ズーラシアンブラスの制作者大塚です。

今回はズーラシアンブラスの社会的役割についてお話しします。

 

 

 

もっと子供の知っている曲をやってほしい

 

コンサート終了後のアンケートに「もっと子どもの知っている曲をやってほしい」や「みんながよく知っている曲を演奏してほしい」と書かれることがよくあります。確かにズーラシアンブラスのコンサートではあまり流行している曲や、TVや映画で流れているいわゆる“旬な曲”はあまり演奏しないかもしれません。

では、なぜあまり演奏しないのかといえば、端的には「ズーラシアンブラスの社会的な役割がそこには無いから」ということになります。

そうはいっても、何事もバランスはとても大事です。あまり偏りすぎないためにも、たまには“旬な曲”を演奏することもあります。

 

 

 

ズーラシアンブラスの社会的役割

 

 

ではズーラシアンブラスとその仲間たちの社会的な役割とは一体どういうものでしょうか。私たちは大きく3つの役割を考えています。

 

 

1つめは、音楽を通じた親子コミュニケーションの醸成

私たちが考えているズーラシアンブラスたちのコンサートは、親子でTVヒーローショーを観劇するように、子どもが真剣にヒーローたちを見つめている姿を目を細めてみている親の姿ではありません。

子どもがうれしくて親の顔を見上げた時に、親と目が合うのではなく、親も舞台に釘付けになっているといったシーンを作り出すことです。そして、この親子対等な感動から、家庭に帰ってからもコンサートの話題で親子コミュニケーションがどんどん発展していくといったことをイメージしています。このことについては第1回目にも触れていますので、そちらを読んでいただければと思います。

 

 

2つめは、小さなお子様にもクラシック音楽を楽しむ機会を作っていくこと

弦うさぎやズーラシアンブラスの結成当初は、未就学児が鑑賞できるクラシックコンサートはありませんでした。近年では色々なオーケストラもそうした取り組みを行なっていますが、2000年ごろはズーラシアンブラスたちのコンサート以外にはあまりそうしたコンサートはなかったように記憶しています。

私自身、未就学児の娘をコンサートに連れて行きたくて、あちらこちら探しましたが見つけられず、弦うさぎやズーラシアンブラスを制作する動機となりました。

 

 

 
3つめは、教科書からも消えつつある佳作童謡を後世に伝えていくこと

中山晋平、岡野貞一、弘田龍太郎から近年では中田喜直、團伊玖磨、山本直純など偉大な日本の作曲家たちの佳作童謡がどんどん音楽の教科書から消えていっています。こうした楽曲をズーラシアンブラスはどんどん取り上げ、交響的なサウンドに仕立て直して「シンフォニック童謡」として、クラシック入門という新たな役割を創出しています。時にはジャズ風にしてみたり、ポップスやロックなど様々な音楽に仕立て直し、原曲がもつ素晴らしさを引き出しています。

 

 

 

ズーラシアンブラスにしかできないことを

 

 さて、冒頭の「もっと子どもの知っている曲をやってほしい」や「みんながよく知っている曲を演奏してほしい」といったリクエストですが、これらは私たちがわざわざやらなくても既に多方面でやり尽くされているから「みんな知っている」わけですので、そこはそちらに任せて私たちは私たちにしかできないことに注力しようということです。
 子どもの泣き声がうるさいから、せめて3歳以下は入場制限をかけてほしい...といった意見なども多数寄せられますが、これもそうしたコンサートは他にたくさんあるわけですから、私たちは原則0歳児からのコンサートにもこだわっています(ホールやコンサート主催者の都合により制限がある場合もあります)。

 

0歳に聞かせても、泣くだけで何もわからないではないかと思う方もいらっしゃると思いますが、0歳児から入場できることで救われるお母さんも沢山いらっしゃいますし、兄弟がいる場合などは年齢制限をお兄ちゃんお姉ちゃんも受けてしまうことになりかねません。


 最近はメディアが多様化しています。TVを全くみない人も多く、YouTubeなどは人によって見るものが全く異なります。

ひと昔前では「子どもの知っている曲」「みんなが知っている曲」=テレビで流行った曲でしたので、興味がない人でも聞いたことはある楽曲が多かったのですが、現代では「子どもの知っている曲」「みんなが知っている曲」のリクエストは多くの場合「うちの子どもの知っている曲」「私が知っている曲」といった意味合いが強くなっています。

 

余談ですが...こうした“旬な曲”は著作権の扱いがとても厄介な場合が多いのです。同じコンサートでも、配信がある場合とない場合、配信をしてもアーカイブが残る場合、DVDなどに収録する場合と、それぞれ権利元の判断のハードルが高くなり、「あの曲やりたいね」といった感覚で選曲することはほぼできないのが実情です。

これは著作権が細かく分かれているためで、"演奏権"は許可するが、"出版権"や"複製権"は許可しないなど、著作権が残っている楽曲はひとつひとつ権利状況が全て異なるので、全て出版元に確認を取る必要があるのです。

 

そうはいっても権利の問題というよりは、ズーラシアンブラスとその仲間たちの社会的な役割として、

“旬な曲”より童謡作品やクラシック音楽を届けることの優先順位が高いために演奏する機会が少ないとお考えください。

 

ズーラシアンブラスならではの体験を楽しんでいただけたら幸いです。

 

 

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