なんか、気が付くと ''何ヶ月振り'' とかになっちゃってる映画レビューでございまする。
色々とやる事あっても、フツーの人達よりはそこそこ映画観てるとは思うんだけどね、仮に10本観てもレビュー書くのは3、4割ってトコで、それも下書きの途中で放置してるのが大半だったり、記事用の画像編集してなくて上げられないのが相当あるもんで、なんだかんだ進まないパターンのやつなんですよ。
まぁ、上げたところで 「誰がどんだけ参考にしてんだ?」 って話だけどw
でもまぁ、検索してもレビュー記事がほとんどヒットしない作品なんかも結構あるし、俺的には、誰かのレビューを参考に観るかどうか決めてる作品も多いもんで、「一応書いとこうかな」 的にやってます、ハィ。
「だったらネタバレはダメじゃん!!」 って思う人も居るだろうけど、映画ばっか観てる人って、わりとネタバレとか関係なく話の大筋を知りたいのよ。
なんでって、''数多にある映画作品のどれをチョイスするのか'' って、''今日という一日(24時間=1440分)の90分とか120分をどう消費するか'' じゃないですか。
たかだかの時間ではあるけど、それだけあれば出来る事ってめっちゃ多いし、俺なんかもそうだけど、他にやりたい事をやる時間を割いて映画観てたり、家事やら仕事やら勉強をさて置いて 「一本だけ映画観よう」 みたいな人も結構多いと思うんですよ。
そんな風な 『映画好き』 にしてみたら、一作のチョイスってわりと大事だったりして、90分なり120分なりを無駄にして後悔しない為には、''下調べ的に大筋だけ作品内容を確認する場合もある'' っていうね。
特にオフィシャルに公開されてるあらすじだと作品の良さが全然伝わらない場合も多いし、下手にトレーラーを観たせいで本編が台無しになる場合も多々あるんで、レビューは玄人が自分なりの解釈で書いた方が絶対良いと思う訳ですよ・・・俺はね。
ともあれ、いくら映画愛を以って作られた作品でも、配給の段階では必ずしも映画愛のある人が広報するとは限らない訳なんで(ってか、映画愛なんて皆無な人だらけ)、業界としがらみの無いアマチュアのレビューこそ大事だと個人的には思う次第です。
という訳で、相変わらず前フリ長めで本編へ参るw
え~、毎度の如く、ネタバレ上等のレビュー記事なのであしからず。

ザ・ウォール
原題:The Wall
製作国:2017年 アメリカ
監督:ダグ・リーマン
評価: 3点 (10点満点)
戦時下のイラクを舞台にしたワンシチュエーション・スリラー作品。
監督と演出は、大ヒットシリーズ一作目 『ボーン・アイデンティティー』 や、ブラピ&アンジーが共演して親密となったアクション・コメディ作品、『Mr.&Mrs. スミス』 で知られるダグ・リーマン。
日本ではこの9月から劇場公開中。
2007年、イラク郊外。
元凶とされたフセイン元・大統領の死刑執行により、新政府安定化と復興を目的としてアメリカ兵が大量増員される中、各地で反米武装勢力によるテロが激化し始め、''復興'' や ''治安維持'' を掲げた米兵の活動も一筋縄では行かない状況にあった。
そんな折、アメリカ陸軍の狙撃部隊兵・アイザックとマシューズの二人は、かつて集落があり、今はパイプライン建設現場として復興が進められている砂地の荒野に居た。
襲撃による救助要請を受けて現地に駆けつけた二人は、小高い丘の上に陣取り、敵や現場の状況を偵察する為、かれこれ20時間も偽装したまま身を潜めているのだった。
現場には何人もの遺体が転がっており、何者かによる急襲があった事は間違いなかったが、どれほど偵察してもそれ以上の変化は何一つ無い。
