『極道の妻たちNEO』『しとやかな獣』『皮ジャン反抗族』『告白的女優論』他、2021.12月 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 最近鑑賞した映画の自分のための備忘録的感想で、観始めたものの途中で時間の無駄と感じ、オープニングとラストだけ観た作品は含まれていません。このケースが5~6本ほどありました。鑑賞できる作品が数百本あり、その中から自分で選択しても実際最初から最後まで観るにはそれなりの魅力がないと無理であり、ここに挙げた作品はたとえ星取の評価が低い作品であっても最後まで見せる何らかの魅力があった作品であったことに敬意を表します。作品評価に関しては客観性がありませんので、皆様の評価と異なる際は御容赦下さい。 ☆5が満点 ★は0.5点

 

 

『突入せよ!あさま山荘事件』(監督・脚本・原田眞人 原作・佐々淳行 2002年) 

「浅間山荘事件」を連合赤軍側の視点を排除して、警察機動隊側の一方的視点から描けばこのようないびつな映画が出来上がっても不思議ではない。当初のタイトルは『救出』だったが、当時東映(製作配給会社)の社長だった岡田茂氏の鶴の一声でこのタイトルに変更になったそうだ。人質救出のため、強硬突破する最後の攻防戦が数十分にわたって描かれるが、三分ですむ描写に三十分の時間をかけているように感じ、「浅間山荘事件」から30年の時が過ぎ、事件を俯瞰的な視点から考えることに意味はあるだろうが、作品の内容からは原作者佐々淳行氏のある種のヒーロー映画、弁解映画のようにしか感じられなかったのは残念。(☆☆☆)                        

 

 

『鬼畜大宴会』(監督・脚本 熊切和嘉 1997年)

連合赤軍事件をモチーフにした熊切和嘉監督の大阪芸術大学映像学科卒業制作作品。大学生の卒業制作作品がこの高いレベルであることに驚くとともに、この作品が映像作品のリアリティを追求していった際に行き着く限界点まで到達した印象も受ける。

これ以上のリアルを求めれば制作スタッフはおそらく犯罪者として検挙されていただろう。ともあれ撮影で死者が出なかったのは幸い。山下敦弘、向井康介、近藤龍人、宇治田隆史が撮影、助監督などのスタッフとして参加。(☆☆☆☆★)                                                          

 

 

 

『川の流れに草は青々』(監督・脚本 侯孝賢 1982年) 小学校の先生だった姉が事情があって暫く学校を離れることになり、代わりにやって来た新米教師の弟と腕白な小学生たちの交流、村で起きる小さな事件、同僚の女教師との恋愛などをまじえて描く侯孝賢の第三作目の作品。子供たちの生き生きした姿と

台湾の田舎の村の風景は国境を越えてほのぼのとした郷愁を呼び覚ます。(☆☆☆☆★)                               

 

 

『昼顔』(監督・西谷弘 脚本・井上由美子 2017年) 

テレビドラマで高視聴率をあげたことで映画化されたようだが、ブニュエルの『昼顔」(主演・カトリーヌ・ドヌーヴ)のような作品を期待するとガッカリするような不倫純愛+女の復讐劇だった。テレビドラマで実績のある井上由美子の脚本だけにしっかりと構成された映画だが、やはりテレビドラマ的で映画的な見せ場、映画的な面白さが決定的に不足しているように感じられた。(☆☆☆)                                                               

 

 

                                                      『極道の妻(つま)たち Neo』(監督・香月秀之 原作・家田荘子 脚本・米村正二 2013年) 

『極道の妻たち』シリーズ第16作。

これまでの15作は『極道の妻たち』と表記して『極道の妻(おんな)たち』と読んでいたが、今回の作品では原作と同じく『極道の妻(つま)たち』の表記になっている。主演も高島礼子から黒谷友香に代わり、組長役で長嶋一茂、傘下の組長役でプロレスラーの天龍源一郎などが出演している。その中で、対立する組の姐として原田夏希が毒々しい化粧で登場し、どういうわけか時代錯誤のキセルを持ち歩き不必要な大芝居で内容の薄さに更に輪をかけてしまった。黒谷友香の姐に助けられた女子高校生のナレーションで話が進行するが一体どういうコンセプトで『極道の妻たち』を作ろうとしたのか理解に苦しむ。香月秀之監督は映画やテレビでの監督実績があり演出自体とりわけヒドイという事もないが、脚本は主にアニメや『仮面ライダー』シリーズを多く書いているシナリオライターと知って納得した。脚本の米村正二氏はアニメや仮面ライダーのノリで脚本を書いてしまったのだろうか。ラストで、裏切り者の大杉漣に「このチンカスが・・・」と言って股間をピストルで撃つ原田夏希は良かった。(☆☆★)                                                       

 

 

 

『皮ジャン反抗族』(監督・長谷部安春 脚本・白坂依志夫 1978年) 

『野良猫ロック セックスハンター』『サタデー・ナイト・フィーバー』に『理由なき反抗』を混ぜ合わせたような内容で、さすが白坂依志夫と感じるが、最後にもうひとヤマあると思っていたらそのままエンドマークで驚いた。夏樹陽子、森下愛子のほかに白川和子、山科ゆり、八城夏子といったロマンポルノの女優陣が映画に華をそえる。舘ひろしは全く反抗的ではない好青年だったが・・・(☆☆☆☆)                       

 

 

 

『しとやかな獣』(監督・川島雄三 脚本・新藤兼人 1962年) 

晴海団地の一室で繰り広げられる文明批評的毒が漲るブラックコメディ。金髪頭にモミアゲがうずを巻き、怪しげな日本語をまくしたてる偽外国人ジャズシンガー、ピノサク・パブリスタ(小沢昭一)がケッサク。若尾文子という「しとやかなけだもの」の前でなすすべもなく翻弄される男たち。

新藤兼人氏のオリジナルシナリオ。(☆☆☆☆☆)                            

 

 

『ふしぎな岬の物語』(監督・成島出 原作・森沢明夫『虹と岬の喫茶店』 脚本・加藤正人・安部照雄 2014年) 

某映画レビューサイト(☆5つが満点のサイト)で、☆1つが続出しているのを見て驚いたが、人生経験の乏しい人には中々理解できない深い内容の映画であることを改めて感じた。現実に根付いた大人のメルヘンとも呼べる作品で、近年の吉永小百合主演作の中ではベストではないだろうか。映画の舞台になっている喫茶店は千葉県安房郡鋸南町に実際に存在し、火事の後再建されたのも映画と同じで、プレハブで再見された店を映画撮影に当たってクレーンを使いプレハブごと移動し、そのあとにセットを建てたそうだ。嘘のような本当の話しである。ある程度の人生経験を積まないとこの作品の妙味を味わうことは難しいのでは。(☆☆☆☆)                                

 

 

 

 

『告白的女優論』(監督・吉田喜重 脚本・山田正弘 吉田喜重 1971年)

 二日後に『告白的女優論』という映画の撮影に入る三人の人気女優たちがそれぞれ過去のトラウマ的な出来事を告白する。

浅丘ルリ子、岡田茉莉子、有馬稲子の三大女優に太地喜和子、

赤座美代子が加わった超豪華な女優陣の共演。

現代の愛と性の虚妄?(☆☆☆☆★)