『HOUSE ハウス』『新幹線大爆破』『不良少年』『サイコ』他、2023.6~7月 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

最近の気になった事件、事故その他の出来事。

 

夏休みに入った7月21日、福岡県で川遊びをしていた小学校6年生の女子児童3人が川の深みにはまって水死、8月2日には神奈川県でも小学校5年の児童が川遊びで対岸へ渡ろうとして水死という事故が起きた。夏休み前に学校で川遊びに関して注意喚起はしているはずだが・・・

 

札幌ススキノのホテルで頭部を切断された遺体が発見され、容疑者の女(29歳)と両親が逮捕された。被害者の男性(62歳)はススキノ界隈の風俗店ではその名を知られた人物だったそうだ。切断された頭部は容疑者の自宅浴室から発見された。

 

中古車販売大手ビッグモーターが損害保険金水増し請求容疑。

修理に出された車に更にドライバーでひっかき傷を付けたり、ゴルフボールを靴下に入れて振り回し車体を叩くという悪質な行為で修理代金を水増し請求するという信じ難い事例が次々発覚。

 

メジャーリーグの藤浪晋太郎がアスレチックスからオリオールズに7月19日電撃移籍。移籍後5試合ほどはリリーフで好投していたが、今日(日本時間8月3日)の試合では4者連続四死球で3失点(自責点はゼロ)対戦相手の菊池雄星は9勝目の白星。

 

夏の全国高校野球地方大会で審判員の誤審疑惑が問題化。特に問題にされているのは神奈川県大会決勝、慶応対横浜戦の9回の2塁審判のジャッジ。動画を見ても真偽不明。ビデオ判定の導入は現段階では財政的に難しいようだ。

 

8月11日に日本公開予定のアメリカ映画『バービー』の公式SNSで配給会社のワーナーブラザースが配慮に欠ける不適切対応で日本人ファンから非難轟々。日本語版吹替を担当した高畑充希がストーリーズにコメント。

 

 X   X   X   X   X   X

 

7月はほとんど映画を観ておらず、6月に観た映画は靄に霞んだ記憶しか残っていないため今回も詳しい感想は書けませんでした。記事中の記憶違い、事実誤認はご容赦下さい。

作品紹介(ストーリー等)はムービー・ウォーカーその他を引用、参照。★5が満点 ☆は0、5点

 

 

『HOUSE ハウス』 大林宣彦監督 1977年

 

夏休みを利用しておばちゃま(南田洋子)の羽臼屋敷を訪れる ”オシャレ”(池上季実子)と6人の友人。だがおばちゃまはすでにこの世の人ではなく、戦死した恋人への思いだけで存在し続ける生霊だったのだ。そして若返るためには少女を喰べなければならない。ピアノや時計が少女たちを次々に襲い、羽臼屋敷は人喰い屋敷と化した・・・

 

今までボーッと観ていたのか、おばちゃまの亡き恋人への思いや戦争への大林監督の思いにはついぞ考えが思い及ばなかったことに今回の鑑賞で初めて気づかされた。★★★★★

 

 

 

『新幹線大爆破』 佐藤純弥監督 1975年

 

新幹線の乗客を人質にとった爆弾脅迫事件が発生した。爆弾は走行中の新幹線に仕掛けられており、列車の速度が80キロ以下となると爆発するという。巧みなポイント切り替えによって新幹線は速度を維持したまま南下していく。だがその終点は間近に迫りつつあった・・・

 

犯行現場に偶然大学の空手部員たちがランニングで通りかかったり、爆破装置の解除方法を書いた書類がおかれている喫茶店で、刑事たちが到着する直前になぞの爆破火災が発生したり、都合の良すぎる偶然は大衆娯楽映画の王道? 爆破犯たちの犯行動機も時代を感じさせ、健さんに配慮した設定でモヤモヤが残る作品だが、追われる健さんのラストの空港シーンはよかった。

★★★★

 

 

 

『三匹の牝蜂』 鳥居元宏監督 脚本・中島貞夫・掛札昌裕

 1970年

 

東映の女番長(スケバン)映画第一作で大原麗子の初主演映画。

1970年の大阪万博に沸く大阪を舞台に大原麗子、夏純子、

市地洋子のズベ公三人組を主役にした青春群像劇。

三島ゆり子、左卜全、片山由美子が共演。音楽、八木正生。

 

千葉県の茂原農協のたすきを掛けた万博観光のグループの一団に左卜全扮する山林成金の老人がおり、大原麗子にだまされてスナックに連れていかれるが、金をむしり取られることもなく老いらくの楽しみを満足させて意気揚々と引き揚げる。

脚本の中島貞夫は確か千葉の東金出身。

★★★★

 

 

『警視庁物語 19号埋立地』 島津昇一監督 1962年

 

工事現場から掘り出された絞殺死体の捜査に当たった七人の刑事が、唯一の手掛かりである新興宗教の数珠の出所を追って聞き込みを開始、思わぬ不幸な女に突き当る。人間味にあふれた第19話。

 

織本順吉、岩崎加根子の夫婦が哀しい。酒乱の男のあわれな末路。山本麟一の刑事! 島津監督の演出の確かさに目を瞠った。

★★★★☆

 

 

『警視庁物語 上野発五時三十五分』村山新治監督 1957年

 

オートレース場で発生した私製拳銃による謎の殺人事件を追って警視庁捜査課の活動をドキュメンタリータッチで描いたシリーズ第5話。

 

殺人犯の多々良純が走る走る走る、刑事の波島進が追いかけて走る走る走る・・・・上野発新潟行き 5時35分。★★★★

 