犠牲者のほぼ全員が頭を一撃で仕留められており、逃げる暇も無く倒されている手際の良さに警戒する観測手のアイザックだったが、相棒である狙撃手のマシューズは、灼熱の荒野で緊張しながらスコープを覗き続けている事に辟易していた。
アイザックは、アメリカ兵ばかりを次々と狙撃し、その様子を動画サイトに上げている凄腕の敵スナイパー ''ジューバ'' の仕業ではと懸念していたが、マシューズは考えすぎだと一蹴すると、直接偵察する為に現場へと丘を下り、遺体の状況を一つ一つ見て回るのだった。
まさに一人一人が頭部への一撃で確実に仕留められている事を確認し、妙な違和感を覚えた直後、マシューズは何者かの銃撃によって腹部に被弾してしまう。
慌てて救援に向かったアイザックも右膝に被弾すると、崩れ残った石積みの壁の陰に隠れる以外に術は無かった。
壁の前で敵の目に晒されながらも救助要請を促し、返り討ちを狙うマシューズ。
一方、壁の後ろで敵の目をかわしているアイザックも、膝の痛みに苦しみながら無線で救援を呼ぼうとするが、無線機のアンテナは右膝同様に狙撃され、もはや助けを呼ぶ事すら出来ない最悪の状況にあった。
やがて重傷を負ったマシューズの返答は無くなり、アイザック自身も膝の痛みから失神してしまう。
連絡用のインカムから聞こえる呼び掛けに、アイザックは目を覚ました。
すぐ近くに援軍が居ると察したアイザックはすぐさま救助を要請するが、''隊長のシモンズ'' を名乗るその男の口振りに違和感を覚える。
それが敵スナイパーによる罠だと気付くアイザックだったが・・・。
という訳で、軍事モノではあるものの、いわゆるアクション系とは全く違う、''地味の極みの様な戦争映画'' です。
一見してリアルと言えばリアルだけど、『映画としてどうなのか』 という点で評価は大きく分かれる作品かも。
製作がアマゾン・スタジオという事で、いわゆる従来のハリウッド路線とは少し毛色の違う方向性を感じるけど、その事がプラスでもありマイナスでもあるのは否めないところ。
恐らく、この脚本を従来のハリウッド的に映像化したとすると、もっとアメリカの保守的な流れに寄った作品になってたはず。
つまり、「アメリカ万歳!」 で 「アメリカ最強!」 みたいな価値観を前提に作ったと思うんだけど、そんな事ばっかしてるからアメリカは世界中から白い目で見られてた訳ですよ。
この作品においてのアメリカ兵は、特に悪質な人達でもなければ、任務そっちのけで差別発言しまくりなファッキン・アメリカンでもない。
忠実に真面目に任務をこなす、一スナイパーとその相棒。
だからこそ、敵スナイパーのヘイトクライム観は脅威に映るし、フセイン支持者の思想に立って見れば、逆に敵スナイパーはクールなヒーロー像に映るんじゃないかなと。
どっちが良いとか正しいって話ではないんだけど、露骨にアメリカ側の価値観で作るのは絶対的に違うし、だからってテロリストを支持するのも違うし、こういう史実(イラク戦争)をモチーフにするってデリケートな問題だなぁと思うよね。
一応、この作品はアメリカ兵を主人公に据えた話だからアメリカ側の視点で作られてるけど、変にアメリカ寄りに作られてないのは、特筆すべき評価ポイントだと思う。

この作品を ''地味の極み'' と前述したけども、そもそも低予算B級映画のフォーマットなんですよ、この作品。
舞台はオープンな閉鎖空間だし、主な登場人物も(姿が確認出来るのは)たった二人で、その内一人の意識はほぼ無い状態で進行するし、物語の展開は主人公と敵スナイパーによる会話劇だしね。
終盤でようやく大きい動きがあるにせよ、それまではホントに無線の会話のみで尺を埋めてる感があって、しかも、その会話劇がちっとも魅力的じゃないから困りもの。
