『もう頬づえはつかない』『八月はエロスの匂い』『赫い髪の女』『男の顔は履歴書』他、2022・11 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

MLB(メジャーリーグ)のリーグ優勝シリーズやワールドシリーズを見ていると観客の熱狂的な応援は凄まじい。4万5千を超える観客がノーマスクで熱狂している。一方NPB(日本のプロ野球)は全員マスク姿に声出し禁止で太鼓と拍手中心のお決まりのスタイル。日本シリーズのオリックスVSヤクルトの試合は白熱した好ゲームで盛り上がったが、収容人数3万人足らずの球場で開催される日本シリーズに一抹の寂しさを感じた。(神宮球場は学生野球のために作られた球場のため収容規模が小さいのは致し方ない。神宮球場自体は好きな球場)コロナ関係で離脱する選手や中止になった試合もあったが、とにもかくにも無事シーズンが終了したことを喜びたい。選手、関係者の皆様お疲れ様でした。

 

閑話休題

8月初めから11月初めまでに観賞した映画は下記の通りです。星取りは自分の好みによる独断的判断で皆様の評価と異なる場合はご容赦ください。☆5が満点 ★は0.5点

 

『もう頬づえはつかない』(監督・東陽一 原作・見延典子 脚本・東陽一・小林竜雄 撮影・川上皓市 音楽・田中未知   1979年)

出演・桃井かおり、奥田瑛二、森本レオ、伊丹十三、加茂さくら、織本順吉、村上弘明 他。

 

原作は早稲田大学文学部文芸科に在籍していた見延典子の卒業制作作品で「早稲田文学」に掲載され、その後講談社から刊行されベストセラーに。ドキュメンタリーから出発した東監督らしく、リアリティのある映像や会話が魅力の作品。桃井かおりの演技の密度の濃さ。☆☆☆☆☆

 

 

 

『エロスは甘き香り』(監督・藤田敏八 脚本・大和屋竺・藤田敏八 撮影・萩原憲治 音楽・樋口康雄 1973年)

出演・桃井かおり、高橋長英、伊佐山ひろ子、谷本一、山谷初男、川村真樹、五條博、橘田良江 他。

 

桃井かおりのロマンポルノ初出演作。藤田、大和屋コンビのつかみどころのない感性に、桃井かおりや伊佐山ひろ子のどこか投げやりな生き方がマッチしている。桃井かおりの元恋人に五條博、川村真樹の飲み屋の客で映画評論家の斎藤正治。☆☆☆☆

 

 

 

『八月はエロスの匂い』(監督・藤田敏八 脚本・大和屋竺 藤田敏八 撮影・安藤庄平 音楽・真田勉 1972年)

出演・川村真樹 むささび童子、片桐夕子、粟津號、永井鷹男、浜口竜哉、しまさより 他。

 

デパートでレジから現金を盗んだ若者(むささび童子)が忘れられない女(川村真樹)。高校時代の教師(永井鷹男)と今も続く関係。ある日、女はウエイターとして働く若者と再会する。

ヒッピー風の音楽集団の中で孤立している若者。夜の海岸で燃え上がる一瞬の情愛。女と若者と教師の不思議な成り行き。☆☆☆☆★

 

 

『白い指の戯れ』(監督・村川透 脚本・神代辰巳・村川透 

撮影・姫田真左久 音楽・小沢典仁 1972年)

出演・伊佐山ひろ子、荒木一郎、谷本一、粟津號、石堂洋子、

五條博 他。

 

レッカー車で運ばれていく車を見て涙を流す若い女・ゆき(伊佐山ひろ子)。工場を辞めたゆきは拓(荒木一郎)という男のスリグループの仲間に入る。バスの中でスリをした拓が乗客に詰め寄られる。咄嗟に「私がやりました」と名乗り出るゆき。

ただ無言で去っていく拓。ロマンポルノ初期の傑作。☆☆☆☆☆

 

 

『牝猫たちの夜』(監督・田中登 脚本・中野顕彰 撮影・萩原憲治 音楽・坂田晃一 1972年)

出演・桂知子、原英美、牧恵子、吉澤健、影山英俊、丹古母鬼馬二 山口明美 他。

 

新宿に生きるソープ嬢と奇妙な男たちの哀歓。新宿の朝、閉じられていたシャッターが上がっていくシーンにグッときた。のちにロマンポルノリブート作品として池袋を舞台にした『牝猫たち』(白石和彌監督)が制作され、そちらの作品にも吉澤健が出演している。☆☆☆☆★

 

 

 

『実録阿部定』(監督・田中登 脚本・いどあきお 撮影・森勝

音楽・坂田晃一 1975年)

出演・宮下順子、江角英明、坂本長利、花柳幻舟、五條博、橘田良江、庄司三郎 他。

 

