たまにはほっこり話でも | weblog -α-

weblog -α-

なんとな~く  思いつきで  好き勝手に  (=゚ρ゚=) ボヘー  っとやってます。


12年前の夏の出来事。

昼過ぎになって、従姉妹のサユリちゃん一家が遊びに来た。
サユリちゃんと旦那さん、そして三人の子供たち。
今ではすっかり大きくなった子供らも、当時はまだガキんちょだった。

子供らは全員がわりと人見知りする大人しいタイプで、いわゆるやんちゃだったりお転婆だったりはしなかった。
大人からすると比較的扱い易いというか、さほど注意深く見ていなくても安心していられるタイプ。
上から、長女、長男、次女という順の兄弟姉妹。
この話の主役になるのは真ん中の長男、マサシだ。
当時のマサシはまだ7、8歳ぐらい。
顔は父親に似て、目がクリクリと大きくお坊ちゃんタイプの可愛らしい子。
サユリちゃんとはそれほど似ていない。

夕方近くになり、俺のタバコの買い置きが無くなった。
残り数本・・・超が付くヘビースモーカーだけに、タバコが無くちゃ何事も始まらない。
おのずとコンビニに行く事になる。
とは言え、朝からゴロゴロしてて外出する予定も無かったから、それなりに支度をしなけりゃ恥ずかしくて外に出られたもんじゃなかった。

とりあえず、シャワーだけ浴びれば寝グセから何から一気に片付くので、着替えとバスタオルを持って俺はバスルームへ向かった。
階段を降りてすぐ隣のリビングでは、姉貴らとサユリちゃん一家が談笑している。
来た事は知ってたがまだ顔は合わせてなかったので、サユリちゃん達に軽く挨拶だけ済ませてシャワーを浴びた。
で、二階の自室に戻った。

外出準備も整い、残ってた最後のタバコで一服し、財布と鍵を持って玄関へ。
階段を降りると、リビングから姉貴の声。
「あんた、どこ行くのー?」
続けてサユリちゃんの声。
「Tくん(※俺の事)、どこ行くのー?」
わざわざ呼び止めるからには魂胆がありそうだと気付いたが、知らぬ素振りでリビングに顔を覗かせた。
「タバコ切れたからコンビニ。」
すると、台本通りのセリフみたいにサユリちゃんが言う。
「あのさ、ここにちょっと暇してる人が一人居るんだけど(笑)」
その暇人は、どうやらマサシの事らしかった。
要するに、退屈してるマサシを一緒に連れてってくれって話だ。
「いいよ~。」 と引き受けて、小さなマサシと短い冒険の旅に出た。

コンビニまでは歩いて5分ほど。
マサシの歩調に合わせたとしても、10分もあれば着く。
問題は、さすがに何を話したもんかサッパリだという事だった。
元々、俺は子供に合わせるのが苦手だし、大人しい子だからひたすら受け身に徹して、俺が話し掛けなきゃずっと黙ってそうだよなと思った。
でも、いざ歩き出したらそうでもなく、マサシの方から色々と話し掛けてよこし、俺が気を回す必要は無かった。
とは言っても、背の小さいマサシの声は、無駄に図体のデカい俺の耳にはあまり聞き取れず、時折聞き取れるだけの一部分だけで何について話してるのか察し、それなりの相槌を打つので精一杯だったが。

いつも歩く街道沿いより一本手前の住宅地の道を選んで進み、マサシの話に相槌を打ちながらゆっくりと歩いてコンビニへ着いた。
正直、たったそれだけでも俺は 「やれやれ・・・」 という心境。
ともあれ、目的地には着いた。

店内に入り、窓際の雑誌コーナーを眺めながら奥の冷蔵庫側通路へ。
そこでマサシが、「色々見て来るね!」 と散策へ出掛けた。
俺は俺で自分の買う物を見て回り、ある程度の商品をカゴに放り込んでからマサシの居るお菓子コーナーへ行く。
マサシはガムやら飴やらの並んだ棚の前に居たので、隣にしゃがみ込んで 「欲しいの決めたかー?」 と声を掛けた。
と、マサシはどうやらキャンディーらしきお菓子を俺に差し出し、「これはおねぇちゃんの。」 と言う。
「いや、おねぇちゃんのは良いから、マサシの欲しいの選びなよ(笑)」 と俺。
マサシは一軒家でも買うみたいに真剣な面持ちで棚の商品としばしのにらめっこを続けていたが、何だか様子がおかしいなと俺は気付いた。
「ん? 欲しいの無さそう?」 と訊いてみると、マサシは少し焦った様な・・・それでいて少し言い辛そうに口を開いた。
「Tくん、あのさぁ・・・」
「うん?」
子供のクセに遠慮してやがるなと思ったが、とりあえずは口を挟まず続けさせた。
「あのねぇ、ボクねぇ・・・」
「うん。」
「あそこのカードが気になるんだよ。」
そう言ったマサシの視線を辿ると、レジカウンターの一角にトレーディングカードの箱が何種類か置かれていた。
「あぁ、あれか~。」 と俺が言うと、マサシは間髪入れずに続ける。
「あのね、僕、なるべく見ない様にしてたんだけどね、どうしても気になっちゃって・・・。」
どうやらマサシなりに必死で言い訳をしているらしかったが、俺は大笑いしそうになったのを堪えるのに必死だったw
口元を緩ませつつ、「良いよ。 カードでも何でも、好きなもん持って来な(笑)」 と俺が言うと、マサシはF1のスタートダッシュみたいに駆け出し、お目当てのカードの所に行った。