現時点でまだ数少ないレビュー記事を見ても、「眠くなった」 とか 「退屈で退屈で・・・」 ってのが当たり前に述べられてるし、実際に寝たって書いてる人も居たw
いや、それが正解と言うか、あの状況で退屈で眠くなる様な会話ぐらいしかしないって、ある意味リアルだと思うんですよ。
曲がり形にも自分と相棒を銃撃した敵との会話ですからね、そうフレンドリーに話せる訳もなければ、冗談を言い合う状況下でもないし、シリアスに話し込むのも違うでしょう。
撃たれた側が罵って、撃った側は余裕の煽りってのはお約束。
その辺りはセオリー通りって言えるんだけど、「それにしたって何かねぇの?」 って思っちゃうのは仕方無いだろうなと。
例えば、敵が援軍だと騙して連絡をよこしたシーンはそれなりに緊張感があったと思うんだけど、そのわりに追及されたらあっさりと騙してたって認めちゃうんだよね。
まぁ、ラストの伏線として必要な部分だけ押さえたのは解るんだけど、もっと粘って狡猾に騙すとか、悪意を強調する為にやり取りを盛り上げるとか、会話劇としてそういった配慮がもっとあって良かったんじゃないかと思う。
なんせ状況的に極端な展開が望めない訳だから、主たる見せ場の会話自体をもっと丁寧に練り上げる必要は絶対にあったはず。
結局、会話劇としては、『壊れかけのディーンのスコープを、何故アイザックが持ち続けているのか』 って理由の告白が着地点になってるんだと思うけど、それも別に面白くないというか、この手の話ではありがちな展開で意外性は無いし、そこまでの過程でアイザックに感情移入が出来る訳でもないから、「へ~、そうなんだね~」 程度の感覚でしかない。
要するに運びが下手なんだよね。
劇中にディーンは登場しないし、アイザックが誤射するシーンだって当然無い訳で、なんならマシューズとアイザックの人間性について掘り下げたシーンすら無い訳だから、観てる側は全くの第三者視点で物語を追ってて、その人物の抱えた歴史なんか知りもしないし、ディーンが彼らにとってどれぐらい絆を持つ仲間なのかも知り得ない。
それなのに、ロクに説明も無しで感情的な独白を泣きベソかきながらされても、こっちにはその熱量が伝わって来ないんだな、残念ながら。
そういった場面で何よりも大事なのは、『どんな過去が痛みなのか』 っていう内容自体の重さではなく、『その過去がそいつにとってどれほど痛いのか』 を観てる側に伝える事なんですよ。
作り手がその点を理解してないのは、この作品にとって大いなる失敗だったんじゃないかなと。
それから、声のみに終始して姿を現さない敵スナイパーの正体が何者なのかはともかく、物語的には、敵は悪名高い凄腕スナイパー ''ジューバ'' として展開してるけど、そのジューバについての説明もまた少なくて、序盤で余りにもあっさり流し過ぎてるよね。
観てる側はどういった展開になるのか知らない前提がある訳だから、序盤で説明するなら、もっとクドいぐらい話を広げたりしないと絶対ダメ。
二人が撃たれて、ジューバがアイザックのインカムにアプローチするところからが会話劇の本編なんだから、そこまでにジューバに関する情報を観てる側には明確に知らせる必要があるはずだし、そこをサラッと流してしまうと、アイザックの感じてる脅威が伝わり辛い上、感情移入だって尚更難しい訳ですよ。
ホラー映画ではないにせよ、閉鎖的状況と絶対的な脅威という危機に陥った主人公の心理というのは、物語を観せる上で ''客席側に伝わってナンボ'' なんです。
アイザックを演じたアーロン・テイラー=ジョンソンの演技が非常に良かっただけに、そういった演出と脚本の不出来はかなり痛いところ。

