第1368作目・『フィフス・エレメント』 | 【発掘キネマ】〜オススメ映画でじっくり考察 ☆ネタバレあり☆

【発掘キネマ】〜オススメ映画でじっくり考察 ☆ネタバレあり☆

いつの時代も名作は色褪せません。
ジャンル、時代いっさい問わず、オススメ映画をピックアップ。
映画で人生を考察してみました。
【注意】
・ネタバレあり
・通番は個人的な指標です。
・解説、感想は個人の見解のため、ご理解下さい。

 『フィフス・エレメント』

(1997年・フランス)

〈ジャンル〉SF/アクション



~オススメ値~

★★★☆☆

・リュック・ベッソン監督の少年の心に満ちたSF作品。

・笑いどころもあってポップに楽しめる。

・人類を救う価値は何か。


(オススメ値の基準)

★1つ…一度は見たい

★2つ…良作だと思う

★3つ…ぜひ人にオススメしたい

★4つ…かなりオススメ!

★5つ…人生の一本、殿堂入り

〜オススメ対象外は月毎の「ざっと書き」にて紹介



〈〈以下、ネタバレ注意!!〉〉



《あらすじ》


『1914年、ナイルの地下神殿を調査していた考古学者は火・水・土・風の自然界の4要素を描いた壁画と共に、もう一つの第5の要素の謎を解こうとしていた。だが、そこに謎の異星人が突如現れる。彼らは300年後に再び現れることを誓ってその場を後にする。2214年、神父コーネリアスは300年前に現れたモンドシャワン星人の再来を今か今かと待ち構えていた。宇宙の彼方から5000年ごとに到来するという巨大エネルギーが地球に接近しており、それを退けるにはモンドシャワン星人が持つ4つの石の力が必要だったのだ。しかし、約束通り向かっていたモンドシャワン星人の宇宙船は武器商人ゾーグの命を受けたエイリアンによって攻撃されてしまう。宇宙連邦評議会が宇宙船に残された遺伝子から細胞を復元させると、そこに赤い髪の少女が現れた。地球を救う少女リー・ルーは研究所から脱走し、タクシー運転手のコーベンに救われる。コーベンは訳も分からずリー・ルーを匿い、コーネリアス神父の元へと届ける。やがて地球を救う4つの石が実は歌姫ディーヴァに託されていることを知り、コーベンはその奪還に向かうことになる。』


〜それがなければ 地球が 滅びる。〜


《監督》リュック・ベッソン

(「レオン」「LUCY/ルーシー」「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」)

《脚本》リュック・ベッソン、ロバート・マーク・ケイメン

《出演》ブルース・ウィリス、ゲイリー・オールドマン、イアン・ホルム、ミラ・ジョヴォヴィッチ、クリスマ・タッカー、ルーク・ペリー、ほか





【蘇る少年の心とワクワク感】

ブルース・ウィリス引退宣言を機に、ずっと見たいと思って見れていなかった名作を鑑賞。
『レオン』などのリュック・ベッソン監督作品である。主人公のブルース・ウィリスの他にヒロインはミラ・ジョヴォヴィッチ、敵役は『レオン』でも癖の強い悪役を演じていたゲイリー・オールドマンである。
ゲイリー・オールドマンの悪役連投。監督の信頼が高いのだろう。

舞台は2263年の未来である。
300年前に予言されていた通り、反生命体「ミスター・シャドー」が地球に迫っており、人類は滅亡の危機に瀕していた。
地球を救う手立てを持つのは友好的な異星人・モンドシャワン星人の力であり、その異星人が地球に仕掛けた力を発動させる鍵を握るのが4つの石と「5番目の要素」なのである。
予言通り300年前の約束を守って地球を救いに来たモンドシャワン星人だったが、殺し屋の襲撃を受けて宇宙船は大破。至高の存在リー・ルーは地球の科学技術で復元されるも、言葉が通じず研究所から脱走。タクシー運転手のコーベンと出会って地球を救うために行方が分からなくなった4つの石を探すのだ。
何でもないけど強そうなオジサンと地球外生命体の少女という色の濃いタッグである。

空想科学で描く2263年の地球の科学文明を見るだけでもワクワクする。
ベッドや冷蔵庫、シャワー室まで収納タイプになっている未来の単身部屋は空間を存分に活用して快適に生活できそうだ。
武器もハイテクでカッコよかった。
何より興奮したのは、自分の部屋の窓まで屋台船が来てくれて窓辺でご飯を食べるシステムである。デリバリー型の屋台。空飛ぶ車が開発されたら、いつかそういう日も来るのかもしれない。