「へ~。 こんなん、いくらぐらいすんの?」
カードを持って戻って来たマサシに訊くと、「143円。 ほら、ここに書いてある。」 と・・・確かにパッケージの上の部分にそう書いてあった。
税込みで150円・・・たかがプリントされただけのカードでえらいぼったくるもんだと半ば呆れつつ、カードを含め、マサシが持ってた商品を全部買い物カゴに入れさせた。
「よし。 んじゃ、あとは欲しいの無いか?」
念の為にそう訊くと、再びマサシはガムの棚の前でにらめっこw
(まだあるんだ・・・w)

「まだあるなら早く持って来な。」
そう言うと、マサシはフルーツ味のタブレットを持って来て言った。
「これもおねぇちゃんの分ね?」
「え? またおねぇちゃんの? まぁいいけど。」
俺的には、「あぁ、ホントは自分が欲しい物をおねぇちゃんのって言ってるだけだな」 と判断したんで、さすがにこれでもう良いだろと思ってレジへ向かった。

レジ打ちの若い女の子が手際良くバーコードを読み取って行く最中、なにやらマサシがブツクサと言ってるのに気付いた。
小声な上にやっぱり身長差のせいでよく聞き取れなかったが、「おねぇちゃん」 という単語が何度か繰り返されたのだけは解った。
「今さっきのタブレットはあくまでおねぇちゃんの分で、自分が欲しい訳じゃないよ?」 っていう言い訳でもしてるんだろうと思ったが、実はそうじゃなかった。
「ねぇ、Tくん。 あのさぁ・・・」
「ん?」
もうカゴの商品の半分ほどは読み取りを済ませていた。
「あのね? さっきのでおねぇちゃんのが二つになっちゃったから、ボクの分ももう一つ持って来て良い?」
(なるほど、最後のタブレットはその為の伏線か・・・w)
「いいよ。 早く持っといで(笑)」
また笑うのを堪える羽目になったw
マサシの声が聞こえてたんであろう、レジ打ちの子も若干口元を緩ませてた。

店を出て、外の灰皿の前で買ったばかりのタバコを一本吸った。
それから、行きと同様のゆっくり気味な帰路。
コンビニから30mほどは、裏道が無いので車通りの多い街道を歩く。
・・・と、もうすぐ裏道って所に来て、街道を徐行してた白いスポーツタイプの車の方を見て、マサシが声を上げた。
「あ。 今、あの車の人、道にタバコ捨てた。」
見ると、白い車の窓が少し開いていて、そのほぼ真下に火の着いたままのタバコが落ちていた。
どうやら、助手席側に座っていたアホがポイ捨てをしたのは間違いない様だった。
拾い上げてそのアホの背中にでも突っ込んでやりたいところだが、さすがにそうもいかない。
とは言え、子供の指摘をスルーするのも大人として宜しくないなと思い、「ああいうアホにはね、その内に罰が当たるからな。」 と答えた。
「きっと神様がどっかから見てて、罰当てるんだよね。」 とマサシが言った。
無神論者の俺にはまた答え辛いコメントw
「う~ん・・・。」 と肯定とも否定とも言えるひと唸りをした後、「まぁ、神様が居なくても、ああいう奴には罰が当たるよ、きっと。」 と答え直した。
「そうだよね! 罰が当たるよね!」 とマサシ。

それから家に着くまでの数分間、マサシは件のアホにどんな罰が当たるかって話を色々と考えて並べ挙げていた。
そして、家の前まで着いたところで、マサシによる天罰の最終的な予想が発表された。

「あのね~、背中をダバッ!と押してね~、石につまづいてね~、川に落ちるんだよ!」

そいつぁ怖いw
いつも携帯灰皿を持ち歩いてて良かったよ、俺はw



という訳で、上記の話は12年前に書かれた俺の日記にあったもの。
リライトしたから原文とは少しずつ違うけど、話自体はほぼそのまま。
これはなかなか面白いエピソードだな~と思ったんで、昔話だけど書いてみました。
主人公のマサシも、こないだの正月に来た時はすっかり青年になってまして、「明けましておめでとうございます。お久しぶりです。」 なーんて、いっちょまえな挨拶してよこすぐらいになってましたよ。
きっと当時の事は覚えてないと思うけど、いずれ機会があったら、この話を本人にして、耳塞ぎたい思いにさせてやりたいと考えてますw