『不連続殺人事件』(曾根中生監督 1977年) | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

『不連続殺人事件』(監督・曾根中生 原作・坂口安吾 脚本・田中陽造・大和屋竺・曾根中生・荒井晴彦 撮影・森勝 音楽・コスモスファクトリー 1977年 タツミキカク+ATG)

 

出演・瑳川哲朗・内田裕也、夏純子、田村高廣、桜井浩子、小坂一也、神田隆、絵沢萠子、内田良平、楠侑子、石浜朗、木村元、伊佐山ひろ子、根岸とし江、金田龍之介、水原明泉、桑山正一、武藤章生、松橋登、内海賢二、粟津號、岡本麗、江角英明、宮下順子、泉じゅん、梓ようこ、浜村純、殿山泰司、初井言枝、福原ひとみ、小川恵、谷本一 他。

 

1947年(昭和22年)夏、N県の大富豪・歌川多門(金田龍之介)の別荘で殺人事件が起きた。殺されたのは女癖が悪く毛嫌いされていた流行作家の望月王仁(内田良平)だった。その夜、屋敷にいたのは多門の長男一馬(瑳川哲朗)妻のあやか(夏純子)ほか、一馬の招待状によって招かれた小説家、詩人、画家、劇作家その妻、愛人、一馬の腹違いの妹・珠緒(水原明泉)姪の千草(伊佐山ひろ子)女中など20数名。捜査本部が設けられ捜査が始まったが、その後珠緒、千草、詩人の内海(内海賢二)が次々に殺されていった。1週間後の8月26日、歌川家の当主歌川多門と多門が女中に生ませた娘・加代子(福原ひとみ)が毒殺された。10日後の9月3日、女流作家・宇津木秋子(楠侑子)が岩場から墜死、長男・一馬も青酸カリによって殺された。一馬の親友・矢代(田村高廣)の求めによって別荘を訪れていた私立探偵巨勢博士(小坂一也)は犯人を見抜いたが、証拠集めのため別荘を留守にしている間に一馬の死という失策をおかしたことを悔いた。

 

原作は坂口安吾が1947年に発表した初の推理小説で、江戸川乱歩や松本清張らが激賞、雑誌連載中に作者の坂口安吾から読者へ真犯人を当てた読者に対して懸賞金が懸けられた。

人物関係が複雑で映画を一度見ただけでは理解が困難。タイトルバックの映像から一馬と腹違いの妹加代子の関係が作品の重要なモチーフになるのかと予想されたがそうではなかった。結局は殺人とその謎解きがテーマになって、真犯人である人物とその動機への深みのある洞察は感じられなかった。犯人にとって、一つ一つの殺人に大きな意味づけはない。それらを一つ一つ順を追い、映像で説明していく必要性はあったのか。田中陽造、大和屋竺、曾根中生、荒井晴彦という精鋭が揃っても、この原作を映画作品として十分に消化することの困難さを感じた。4度目か5度目の鑑賞だったが、真犯人が誰なのか途中まですっかり忘れていた。ATG作品としては超豪華とも言えそうな俳優陣を楽しむべき作品だろうか。夏純子がヒロインで桜井浩子が出演なんて嬉しい限り。珠緒役の水原明泉は水原ゆう紀と思い込んでいた。原作と映画は別物と考えて、歌川多門を主軸にした男女関係のドロドロした愛憎を描けば別の面白さを持った『不連続~』が出来あがったようにも思えた。

☆☆☆☆(☆5が満点 ★は0.5点)