さて、結末に関しての賛否両論が結構あるみたいですが、個人的には 「それ以前の問題じゃねぇの?」 でしたw
確かに、地味に進行し続けて来たところに大きな動きがあった訳で、「動いた事自体が衝撃!」 みたいな、「山が動いた!」 みたいなところはあったと思うけどw、それでどうなるかってのは想定の範疇に丸々納まる感じ。
そもそも、展開的に ''そうでもしないと(救援が到着しないと)話が終わらんだろ'' とは思ってたんで、個人的には別に何の意外性も無く・・・救援に来たのが宇宙船だったりすればビックリだけどねw
まぁ、どう考えても完全防御した状態で陣を張ってる敵スナイパーが返り討ちに遭うとは思えなかったし、だったら救援部隊も当然銃撃されるであろう事は予想ついたよね。

そもそも、この物語は 「軍のアドバイザーがちゃんと入って書き上げた話なの?」 って疑問がめちゃめちゃあって、wikiには一応、『元・レンジャー部隊のニコラス・アーヴィングがアドバイザーとして参加』 って書いてあるけど、それって狙撃部隊に関する挙動とかをレクチャーしたに過ぎないんじゃないかと思うんだよね。
確かに、武器に関する部分はマニアが認めるほどリアルなチョイスだったみたいだし、アイザックが射撃音とか命中角度から敵のおおよその位置を計算して割り出すシーンなんかも、マニアックながらリアルで興味深いシーンだった。
ただ、状況的に疑問を抱く場面とかも結構多くて、前線で任務に当たる兵士の再現度という意味では、非常に中途半端なものになってる気がする。
まず、あの状況下でたった二人の偵察を送るのか?って点。
それはそこらの軍事マニアに解説させたらすぐ明確になる事だろうし、戦術的に決してあり得ないとまでは言い切らないけど、極めて少数で敵襲撃地へ偵察に向かうって事は、基本的に斥候として現地偵察するのが任務だと思う訳ですよ・・・つまり、部隊が向かう前の先遣隊みたいなね。
だとしたら、20時間の潜伏って大袈裟な気がするし、それだけ偵察して動きが皆無なら、その旨をまず本隊に報告して、直接の現場調査も指示がなければしないと思うんだよね。
劇中では本部に連絡もしないで現場に下りてるし、そもそも20時間で撤退を決めるのだって、マシューズが勝手に言い出してる。
いくらアメリカ人が何につけ大味な連中でも、軍として統轄されてる以上、小マメな連絡義務は絶対的にあるはずだし、そのタイミングを間違える真似なんかまずしないはず。
特に、潜伏を前提とした現地偵察であれば、撤退にしろ現場調査にしろ、動く前に報告と指示を仰ぐのは当然だと思うんだよね。
だって、そこを蔑ろにすると、下手すりゃ後続部隊とかベース基地が危機に晒される可能性だってある訳だから、その辺りは徹底してるはずだと思うのよ、きっと。
それに、マシューズが撃たれた直後に慌ててアイザックが助けに向かうけど、本部に連絡も入れないで勝手な行動してんだから、たった二人しか居ない内の一人が撃たれた時点で、本部への連絡が最優先だよね。
その上、わざわざ敵の射程内に自らホイホイ入ってくほど愚かな行為はない訳で、それはプロとして教育されてる兵士なら絶対に避けるはずなんですよ、被害の拡大化に繋がりかねないから。
大体、二人しか居ないのに単独行動なんかする訳ないし、そんな事してたら、いざ攻撃された場合に援護が間に合わないから、そもそもコンビの意味無くなっちゃうんだよね。
そういった戦術的な部分の矛盾点は、戦地を舞台にしてるだけにいちいち気になっちゃうし、当時のイラク情勢を踏まえても、緊張感無さ過ぎでリアリティに欠けると思う。
ナーバスになり過ぎてるぐらいで丁度良いと思うよね、多分。
