『いつかギラギラする日』(深作欣二監督 1992年) | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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『いつかギラギラする日』(監督・深作欣二 脚本・丸山昇一 撮影・浜田毅 音楽・菱田吉美 1992年)

 

出演・萩原健一、荻野目慶子、木村一八、多岐川裕美、

千葉真一、石橋蓮司、原田芳雄、八名信夫、樹木希林、

安岡力也、真木洋子 他。

 

 銀行強盗を繰り返していた神崎(萩原健一)は一年ぶりに仲間の柴(千葉真一)から連絡を受け、同じ強盗仲間の井村(石橋蓮司)を伴い柴の住む札幌に向かった。柴は30も年の離れたイカレタ若い娘・麻衣(荻野目慶子)と同棲中だった。柴が行きつけのディスコクラブで知り合った角町(木村一八)からおいしい儲け話があると聞き三人は角町から話を聞き出した。角町の話によれば洞爺湖のあるリゾートホテルでは夏の観光客で土日の売り上げが2億円にのぼり、その売り上げは翌日車で札幌まで輸送されるという。四人は分け前の5千万にそれぞれの夢をかけ周到に準備をして実行に移す。計画は見事に成功したかに見えたが・・・

 

深作欣二が得意とするギャング・アクション分野の作品で、脚本が丸山昇一という組み合わせは期待をいだかせる。ギャング一味の金に対する執着が何を根拠にしているかがポイントになりそうだが、これはクリア。荻野目慶子のぶっとんだキャラクターも問題だが、「誰かに自分を見てもらいたい」という孤独感から生まれたという所が数回の挿入シーンで巧みに表現されている。

角町のロック仲間への情熱も伝わる。神崎と10年来連れ添っているという女・美里役の多岐川裕美が絶品。大沼湖畔の別荘の道でチンピラの二人組のライダーに絡まれ、それを軽くあしらうシーンは映画史に残る。室蘭の金融業のやくざ・吉田(八名信夫)とヤク中の殺し屋・野地(原田芳雄)もいい味を醸し出す。終盤のカーチェイスのアクション、スタントシーンは海外のトップ級の作品と比べても遜色ない。しかしながら結果は、製作費3億円の予定で始まり、深作欣二の粘りで4億8千万円になり、最終的に11億円を計上。配給収入は4億3千万という予想外の不振で深作監督もショックだったようだ。作品自体は良く出来ているが、『ダーティーハリー』や『ダイ・ハード』のように単純に

カッコいいヒーロー映画ではなかった。荻野目慶子のキャラが

ドン引きされたのか、尖り過ぎて大衆受けしなかったのか、丸山昇一の脚本が時代の先を行き過ぎていたのか。

東映配給で2本立て、併映作にお色気作品で宣伝を上手くやれば大ヒットした可能性も。確かにショーケンはカッコいいヒーローではなく、鼻に絆創膏のジェイソンだったが・・・

井村も柴も麻衣も殺し屋の野地も角町も死に、夜の岸壁でパトカーに包囲された神崎は車ごと海に向かってダイブする。海中から浮かび上がった紙幣がユラユラ漂う。不死身の神崎は美里とともに次の標的をゲット出来るか。エンディングはショーケンが歌う『ラストダンスは私に』。深作欣二の傑作ピカレスク・アクション。☆☆☆☆☆(☆5が満点 ★は0.5点)