を原作としたゾンビ作品で、アニメ化と同時にNetflixで実写映画化されたもの。
ゾンビ映画の中でも、割とポップでコメディな展開を見ることができる。
ゾンビ映画は怖くなくても良いのだ。ただルールさえ守っていれば。
たとえばそのルールの一つとして、主人公が迫り来るゾンビから逃げ続けることも挙げられる。逃げ続け、生きることへの執念があることが大事なルールではないだろうか。
主人公が早々に諦めて死を受け入れてしまったらゾンビ映画はおもしろくない。あちこちから襲いかかる魔の手から逃れ、生き延びる策を思い付くから見応えがあるのだ。
ブラック企業で社畜のように働いていた頃のアキラは生きることを諦めていた。勤務初日から徹夜残業、毎日毎日職場で暮らしながら生活する状態が当たり前の日々である。一年経ち、会社から逃れられなくなっていたアキラは、もはや死ぬことで会社に行かなくて済むとすら望んでいた。
ところが、ある日突然ゾンビが溢れた世界になったからこそ、彼は会社に行く必要がなくなり、生きることへの執念に目を覚ますのである。
屋上でゾンビに追い込まれ、見渡せばあちこちで煙が上がっている。どう見ても世界の終わり。どう見ても絶望の淵。それなのに彼は、会社に行かなくて良くなったという事実に歓喜し、舞い上がるのだ。
明らかに異常。しかし、ブラック企業に縛られるということは普通の感覚を麻痺させてしまうのかもしれない。そんな斬新なスタートからゾンビとの共存が始まる。
そもそも本作において、ゾンビ化が始まった原因は一切言及されない。報道では感染と言われているが、どこから始まったのか、それはどこまで広がっているのか曖昧なまま。
それが社会的な事情はどうでも良いことの証だろう。本作はアキラがブラック企業から解放され、自分らしさを取り戻すという個人的な事情に何より焦点が当てられたドラマなのだ。
でもやはり、ちょっとは気になる…。
VFXとはいえ歌舞伎町の再現はすごかった。あの眠らない街を死の街に変え、ゾンビと事故で立ち往生した車だらけにしていた。よく見た景色なのに、まるで見た事のない景色のようだ。
歌舞伎町のドン・キホーテを舞台にしてゾンビと戦うシーンも、実在する店舗だからこそリアルで緊張感がある。ゾンビを引きつけるためにドン・キホーテの曲を流すのだが、あのお馴染みの店内曲がスリリングな恐怖の曲のように聞こえてくる。
中盤まではドラマ的にも良かったのだが、水族館のサメがゾンビになってからは急に角度が変わる。ゾンビ映画だったはずがサメ映画になっているのだ。しかもB級サメ映画。
なにしろ、サメからゾンビたちの足が生え、陸上歩行をし始めるのだ。エラ呼吸は、どうなった!?
ゾンビ映画は多種多様とは言え、サメがゾンビになって陸上歩行をし始めるという超展開には付いていけなくなったが、それを除けば個人的にはゾンビ映画のルールの一つである、生への執着を感じられてまぁまぁ楽しめたと思う。
「ブラック企業で嫌々働き続けることは、自分の人生を生きることを諦めているのではないか?」という発想は良かった。
第1525作目・『ピクセル』
《監督》 クリス・コロンバス
(「ホーム・アローン」「ミセス・ダウト」「ハリー・ポッターと賢者の石」)
《脚本》 ティム・ハーリヒー、ティモシー・ダウリング
《出演》アダム・サンドラー、ケヴィン・ジェームズ、ミシェル・モナハン、ジョシュ・ギャッド、ピーター・ディンクレイジ、ほか
かつて地球から宇宙に発射したデータを元に、宇宙人が地球に攻撃を仕掛けてくるストーリー。
彼らが参考にしたのは往年のレトロゲームを模したキャラクターとゲーム設定。ギャラガ、センティピード、パックマンなどのゲーム設定の元に、その登場キャラクターを模して攻撃を仕掛けてくる。
挑むのは、かつてアーケードゲームの大会で優秀な成績を収めていたゲームオタクたち。
冴えない日常を送っていた彼らが、地球を救うヒーローに抜擢されるのだ。
登場するゲームは80年代に人気だったアーケードゲームを基本としていて、かなり古い。この当時リアルタイムでやり込んでいた人なら、尚更楽しめるのかもしれないが、個人的には辛うじてパックマンとドンキーコング、テトリス、が触れたことがある程度。最初に侵略してきたギャラガとかあまりよく知らなかった。
ゲームオタクの彼らは攻略法を知っていて、ゲームの攻略法を駆使して立ち向かう。ゲームの攻略法を知っていることと、武器を自在に駆使できることは別問題だと思うのだが、素人でも使いやすい有能な兵器だということで解釈した。
ゲームオタクの親友が大きくなったらお騒がせ大統領になるという大胆な設定は、逆に新鮮であった。
荒削りな設定の方が本作のぶっ飛んだ世界観には合っている。
※ちなみにマイナーチェンジですが、月初めの「まとめ」では今後、《あらすじ》を省略します。