『総長の首』(中島貞夫監督 1979年)                菅原文太×夏純子 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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『総長の首』(監督・中島貞夫 脚本・神波史男 中島貞夫 撮影・増田敏雄 音楽・森田公一 1979年)

 

出演・菅原文太、夏純子、鶴田浩二、梅宮辰夫、安藤昇、池玲子、松田暎子、森下愛子、小池朝雄、清水健太郎、ジョニー大倉、三浦洋一、成田三樹夫、マキノ小夜子、樹木希林、舟木一夫、西村晃、岸田森、織本順吉、品川隆二、田中邦衛、片桐竜次、丹波哲郎、橘真紀、富永佳代子、志賀勝、汐路章、丸平峰子、レッツゴーじゅん、市川好郎 他。

 

 昭和10年代の浅草では全国的な縄張りを持つ関東侠友会と地元浅草を地盤にする花森組が二大勢力としてしのぎを削っていたが、花森組の賭場に侠友会系のチンピラが再三出入りして荒らし始めた。花森組の盃を受けた地元の愚連隊組織・血桜団の団長・八代一明(小池朝雄)は業を煮やして、団員の新堂卓(清水健太郎)、金井鉄男(ジョニー大倉)、長谷部稔(三浦洋一)に命じ、賭場荒らしのチンピラ二人を『丹下左膳』上映中の映画館で射殺させた。

 

一方、直属の組員が殺された関東侠友会の代貸・小池(梅宮辰夫)は、銭湯に入っていた八代に殺し屋(岸田森)を送り込んで刺殺する。その頃、中国大陸に渡っていた八代の弟・順二(菅原文太)が上海から帰って来た。近代婦人社で浅草を取材していた婦人記者・白崎銀子(夏純子)は死んだ八代を取材していたが、八代の家を訪ねてきた順二を見てハッとする。

 

鳴海清が田岡一雄を襲撃した『ベラミ』事件を下敷きにして、舞台を昭和十年代の浅草に設定、菅原文太と清水健太郎が演じた役は鳴海清をモデルにして書かれているようだ。数々作られてきた東映実録路線の映画群の中でも任侠映画と実録映画が混在したようなこの作品は取り分け出色。鶴田浩二や田中邦衛は着流し姿、梅宮辰夫や安藤昇は背広姿で登場する。映画の構造も重層的で、関東侠友会と花森組の抗争に花森組の下部的な愚連隊組織・血桜団が入り込み、映画は血桜団の団員清水健太郎、ジョニー大倉、三浦洋一らを中心に進んで行く。そこへ団長の弟の中国帰りの菅原文太が登場し団員達から血桜団二代目を襲名して欲しいと懇願される。

 

婦人記者の夏純子には死んだ姉がいて、文太とは恋人同士だったという。更に、新堂(清水健太郎)の聾啞の情婦・朝子(マキノ小夜子)、金井(ジョニー大倉)が片想いしているレビューダンサー・ナナ子(森下愛子)、長谷部(三浦洋一)と両想いの病気の女郎・浮世(松田暎子)、売れない芸人の海野蛸八(小倉一郎)が絡んで一筋縄ではいかない複雑な構成だ。作品としては色々盛り込み過ぎて焦点が一つに絞れなかった印象も受けるが、菅原文太に夏純子の共演、池玲子、松田暎子、森下愛子の魅力的な女優陣、舟木一夫や久々に台詞があって声が聞ける市川好郎、ワンシーン登場の丹波哲郎など見どころは盛りだくさんの任侠実録映画。☆☆☆☆(☆5が満点 ★は0.5点)