昭和11年5月18日午前2時、料理屋の女中定は、愛人関係にあった吉田屋の主人石田吉蔵の局部を切り取り胸の奥に大切にしまった。 定 吉二人キリ。阿部定映画の決定版。☆☆☆☆☆

 

 

 

『赫い髪の女』(監督・神代辰巳 原作・中上健次 脚本・荒井晴彦 撮影・前田米造 音楽・憂歌団 1979年)

出演・宮下順子・石橋蓮司、亜湖、阿藤海(快)、絵沢萠子、

三谷昇、山谷初男、山口美也子、石堂洋子、高橋明 他。

 

石橋蓮司の代表作は?と聞かれたら真っ先に挙げたくなるのがこの作品。宮下順子三大代表作の一本。荒井晴彦の脚本が素晴らしすぎる。☆☆☆☆☆

 

 

 

『俺たちの血が許さない』(監督・鈴木清順 原作・松浦健  脚本・竹森竜馬・細見捷弘・伊藤三千子 撮影・峰重義 音楽・鈴木忠典・池沢博 1964年)

出演・小林旭 高橋英樹 松原智恵子 長谷百合 細川ちか子

井上昭文 松尾嘉代 野呂圭介 高品格 小沢栄太郎 他。

 

ヤクザの父が殺され、母には内緒で悪の世界に足を踏み入れた兄(小林旭)と正義感あふれる型破りのサラリーマンの弟(高橋英樹)。やがて、兄が暗黒街で生きていると知った弟は・・・。

小林旭の恋人で暗黒街のボスの情婦役に松原智恵子が扮する稀有な作品。ラストの長い長いレール移動は見もの。☆☆☆☆

 

 

『男の顔は履歴書』(監督・加藤泰 脚本・星川清司        撮影・高羽哲夫 音楽・林光 1966年)

出演・安藤昇 中原早苗 真理明美 中谷一郎 伊丹十三 内田良平 菅原文太 嵐寛寿郎 香山美子 三島雅夫 他。

 

終戦直後、日本人マーケットに縄張りを拡張しようとする三国人グループ。沖縄戦線で敗北後、人間不信に陥った元軍医の雨宮(安藤昇)は、助けを求める地元の日本人に対しても冷たく振る舞った。そんな無気力で機械的に患者に接する姿に落胆しつつも思いを寄せる看護師のマキ(中原早苗)。混沌とした敗戦直後のニッポンを凝視する加藤泰の力作。☆☆☆☆☆

 

 

『妖刀物語 花の吉原百人斬り』(監督・内田吐夢 脚本・依田義賢 撮影・吉田貞次 音楽・中本敏生 1960年)

 

出演・片岡千恵蔵 水谷八重子 山東昭子 水野浩 松浦築枝 青山京子 木村功 利根はる恵 沢村貞子 三島雅夫 他。

 

捨て子で、生まれながらに顔に大きな痣を持った佐野次郎左衛門(片岡千恵蔵)は辛苦の末に機織り事業で大成功し、村人たちや織手職人たちからも慕われていた。あとは嫁を貰うばかりだが、顔の痣がもとで縁談はことごとく断られる有り様。どうせ今度もだめだろうとは思いつつ、縁談話で従者の治六を連れて江戸へと旅立つ。付き合いがある江戸の仲買人仲間の誘いで吉原へ足を踏み入れ、遊女玉鶴(水谷八重子)と出会い束の間の歓びの後運命は暗転。三世河竹新七(河竹黙阿弥の高弟)の歌舞伎脚本『籠釣瓶花街酔醒』が原作。内田吐夢×片岡千恵蔵コンビニよる狂乱、愛憐の果ての残酷絵巻。☆☆☆☆☆

 

 

『WOOD JOB! 神去なあなあ日常』(監督・脚本・矢口史靖  原作・三浦しをん 撮影・芦澤明子 音楽・野村卓史  

2014年)

出演・染谷将太 長澤まさみ 伊藤英明 西田尚美 光石研  優香 柄本明 近藤芳正 菅原大吉 広岡由里子 他。

 

大学受験に失敗した平野勇気(染谷将太)は、たまたま見かけた林業従事者募集のパンフレットのモデル(長澤まさみ)に魅かれて林業学校のセミナーに参加するため三重県の僻地神去(かみさり)村にやって来る。三浦しをんの原作との違いは置いておき、映画は矢口史靖らしいエンタメ満載のハチャメチャありで楽しめる。☆☆☆☆

 

 

『ハッピーフライト』(監督・脚本・矢口史靖 撮影・喜久村徳章 音楽・ミッキー吉野 2008年)