↑元傭兵のコーベンの部屋には様々な武器を格納する場所もある。シンプルなデザインにしてすべてを収納できる未来のハイテクな部屋だ。


こうした数々の近未来SFを楽しめる一方で、コンピューターはタッチパネル式ではなくボタン式だったりして、何かとアナログ感も残っている。
宇宙航空時は時間短縮のため睡眠導入装置で乗客は強制昏倒させられるとか、人権無視な設定もありえないことこの上なく、その絶妙な"そうじゃない感"がフィクションっぽさ全開のSFとしても楽しめた。
漫画やアニメを見ているかのようだ。
それもそのはず、本作はリュック・ベッソン監督が若干16歳の頃に思いついた作品なのだとか。
SFの世界観を展開しつつも、わざとらしく残されたアナログ性質や作り物感を楽しめるのは、本作が少年の心をベースにして作られたSF大作だからなのかもしれない。
収納タイプの部屋とか空飛ぶ屋台とかって、そういう視点で見ると確かに発想に少年らしさもあってワクワクする

↑闘い方も光線銃やライトセーバーのようなハイテク機器での戦いではなく、あえての格闘術でアクションを繰り広げる。




【愛は地球を救う】

もう一つ面白かったのが民族的な音楽や美しいオペラなど音楽で映像の世界観を表現していたことだろう。
スモッグの漂ういかにも不衛生でごみごみした街の中でのカーチェイスは、まるでスラムの路地裏のような雰囲気を民族的な楽器の演奏で醸し出し、リー・ルーが暗殺集団の襲撃を受けて激しいバトルを繰り広げるシーンではアップテンポなオペラと重なって華麗に戦闘シーンを盛り上げる
また、登場するキャラクターが、宇宙人からハイテンションな中性的なラジオMCなど多種多様に渡っているところも、今で言う「多様性」の先駆けのようだ。
確かに未来の世界のイメージといえば、このようにすべての生物が"ごちゃ混ぜ"な世界である。

また、笑いどころがあったのもエンターテイメント作品を重たくつまらないものにさせなくて良かった
ハイテンションMCが騒々しいのはもちろんのこと、殺し屋なら押しちゃうであろうボタンをわざと設計して自爆させるハイテク多機能銃とか、ニヤッとさせられる場面がいくつもある。
敵役のゾーグも冷酷で恐ろしいのだが、まさかのおっちょこちょい設定。斬新である。
登場して間もなく、早くもサクランボを喉に詰まらせて退場してしまうのではないかとヒヤヒヤしたものだ。
SFを突き詰めると難解になりがちなのだが、こうしたポップなシーンがあるから飽きずに楽しめることができた。

↑「レオン」から立て続けに悪役起用されたゲイリー・オールドマンだが、また全然違うタイプの悪役を演じていてその比較も面白い。


さて、地球を救う4つの石を歌姫の体内という意外なところから見つけた一同は約束の地で4つの石を起動。
水、風、火、土という自然界由来の4要素の力を得て、後一つの「5番目の要素」が集まれば地球を救えるという状況になった。
果たして、「5番目の要素」とは何なのか。

一方、リー・ルーはこれまでの地球史を学ぶためにパソコンにアクセスして地球の歴史を学習する。
その時、リー・ルーはこの地球に「WAR」が溢れていたことを知り涙するのだ。
「世界は破壊の上に創造される」ことを知るリー・ルーは地球を救うという目的に悩み始めていた。リー・ルーが約束を果たすために救うべき地球の住民は、互いに破壊しあっているのだ。果たして本当に救う価値のある星、救う価値のある存在なのだろうか。
その答えをコーベンは突きつける。
人間には「愛」があるのだ。「愛」があることが、人類を救う意味となるのだ。そして、コーベンはリー・ルーへの愛を叫んだ。

それによって、第5の要素であったリー・ルーは4つの石から発せられた光に包まれ、一筋の光を放ってミスター・シャドーを大破させるのである。

↑いつの間にかリー・ルーとコーベンは愛の絆で結ばれていたのである。まぁ、王道の展開だろう。


世界を救うヒーローとヒロイン。そんな二人の恋愛模様。
「愛が地球を救う」なんて24時間テレビでも掲げているようなありきたりなプロットではあるのだが、考えさせられるポイントも含んでいたりして満足できる面白さになっている。
世界の歴史を目撃したリー・ルーにはこの世界がどう見えていただろう。戦争で破壊し合う人類に救う価値はない。一方で、愛を抱くことができる事が人類の最大の価値でもある
それなのに、戦争や侵略に愛は感じられない。微塵もない。人間としての誇りを失った愚劣な行為である。

人類が考えなければならない課題は今も世界で実際に繰り広げられている

(127分)