それと、二人が撃たれて以降の部分でも、なんだかんだ納得出来ない箇所がある。
例えば、土地柄として砂煙に視界が遮られるシチュエーションは多々ある訳だから、訓練を積んだプロの兵士なら(イラク風土についての基礎知識も学んでるはずなので)、その砂煙を有効的に利用して身を潜めたり、移動するのは当たり前のはず。
劇中ではそういった描写がほとんど見られないし、やってたとしても素人以下の下手さ。
右足が利かないとはいえ、それなりに障害物を使った動きは出来る状況に思えたし、絶望的な状況を踏まえて行動するならば、死体を盾に射程外に逃げるとかだって出来た様に思う。
ってか、そもそも敵がスナイパーだと解ってる訳だから、陽が落ちて狙撃命中率が下がってから逃走経路を探すとか、周囲に点在する茂みを目くらましに利用するとか、出来得る事は色々とあったはずなんだよね。
バカみたいに呼び掛けにいちいち返事して生きてる事を敵に知らせてるぐらいなら、もう少し頭を使って生き延びる術を模索しろと・・・まぁ、あんまり賢い主人公だと映画にゃならんのだけどw
それから、大した事ではないけどわりと気になったのは、水の問題。
序盤の銃撃で水筒が撃たれて、その後の水分確保が難しくなるってシーンがあったけど、彼らってそもそも長時間の偵察を前提に現場へ行った訳ですよね。
劇中では20時間になってたけど、指示によってはそれ以上も有り得たと考えると、あんな水筒一つだけ持って出たとは考え辛い。
となれば、最低でももう少しは食料と水の確保があったはずで、それらは最初の丘の上に置いてあるんだろうか?・・・と。
だとしても、撃たれたとはいえ水筒に水がほぼ残ってないのは出来過ぎだし、ジューバがそれを見越して水筒を狙い撃つなんてのも、魂胆としてどうなんだろうか。
確かに水は大事だけど、それ以前に失血死しかねない大怪我負わせてる訳だからねぇ、水がどうのって話以前の問題だよねぇ。
少なくとも、腹部を撃たれたマシューズは、ジューバ的に重傷を狙ったものだったろうし、片膝のみを撃たれたアイザックも、ジューバ的には程よく負傷させて行動範囲を狭める目的があったと解る訳だよね、遠距離から的確に頭部を狙える凄腕なんだから。
つまり、アイザックのあの危機的状況ってのは、ジューバが狙い通りに導いたもので、生かさず殺さずでジワジワ追い詰める事こそジューバのお楽しみだった訳だ。
でも、言葉で心理的に追い詰めるのなんて、アイザックが会話を放棄すれば何の意味も無くなるし、マシューズの命と引き換えに会話を強要したところで、腹を撃たれて瀕死のマシューズに人質的な価値はそれほど無い訳ですよ、現実的に。
死んだかどうかの確認すら出来ないし、生きてたところで瀕死の重傷なのは一目瞭然。
いくら相棒とはいえ、自分も膝の大怪我で失血死寸前なのに、他人の面倒まで見てられんよね、アイザックが極めて善人だったとしても。
結局、そうなるとジューバの目論見って、計算高い様で実はそうでもないって事になる。
水の件然り、騙し連絡然り、何日もゴミの山に潜伏しながらチャンスを窺ってたわりに、遊びの度が過ぎるというか、単なるサディストみたいな事を楽しみ過ぎ。
劇中では、更なる標的となる米兵を呼ぶ為にアイザックを生かした的な演出になってるけど、それならインカムの会話で最低限必要な情報を得た時点で、アイザックを生かしておく必然性なんかとっくに無いよね。
それでも生かし続けたのが弄ぶ為なら、救援が来る前に接近して拷問するとか、マシューズが蜂の巣にされる様を見せて精神的に苦しめるとか、そういう方法が幾らでもあるはず。
つまり、そういった部分でもやっぱり中途半端過ぎるって事。

ラストに関しても一つだけ言うと、狙撃でヘリの撃墜は幾らなんでも出来過ぎだろとw
