クラシック音楽の演奏会が他のジャンルの演奏会と異なることの一つに、演奏するアーティスト本人のキャラクターを表現する機会が、演奏以外にあまりない事が挙げられます。

クラシックコンサートの多くは、司会が入る場合などを除いて、アーティスト自身が話したり、自身の性格を来場者に伝えたりするシーンはほとんどありません。リサイタルでさえアーティストが話をするのはアンコール前にほんのひと言ふた言話すぐらいです。
これはクラシック音楽が、元来音楽やその響きを純粋に鑑賞することに特化しているため、アーティストの個性は言葉ではなく演奏そのもので表現されるべきものと捉えられているからであると考えられます。



しかし、このことがクラシック音楽入門者にはとてつもなく高いハードルとして立ち塞がり、クラシック音楽が幅広い層に浸透しにくいことの原因の一つになっているものと思われます。なぜなら、演奏で表現される個性的な音楽を受信するためには、観客が演奏家と同じくらいその音楽を理解していなければならないからです。
言い換えれば、クラシック音楽の演奏会は元々クラシック音楽の上級者向けに設定されていて、結果として入門者を拒んでいる傾向にあります。入門者向けに分かりやすい音楽を選択して演奏したとしても、演奏家の個性を音楽だけで表現している間は入門者には伝わりにくいと言うことになります。



 小さな子どもでも楽しめるクラシック音楽会を実現することを一つのテーマとしているズーラシアンブラスは、演奏もさることながら、あらゆる手段を使って演奏家の個性をまず観客に知ってもらう工夫をしています。それは、それぞれの個性が観客に伝わっていた方が共感が生まれやすく、その共感とともに音楽を聴いた方がイメージ通りだったり、イメージとのギャップがあったりと、伝わる感動もより深く、より大きくなると考えられるためです。



 例えばインドライオンはナルシストで女性に優しく、いつも格好をつけています。こうしたキャラクターを観客に印象づけてから、情熱的なソロを高々と吹き鳴らします。こうすることで観客、特に女性の観客へ愛が届きます。ただ美しく演奏しただけでは愛は届かないのです。ドゥクラングールはまともに数も数えられないお馬鹿キャラです。お馬鹿キャラを演じることで観客の子どもたちは少しお兄ちゃんやお姉ちゃんになった気分になり、親近感がわきます。そんなダメッ子が、超絶技巧で演奏したりするとイメージとのギャップから感動もひとしおとなります。
このほか、スマトラトラはお調子者だったり、ホッキョクグマは寡黙であったり、マレーバクはねぼすけだったりと、常に観客へキャラクターをアピールし続けることで、それが笑いを誘うネタの演目につながったり、ソロにつながったりと演奏会の様々な局面を分かりやすく観客に伝える事ができます。



 しかし、ズーラシアンブラスのメンバーは全員動物なので言葉や声を使って観客とコミュニケーションをとることができません。そこで重要となるのが、ノンバーバル(非言語)コミュニケーションです。
ノンバーバルコミュニケーションは通常、
①身体的特徴

②動作

③視線の交差

④パラランゲージ(周辺言語)

⑤沈黙

⑥身体接触

⑦対人的空間

⑧時間

⑨色彩
に分類されることが多いようです。
言葉を使えない動物たちはノンバーバルコミュニケーションが唯一のコミュニケーション手段ですが、動物たちはこのうち「③視線の交差」「④パラランゲージ」も使うことができませんので、狭い範囲のノンバーバルコミュニケーションの技術を駆使しなくてはなりません。
このためどうしても表現を誇張する必要があり、お調子者を表現しなくてはならないスマトラトラは鼻●●をほじって客席に飛ばす下品なジェスチャーをして、よくマネージャーにやめるように注意されています。



また、動物たちにはそれぞれテーマカラーがありそれを身につけています。色彩によってキャラクターを補強しているためです。さらにせっかちでおっちょこちょいなキャラクターやとてつもなくゆっくりな動物など、時間もキャラクターを観客に伝える一つとして活用しています。一見、音楽や演奏とは無縁のこうしたノンバーバルコミュニケーションによる一連のキャラクター表現は、入門者にとってクラシック音楽をより分かりやすく身近にするために、とても重要な要素となっています。

 

 

 

 

 

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