『永遠の片想い』『河内のオッサンの唄』『極道の妻たち 危険な賭け』他、2021・11 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 備忘録として書いているアバウトな感想のため記憶違いや理解力不足による勘違い、また皆様の評価と異なる際は御容赦下さい。作品評価は☆5が満点 ★は0.5点                                                                      

 

 

『永遠の片想い』(監督脚本・イ・ハン 2002年) 

 

韓国映画には過激な内容の作品も多く見られるが、この作品のようにナイーブな恋愛映画も多い。特殊な事情を抱えた女性ふたりが主人公のため、観る人によっては違和感を覚えることもありそうだが、『突然炎のごとく』(フランソワ・トリュフォー監督)の逆パターンの恋愛映画という視点から見ていると十分楽しめた。お気に入り女優イ・ウンジュが出演。☆☆☆☆★                                                                                       

 

 

 

『弓』(監督脚本・キム・ギドク  2005年) 

 

外界と孤絶した漁船で暮らす老人と少女のもとに釣り船の客としてやって来た青年。青年と少女に芽生える恋愛感情、その時老人がとった行動は・・・弓と矢に込められた隠喩を読んでいくと更に作品の面白さが増していく。キム・ギドクの作品にしては猟奇的なシーンもなく穏やかで、結末も主人公の老人としてはこれしかないだろうと納得出来る。☆☆☆☆                                                                         

 

 

『吸血蛾』(監督・中川信夫 原作・横溝正史 脚本・小國英雄 西島大 1956年)

 

横溝正史『金田一耕助』シリーズの一作。真犯人はもっとも犯人らしからぬ人物という謎解き映画の定石からするとこの作品は成功の部類に入りそうだが、仕掛けが複雑すぎて手が回らなかったのか真犯人の動機が十分説明されないまま終わってしまった取り残され感。 中川信夫監督で内容から新東宝の作品と思っていたが東宝作品だった。ヒロイン久慈あさみをしのぐ塩沢とき(塩沢登代路)に魅力を感じた。☆☆☆☆                                                                            

 

 

『キスより簡単』(監督・若松孝二 原作・石坂啓 脚本・小水一男 1989年) 

 

バブル景気(1986年12月~1991年2月)真っ只中の頃に作られた作品のためか、原作がコミックということもあり時代の空気を反映したような内容で、監督若松孝二という所は終盤にかけて色濃く出ているが、それまでヒロイン(早瀬優香子)の視点から描かれていた作品が最後に突如原田芳雄に視点が移動して、映画のテーマは空中分解しているように感じられた。☆☆☆★                                                                                               

 

 

 

 

『チ・ン・ピ・ラ』(監督・川島透 脚本・金子正次・川島透 1984年) 

 

この作品もバブル景気突入前の時代の空気感が如実に反映されている。冒頭シーンから軽いノリで人を撃ち殺しハシャグ辺りは違和感タップリだが、これには落ちがありラストの伏線にも繋がっている。中盤から後半にかけて『竜二』(金子正次主演・川島透監督)を彷彿とさせるリアリティがあった。大ラスのどんでん返しは<夢>と考えればいいのだろうか? 柴田恭兵とジョニー大倉は『遠雷』(根岸吉太郎監督)の永島敏行とジョニー大倉にも通ずる関係性で、『チ・ン・ピ・ラ』ではジョニー大倉の恋人が石田えりだった。高樹沙耶のヌードが見れたのは映画ファン冥利につきる。☆☆☆☆                                         

 

 

『極道の妻たち 危険な賭け』(監督・中島貞夫 原作・家田荘子 脚本・高田宏治 1996年) 

シリーズ第9作。 

『新・極道の妻たち』(監督・中島貞夫 脚本・高田宏治)では組長の姐さん(岩下志麻)の息子(高島政宏)が登場してストーリーを動かしていたが、今回は岩下志麻の娘役で工藤静香が登場し、『極妻』シリーズもいよいよ脚本のネタ切れが見え始め岩下志麻主演での最終局面に入ってきたのを感じる。3年ぶりにかたせ梨乃が復活、ラストで見せ場。火野正平の寡黙な殺し屋がいい味。☆☆☆★                                             

 

 

『タンポポ』(監督・脚本 伊丹十三 1985年)

 

 山崎努、安岡力也、加藤嘉、渡辺謙、桜金造らが子連れの未亡人(宮本信子)が経営する売れないラーメン屋を再建するストーリーだが、ラーメン以外の食べ物を見せて食の中でのラーメンの位置づけを客観的にみせる俯瞰的な視点がいい。ストーリーに全く関係のない役所広司のエピソードは隠し味?☆☆☆☆                              

 

 

『河内のオッサンの唄』(監督・齋藤武市 脚本・高田純・関本郁夫 1976年)

 

河内地方では「よう来たのワレ」が人をもてなす歓迎のあいさつなのか、関東育ちには想像がつかない異形の世界。苦し紛れに作られたプログラムピクチャーの添え物映画かと思っていたら激辛極上のエンターテインメント映画だった。旧日活組の夏純子、監督・齋藤武市、強面の名バイプレイヤー榎木兵衛が東映で躍動するのは嬉しい限り。☆☆☆☆★                                                

 

 

『横道世之介』(監督・沖田修一 原作・吉田修一 脚本・前田司郎 沖田修一 2013年) 

 

1987年4月、大学に入学し故郷の長崎から上京して一人暮らしを始めた横道世之介(高良健吾)がさまざまな人と出会いを重ねる。大学入学から1988年3月までの一年と16年後の現在(2003年)から世之介と出会った人々が世之介との出会いを振り返る。7,8年前に鑑賞済みだが母校が舞台になっている作品だったことはすっかり忘れていた。2時間40分というのは長すぎる気もするが、長さを感じさせず沖田修一監督の独特のゆるやかなテンポリズムで話が進んでいく。主人公の世之介のキャラクターは高良健吾にしか出せない味があり、お嬢様キャラの吉高由里子も同様に天然の個性を発揮。『四月の永い夢』のヒロイン朝倉あきが世之介の同級生役で出演していた事や世之介が都会の女性として憧れるパーティーガール役で伊藤歩が出ていたのを確認できたのは再鑑賞した収穫。☆☆☆☆★                                                                                         

 

 

『リンダリンダリンダ』(監督・山下敦弘 脚本・向井康介・宮下和雅子・山下敦弘 2005年) 

文化祭に出る予定だった軽音楽部のメンバーの一人萠(湯川潮音)が直前に指を骨折して参加できなくなった事からバンドメンバーの恵(香椎由宇)と凛子(三村恭子)が対立、凛子はメンバーを降り、韓国からの留学生・ソン(ペドゥナ)がボーカルとして新たに参加することになった。高校の文化祭に向けて高揚する生徒たちの姿が生き生きと捉えられ、バンドメンバー間のそれぞれの個性がリアリティあふれる台詞とともにヴィヴィッドに描き出される。「映画芸術2005年ベストワン」 ☆☆☆☆☆