ヘリって基本的に不安定な乗り物だから、攻撃による墜落リスクは高めだけど、仮に大口径の対物ライフルを使ったところで、飛行中の機体を地上から的確に狙って乗組員に当てるなんて、それはさすがに現実離れし過ぎてる話。
いわゆるM2みたいな重機関銃でフルオート射撃でもするならまだしも、劇中でジューバが使ってるのは、小銃弾を使ったベーシックな口径のスナイパーライフル。
連射速度からすると、一発ごとにリロードが必要なボルトアクション式じゃなく、自動装填のセミ・オートタイプだってのも解る。
それであれほど的確な狙撃なんか絶対無理w
まぁ、ちょっとこの手の事はかなりマニアックな話になっちゃうんだけど、狙撃手が使う銃ってのは、いわゆる一般的な銃とは結構違うんですよ。
ってのも、狙撃って ''遠距離から目標を的確に仕留める'' から意味がある訳で、基本的には ''一撃必殺狙い'' な訳ですよね。
初弾を外したら、おのずと二発目以降は警戒されたり逃げられたりする訳で、一撃の意味が重い。
なので、俗に 『スナイパーライフル』 って言われる狙撃専用に作られた銃は、特に命中率を上げた構造になってたり、一撃ごとの誤差が少ない作りになってる訳。
んで、そういった ''命中精度に特化した銃'' だからこそ、装弾システムの違いで命中率も変わったりして、セミ・オートよりボルトアクションの方が構造的に命中率が高いって言われてるんですな。
早々に腹を撃たれちゃうマシューズなんかは、2007年時には正式採用されてたセミ・オート式のM110ではなく、それ以前の正式採用銃だったボルトアクション式のM24を使ってます。
つまり、連射速度より命中精度を優先させた武器チョイスって事。
明らかにセミ・オートを使ってるジューバがどんな銃を使ってたのか、劇中では明らかにならないものの、使用弾からすると、遠距離射撃に適した大口径の銃を使ってる訳じゃない事は明白。
「7.62×51mmのNATO弾(30口径)」 と劇中で語られてるんで、前述した様に比較的ベーシックな小銃弾使用のスナイパーライフルです。
・・・って、これが実はとんでもない事だってのは、軍ヲタとか銃器マニアじゃないとまず解んないんですよw
劇中でのアイザックの計算によると、ジューバは1.5キロほど離れた位置から狙撃してる事になるんだけど・・・30口径のライフルでそれだけ遠距離射撃した場合、的確に当てるのはかなり腕が良いスナイパーって事になる。
しかも、場所が場所なんですよ、この作品の舞台の場合。
砂地の荒野で、障害物もほぼ無いから不安定な風が常に吹いてる状態ですよ。
30口径のライフル弾だと、さほど重くない弾頭で火力もさほど強くないから、当たれば殺傷能力は充分あるにしても、風の影響とかを結構受けるはずなんで、連射してそれぞれを的確に当てるなんて芸当は物理的にほぼ不可能なんです。
「それが出来ちゃうからジューバは凄腕なんだ!」 って事なんだろうとは思うけど、そんなもん漫画ですよw
しかも、それで移動してるヘリの乗組員を的確に狙撃して撃墜ですからねw
そりゃもう、まさにゴルゴ13の世界w
まぁ、漫画じゃないにしろフィクションの映画の世界なんで、そういったバカ設定もアリっちゃアリだけど、だったら変にリアリティとか出さずにですよ、完全バカ映画を貫いてくれた方が観てる側はよっぽど楽しめる。

この作品の脚本は、ハリウッド映画界の権力者連中が選ぶ ''良質な未発表脚本'' のランキング、『ザ・ブラックリスト』 に選ばれた一本って事だけど・・・マジで?w
だとしたら、この程度の脚本を選ぶ連中は頭がどうかしてるわw
だって、初稿でこれじゃないんだぜ?