出演・綾瀬はるか 寺島しのぶ 吹石一恵 田辺誠一 時任三郎 田畑智子 岸部一徳 小日向文世 田中哲司 江口のりこ 平岩紙 笹野高史 中村映里子 他。

 

航空機業界の興味津々の裏話的エピソードの数々。全日空(ANA)が全面協力。サスペンス満点の航空機パニック映画とは一味違うユーモアと面白さ。☆☆☆☆

 

 

『深い河』(監督・脚本・熊井啓 原作・遠藤周作 撮影・栃沢正夫 音楽・松村偵三 美術・木村威夫 1995年)

出演・秋吉久美子 奥田瑛二 井川比佐志 沼田曜一 香川京子

三船敏郎 杉本哲太 沖田浩之 白井真木 他。

 

ガンジス河のほとり、インドの聖地ベナレスへ忘れものを探しにやって来た旅行者たち。ガンジス河の水で魂は救済されるのか。生きていくことの虚無としばし向き合う時間。☆☆☆☆☆

 

 

 

『宮本から君へ』(監督・真利子哲也 原作・新井英樹 脚本・港岳彦・真利子哲也 撮影・四宮秀俊 音楽・池永正二 2019年)

出演・池松壮亮、蒼井優、ピエール瀧、井浦新、柄本時生 古舘寛治 松山ケンイチ 佐藤二朗 他。

 

俳優たちが精一杯リアルに演じて、なにか凄い映画のようにも見えるが、何か虚ろでうわすべりのように感じられて。

宮本(池松壮亮)も靖子(蒼井優)も痛々しい。その痛々しさが普遍性につながらないもどかしさ。☆☆☆☆

 

 

 

『空白』(監督・脚本・吉田恵輔 撮影・志田貴之 音楽・世武裕子 2021年)

出演・古田新太 松坂桃李 寺島しのぶ 田畑智子 片岡礼子 藤原季節 伊藤蒼 趣里 野村真純 他。

 

吉田恵輔の作品がようやくキネマ旬報のベストテン入り。

店長を追い詰めたことで追い詰められたのは結局自分自身?

父と二人暮らしで父に逆らえない女子中学生の孤独、ボランティアに躍起になっている中年独身女(寺島しのぶ)の孤独。

吉田恵輔らしい人間洞察の深さ。☆☆☆☆★

 

 

『リオグランデの砦』(監督・ジョン・フォード 原作・ジェームズ・ワーナー・ベラ 脚本・ジェームズ・キャビン・マクギネス 撮影・バート・クレノン・アーチー・J・スタウト 音楽・ヴィクター・ヤング 1950年)

 

出演・ジョン・ウェイン モーリン・オハラ ベン・ジョンソン

ハリー・ケリー・ジュニア ヴィクター・マクラグレン 他。

 

ジョン・フォード「騎兵隊三部作」の三作目。ベン・ジョンソンとハリー・ケリー・ジュニアが2頭の馬に跨って疾走するローマ式立ち乗りシーンを3週間で身につけさせ、本番スタントなしで演じさせたという話と、製作費を『アパッチ砦』の半分に削り、俳優のギャラを削り更に経費を削減しようとした社長のロケ現場訪問の日を撮影中止にしたという逸話は、フォードの無茶ぶりと反骨精神を伝える好エピソード。☆☆☆☆

 

 

『サブウェイ・パニック』(監督・ジョセフ・サージェント 

原作・ジョン・ゴーディ 脚本・ピーター・ストーン     撮影・オーウェン・ロイズマン 1974年)

出演・ウォルター・マッソー ロバート・ショウ マーティン・バルサム ヘクター・エリゾント 他。

 

ニューヨークの地下鉄が四人の凶悪犯に乗っ取られた。1時間以内に100万ドルを用意せよという犯人側の要求。1分でも遅れれば乗客は一人ずつ射殺すると警告。ニューヨーク市警と地下鉄ジャッカーたちの息を飲む攻防と犯人側と市警で交わされるユーモアを含んだ会話。ラストの含みを持たせたウォルター・マッソーのセリフが憎い。☆☆☆☆☆

 

 

『突破口!』(監督・ドン・シーゲル 原作・ジョン・リーズ

脚本・ハワード・ロッドマン ディーン・リーズナー 撮影・マイケル・C・バトラー 音楽・ラロ・シフリン 1973年)

出演・ウォルター・マッソー ジョン・ヴァーノン アンディ・ロビンソン シェリー・ノース フェリシア・ファー ジョー・ドン・ベイカー 他。

 

ニューメキシコの片田舎の銀行に強盗に入り、無事成功したかに見えたが、思わぬ陥し穴が。主人公(ウォルター・マッソー)が元曲芸飛行のパイロットという伏線がラストの大どんでん返しに。☆☆☆☆