『ルート225』『黒蜥蜴』『黒部の太陽』『ガキ帝国』他 2021・11月 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 備忘録として書いているアバウトな感想のため記憶違いや理解力不足による勘違い、また皆様の評価と異なる際は御容赦下さい。作品評価は ☆5が満点 ★が0.5点

 

 

『ルート225』(監督・中村義洋 原作・藤野小夜 脚本・林民夫 2006年) 

中学生の弟(岩田力)を迎えに行った姉(多部未華子)が公園のブランコに座っていた弟を見つけ一緒に家に帰ろうとするが、

国道だった場所は海に変わりふたりはパラレルワールドに迷い込む。中村義洋監督はこの作品のような不思議ワールド系の作品が多いような気がする。(特にファンでもないが9本観ていた)『ジャージの二人』も変な映画だった。姉と弟の日常会話の面白さ。居なくなって初めて気づくかけがえのない家族のありがたみ。☆☆☆☆    

 

                             

『対岸の彼女』(監督・平山秀幸 原作・角田光代 脚本・神山由美子・藤本匡介 2006年) 

主人公二人のうち、一方の主人公・葵(財前直見)の高校時代は描かれるが、もう一方の主人公・小夜子(夏川結衣)は現在のみ描かれているため、やや、ややっこしい構成になっている。

葵の高校時代を演じている石田未来は夏川結衣に顔立ちが似ているため、葵ではなく小夜子の高校時代が描かれているような錯覚を覚えた。WOWOWで放送されたテレビ映画で劇場公開されなかったのが惜しいと感じさせる秀作。☆☆☆☆★   

  

 

 

『オー・ルーシー!』(監督・平栁敦子 脚本・ボリス・フルーミン 平栁敦子 2017年) 

43歳のOL節子(寺島しのぶ)は姪の美花(忽那汐里)に頼まれて嫌々英会話学校に行くが、そこでアメリカ人講師・ジョン(ジョシュ・ハーネット)に心を奪われてしまう。ところがジョンは美花の恋人で二人はアメリカへと旅立ってしまった。美花の母親で姉である綾子(南果歩)とも折り合いが悪く会社にも居場所がない節子。アラフォー女性の生と性がナマナマしく、時に滑稽に描かれる。こんな女性が一番厄介?☆☆☆☆                                                       

 

                             

『黒蜥蜴』(監督・深作欣二 原作・江戸川乱歩 戯曲・三島由紀夫 脚本・成澤昌茂 深作欣二 1968年) 

主演の美輪明宏(丸山明宏)の推薦で東映の深作欣二が松竹で監督。大映でも主演・京マチ子、大木実(明智小五郎役)監督・井上梅次で制作されている。刑事役の西村晃が怪演。☆☆☆☆                                                

 

 

『黒薔薇の館』(監督・深作欣二 脚本・松田寛夫 1969年) ストーリーの面白さは『黒蜥蜴』だったが、美輪明宏(丸山明宏)の妖艶さではこちらに軍配。室田日出男と松岡きっこが夫婦役という稀少な作品。☆☆☆☆                                

 

 

『黒部の太陽』(監督・熊井啓 原作・木本正次 脚本・井出雅人 熊井啓 1968年)

 石原裕次郎、三船敏郎と共に印象に残るのは辰巳柳太郎、自然との闘いの過酷さ、多くの犠牲者(死者171名)があっての黒部第四ダムの完成、命がけの撮影現場。3時間15分を飽きさせない構成力が見事。☆☆☆☆☆                              

 

 

『大地の子守歌』(監督・増村保造 原作・素九鬼子 脚本・白坂依志夫 増村保造 1976年)

 原作者の素九鬼子(もと くきこ)原作による映画化作品は、この頃『旅の重さ』『パーマネントブルー』などが作られ、一世を風靡した印象があるが、その中でも原田美枝子主演、増村保造監督のこの作品は鮮烈だった。☆☆☆☆☆                                         

 

 

『ガキ帝国』(監督・井筒和幸 脚本・西岡琢也 1981年) 

 

制作から40年の時が経ち、芸能界を引退、あるいは物故された俳優も多く見受けられる。不良少年たちを主人公にした映画は、今日でも作り続けられているが、本作のような個性的な味わいを持った不良少年悪ガキ映画は最早や化石化してしまった印象。☆☆☆☆☆                                       

 

 

『極道の妻たち 決着(けじめ)』(監督・中島貞夫 原作・家田荘子 脚本・高田宏治 1998年)

シリーズ第10作。岩下志麻主演で作られた『極道の妻たち』シリーズとしては8作目で、東映製作の劇場版『極道の妻たち』シリーズとしては最終作になり、以後東映ビデオ制作で高島礼子主演の『極道の妻たち』シリーズが作られる。

愛川欽也、トミーズ雅、大杉漣、とよた真帆、細川ふみえ、藤田朋子、新人中野若葉という異色の顔ぶれで華やかに岩下志麻版『極妻』シリーズの最後を飾った。☆☆☆☆★                                       

 

 

『ソロモンの偽証 前篇・後篇』(監督・成島出 原作・宮部みゆき 脚本・真辺克彦 2015年)

 

江東区立城東第三中学校2年A組の生徒役は大規模なオーディション選考で決定。主人公を演じた藤野涼子は役名を芸名にしたらしく、これは『善魔』(木下恵介監督)の三國連太郎と同じケース。前後半で4時間以上の作品だが構成の上手さで最後まで引っ張る。樹里(石井杏奈)と樹里の母を演じた永作博美の演技(演出)はどうにかならなかったろうか。成島出監督はホラー映画もいけるのでは。☆☆☆☆                                                                                          

 

 

『二重生活』(監督・脚本・岸善幸 原作・小池真理子 2016年) 

大学院で心理学を専攻している院生の修士論文が「何の目的もない、知らない人の尾行」を行う事で、その結果得られた結論がラストに書かれていた文章だとすれば何とも寒々しく、ラブホテルで長谷川博己が門脇麦に投げ捨てた言葉は大多数の大人がそう感じるのではなかろうか。☆☆☆☆                                 

 

 

『新聞記者』(監督・藤井道人 原案・望月衣塑子『新聞記者』 河村光庸 脚本・詩森ろば 高石明彦 藤井道人 2019年) 

 

社会派サスペンス映画としての面白さや映像への気配りは十分だが、実際に起きた政治的事件がフィクションの中にねじ込まれた政権批判のプロパガンダ映画という側面も感じる。内閣情報調査室のエリート官僚杉原(松坂桃李)は最後にどんな選択をしたのだろうか。☆☆☆☆