何度も修正とかしてこの程度だぜ?w
もっと直すべきトコだらけだろっ! アホンダラっ!!!w
・・・という事で、腹立たしい限りのハリウッド映画界・・・すっかり終わっておりますw
いや、とっくに期待なんかしてねぇけどなw
アホみたいにアメコミ実写化だけしてりゃいいんだ、ハゲ共め。
仮に・・・仮に俺ならばの話ですけども、この脚本の原案をちゃんと活かしつつ、セリフとかシーンの補足をして、もうちょいマシな仕上がりにしますね。
あと、会話劇の無駄もザックリとカットしますw
だって、「シンプルな会話劇を描きたかった」 的な事を脚本家は言ってたらしいけど、クソつまんねぇじゃん、これの会話劇w
「ねぇねぇ、ところでキミ、どんな銃使ってんの?」 みたいなマニアックトークを誰に向けて書いてんだよw
退屈なシチュエーションでより退屈な話題させるってすげぇけどな、ある意味w
え~、まずですよ、序盤でちゃんと解り易く伏線張りましょう。
20時間も偵察してて退屈してる二人なんだから、「お前、ジューバって知ってる? 米兵狩りしてるイラクのすげぇスナイパーが居るらしくてさぁ・・・」 みたいな会話をさせたらいいんだよ、まるで怪談でも話すみたいに。
そんな流れの中で、死んだ仲間のディーンの名前も出してですね、「その話はすんなよ・・・」 みたいな空気をアイザックに出させとく訳ですよ。
んで、話題を変える為とかで食料なんかの話をして、「そろそろ持って来た水が無くなるぜ? ミイラになるまでここに張り付くのか?」 的な会話がありーの、「水なら誰か持ってるだろ」 とか言って、マシューズが現場の死体から水筒なりを回収しに行っちゃう訳だ、「お前は本部に帰って良いか確認しといてくれ」 とか言いながら。
アイザックはそれに従って本部に無線を入れるんだけど、その最中にマシューズが撃たれる訳よ。
んで、敵襲を報告して援軍を要請するんだけど、一時間ぐらい掛かるから持ち堪えろとか言われちゃう訳。
クソだなんだとぼやきつつ、アイザックも丘を下りてマシューズの援護に向かうんだけど、自分も脚を撃たれて壁に隠れる・・・と。
辛うじて生きてたマシューズに援軍要請した事と一時間待機の旨を伝えるんだけど、どっちも大怪我してるから気絶しちゃって、少しした後にインカムに援軍を名乗る連絡が入ってアイザックがお目覚め。
動転してるから疑いもせず質問に答えるんだけど、「あとどれ位で着きそうだ?」 って訊きつつ時計を見たら、気絶してたのはほんの10分程度だって気付く訳。
救援がそんな早く来る訳ないんで何かおかしいと思って、それがジューバの罠だって事に気付く・・・と。
諸々ジューバとの会話があったりして、何時間しても援軍が来ない事にイラつくアイザック。
暑さと痛みと脱水症状でまた少し意識を無くして、その間にも何度か話し掛けてたジューバは、返事が無くなった事でアイザックが死んだのかどうかを確認しようと、警戒しながら壁の方へ少しずつ近付く訳だ。
そんな頃、意識を取り戻したアイザックは、自分が死んだかどうか確認しようとしてるジューバからの呼び掛けを聞いて、無言で死んだフリのまま近場の遺体が抱えてる無線機を取りに行くんだけど、そこから戻る時に結構近付いて来てたジューバに発見されて、壁が大破するほどの威嚇射撃を食らう訳。
自分の無線機は最初の狙撃で壊されちゃってて、遺体から引き剥がして来た無線機もアンテナがイカレて使えなかったもんで、アイザックはその二つの無線機の使える部分を繋ぎ合せて本部に連絡を入れるんだけど、最初に自分が出した援軍要請はわりと直後に取り消されてたって知る訳よ、ジューバの成りすましでね。
それでアイザックは手短に状況を説明して、ゴミ山に敵スナイパーが潜んでるから、ヘリからの一斉掃射とか手榴弾投下でまず敵を倒してくれって頼む訳。
そんな連絡が済んだ後、マシューズが意識を取り戻したと気付いたアイザックは、なんとか壁の内側に彼を運び込めないかと考えるんだけど、当のマシューズは自分が敵を返り討ちにするって聞かない訳よ。