 

『警視庁物語 血液型の秘密』 飯塚増一監督 1960年

 

郊外で嬰児殺害事件が発生し出動したおなじみの刑事グループの前に暴露される複雑で醜い人間群像。現代の世相を鋭く捉えて絶賛された名物シリーズ第13話。

 

遺留品に付着していた血液型から犯人が特定されるという内容で真犯人は今井俊二(健二)だった。

『警視庁物語』シリーズを観るのは今回が初めてで、事件を追う刑事たちの地道な捜査活動と犯罪を犯した人間の追い詰められた状況や心理の機微が過不足なく描かれ、優れた刑事ドラマに仕上げられていた。脚本はシリーズ全作 長谷川公之。★★★★☆

 

 

 

『不良少年』 羽仁進監督 1961年

 

この作品の主人公でもある浅井少年の手記『とべない翼』(原作・地主愛子)にもとづき、非行少年のシャバの生活と少年院での姿を羽仁進が脚本監督した記録映画的手法による劇映画。

 

主人公浅井少年を演じた山田幸男の演技が生々しく、隠し撮りしたドキュメンタリー映画のような印象さえおぼえる。社会に反抗して粋がっている浅井少年はときに滑稽で人間味にあふれ、前向きなラストが暗示されて映画は終わる。★★★★★

 

 

 

『女番長(スケバン)タイマン勝負』 関本郁夫監督 脚本・

           鴨井達比古・志村正浩 1974年

 

女番長(スケバン)シリーズ第6作。姉を死に追いやった大島興業のボスへの報復で傷を負わせ、少年院送りになった少女はいつしか女番長に成長した。彼女はふたたびボスに報復する気持ちを胸に秘め、持ち前の度胸と根性で弱肉強食の世界を生き抜いていく。

 

日活で作られた『女番長・野良猫ロック』シリーズとは一味違う面白さは、池玲子、叶優子、衣麻遼子ら女優陣のたまもの。

裸で逃げ回る大島興業のボスは安部徹。★★★★

 

 

 

『すけばん刑事 ダーティ・マリー』長谷部安春監督 1974

 

おんな、女、女だてらの刑事!殺人者を追って秘められた写真に女豹の血が騒ぐ刑事 ―― 一般では男の職業とされている。

だがその常識を破り、この映画にはブルージーンにハジキとワッパという女デカが登場する。カメラ狂のサディスティックな犯人をロマンポルノで磨かれた肢体を躍動させて追いつめる梢ひとみの女刑事。

 

アメリカ映画で『ダーティ・メリー・クレイジー・ラリー』という作品が同じく1974年に公開されているが、タイトルはおそらくこのアメリカ作品から拝借したのだろう。『ダーティ・メリー~』のスーザン・ジョージも魅力的だったが、梢ひとみの「ダーティ・マリー」も負けず劣らず魅力があった。カメラ狂の殺人犯に扮したのは日活の名バイプレイヤー浜口竜哉。(後で調べると『ダーティ・メリー・クレイジー・ラリー』はアメリカ公開、日本公開共に『すけばん刑事 ダーティ・マリー』より後だったので、タイトルは『ダーティ・ハリー』からの借用のようだ)。★★★★☆

 

 

 

『野菊の墓』 澤井信一郎監督 原作・伊藤左千夫 脚本・宮内婦貴子 音楽・菊池俊輔 撮影・森田富士郎 1981年

 

遍路の旅に出た斎藤政夫は、旅の途中で自分の過去を振り返っていた。自分が十五歳のとき、病弱な母きくを看病するため従姉で十七歳の民子が家に住み込むことに。二人の仲は親密になり、その噂はやがて家の外にまで聞こえるようになった。母からあまり会わないようにと言われ、政夫と民子はお互いに恋心を抱いてしまう。やがて二人を中傷する声が聞こえてきたため、きくは政夫を全寮制の中学に入れ、その間に民子の縁談を進めるのだった。

そのことを知った政夫は急いで戻るが、すでに民子は花嫁に行った後だった・・・

 

原作は過去に『野菊の如き君なりき』(木下恵介監督)や山口百恵主演でも映画化されているが、トップアイドル松田聖子の主演ながらアイドル映画とは一線を画した丁寧な画面作りで涙、涙。マキノ雅弘監督らの下で長年助監督をつとめた澤井信一郎監督の面目躍如。★★★★★

 

 

 

『サイコ』 アルフレッド・ヒッチコック監督 1960年

 

不動産会社に勤める女性マリオンは主人公サムとの結婚を望んでいたが、サムは元妻への慰謝料の支払いに追われ再婚を渋っていた。そんな中、会社の金4万ドルを銀行へ運ぶことになった彼女は出来心からその金を持ち逃げしてしまう。サムのもとを目指して車を走らせるマリオンだったが、大雨で視界が悪くなり偶然見つけた寂れた宿「ベイツ・モーテル」で一晩を過ごすことに。

そこで彼女は宿を一人で切り盛りする青年ノーマンと出会った。

 

ヒッチコックの代表作の一つとして有名な作品だが、細かいストーリーはほとんど忘れていた。不倫女性の恋人への執着が生んだ会社の金持ち逃げと母親へのゆがんだ愛情が生み出した青年の人格障害。精神分析や哲学的なことは全く解らないが、家族ぐるみで計画されたススキノの頭部切断自宅持ち帰り、切断された頭部の動画撮影、父親は札幌の有名な精神科医で娘に対するゆがんだ愛情が生んだ事件の不可解さを知るにつけ、『サイコ』の世界があながち突飛な絵空事のものとは思われなくなってくる。★★★★★