んで、酷い目に遭ってるのに強気に出ないアイザックにマシューズは苛立って、またディーンの名前をそこで出す訳。
「俺がここで殺られても、お前が責任を感じる事じゃない! ディーンの時とは違う!」 とか言って。
そこでマシューズがディーンの死の真相を知ってた事に気付いたアイザックは、泣きながら詫びると共に、「お前は絶対死なせない!」 とか言い切るんだけど、当のマシューズは自分が助からない事を前提にアイザックを宥めて、「お前がそこまで責任を感じるほど、ディーンは立派な奴じゃなかったさ」 とか突然言い出す。
「知ってるか? クラム(ディーンの妻)は、奴が死んだおかげで初めて家族旅行に行けたんだ・・・遺族手当でな。 俺達の知ってるアイツは良い奴だったが、いつでもそうだった訳じゃない。 クソったれな時をたまたま知らないだけさ。 だからもう、いつまでも奴を引き摺るな」 的な衝撃の告白。
で、呆然とするアイザックの耳に、死んだフリで騙した事を怒りながら元のゴミ山に戻ったジューバからの罵声が響く。
アイザックの事だけに及ばず、アメリカという国家自体をめちゃめちゃ罵ったジューバは、騙した償いは相変わらず倒れたままのマシューズにさせるって言い出す訳だ。
インカムでそれを聞いてたマシューズは、砂煙に紛れながら全力でライフルを構えてゴミ山を撃つも、逆にジューバの狙撃で死亡。
怒りと悲しみで喚き散らすアイザックに、ジューバは満足そうに笑いつつ自分の正当性を訴え、更にアイザックを煽りまくり。
マシューズのライフルを手繰り寄せ、また壁に隠れて援軍の到着を待つアイザックの耳に、遠くから近付くヘリの音。
援軍のヘリが接近し、ゴミ山の上空を通過する直前にライフルでゴミ山を銃撃するアイザック。
ほぼ同時に、ヘリから大量の液体燃料の入った袋と手榴弾が投げ込まれ、ゴミ山が一瞬で業火に包まれると、アイザックは歓喜の声を上げて喜びまくる。
んで、ヘリが無事到着すると、マシューズの遺体と共に乗り込むアイザック。
ようやく終わったと安堵したのも束の間、ヘリが飛び立つ寸前、どこからか現れた男に激しい銃撃を受け、援軍ヘリの乗務員が全滅。
ただ一人生き残り唖然とするアイザックの前に男が立ち塞がり、不敵な笑みを浮かべると、インカム越しに聞き覚えのある声で 「残念だな、私はジューバじゃない。 ただの民間人さ」 と言い、そこでエンドロール。
エンドロール後は、遠くからヘリを窺うスコープの映像が映され、ジューバだと思われていた男と全く別の人物の無線の会話が流れる。
・・・という感じにすると、ほとんど同じ話でもコントラストが明確になるし、ドラマ性も高まる気がするんだけどどうでせう。
まぁ、ディーンの件なんかは全部無くても全然良いぐらいなんだけどねw
とりあえず、インカムの声の主が必ずしも敵スナイパーと同一でなくても構わない展開なんだから、いっそ 『実は最初から敵方も二人行動だった』 ってオチの方が意外性はあるんだよ、ミスリード演出みたいになって。
別にイラク戦時下で実際にあった話を再現してる訳じゃないし、ワンシチュと会話劇に拘りたいだけの作品みたいだから、詰めるトコはちゃんと詰めつつ、もっと遊べば良いのに・・・と俺は思っちゃう。
え~、現在公開中の作品なのに結構ボロクソ言いましたが(いつもの事ですがw)、決して 「全く観る価値の無い駄作だ」 とは言いません。
それほど映画を観ない人とかなら、地味なりに楽しめる気も・・・しないでもないw
「わりと映画観てるよ~」 って人なんかだと、これは ''出涸らしのお茶を啜る'' 程度の価値でしょうw
特にB級映画好きだったりすると、「こんなん、どっかで観た事あるなぁ・・・」 のオンパレードですw
とりあえず・・・こんなの、大作みたいに宣伝して良い映画ではねぇわなw
あくまで作品としてはB級だもん、どう転んでも。
Amazon絡みって事で間違いなく有料配信はするんだろうから、観る人はそれで観たら ''変に損した感'' は無いと思われます、ハィ。
画的にも、物語的にも、金額的にも、劇場のスクリーンで観るほどの価値は絶対ないとだけ言っておきませう。