『ウイラード』『極道の妻たち 赤い絆』『天使のはらわた 名美』『ニライカナイからの手紙』他 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 自分のための備忘録的な感想のため皆様の評価と異なる点や

記憶違いはご容赦下さい。☆5が満点 ★が0.5点                                                                                                                                                                         

 

『ぼくのエリ 200歳の少女』(監督・トーマス・アルフレッドソン 2008年) 

12歳の少年が主人公のスウェーデンのヴァンパイア映画。

学校生活でのいじめや性同一性障害の問題がテーマやストーリーに深く関連付けられているのがこれまで作られてきた吸血鬼映画と一線を画している。欧州の映画祭などではとても評判が良かったそうで数々の賞を受賞。単純に娯楽映画として楽しめるような作品ではないので評価は難しいが、作品自体の質は高いのであとは映画ファンそれぞれの好み次第。☆☆☆☆                                                                           

 

 

『ウイラード』(監督・ダニエル・マン 脚本・ギルバート・ラルストン 1971年)

 

古い屋敷の庭に現れたネズミと友人になった孤独な青年がネズミを飼いならし、父の会社を乗っ取った男(アーネスト・ボーグナイン)に復讐を果たすが、大量に繁殖したネズミは青年の手に負えなくなりやがて自分自身がネズミたちの襲撃を受ける。500匹近くのネズミを調教したという前代未聞のアメリカ映画。☆☆☆☆☆                                                                          

 

 

『阪急電車 片道15分の奇跡』(監督・三宅吉重 原作・有川浩 脚本・岡田恵和 2011年) 

 

婚約者に裏切られ、元彼の結婚式場で嫌がらせをする女(中谷美紀)の話しを起点にして、阪急今津線を走る電車内で起きるさまざまなエピソードをスケッチ風に関連づけて描いた作品。

30分の連続テレビドラマを4回分観たような感じで映画館でこれを見た人は満足できるのか疑問に思ったが、興行成績もよく、キネマ旬報の読者ベストテンで13位という意外な高評価。

谷村美月と勝地涼の出会いのエピソードは良かった。☆☆☆                                       

 

 

『アフリカの鳥』(監督・磯見忠彦 脚本・勝目貴久 1975年) 

 

日活児童映画。仲の良かった六人の小学生たちが中学受験や親の強制で塾に行かされたりで次第に遠ざかりギクシャクした関係になってしまう。多摩川で鳥の観察をしていた青年に出会った少年は学歴がなくても独力で勉強することの素晴らしさを学んでいく。「学問よりも人としての心の大切さ」を子供たちや親の子供への向き合い方を通して見るものに訴えかけた日活児童映画の秀作。懐かしい監督磯見忠彦の名前。☆☆☆☆☆                                                                     

 

 

『ウホッホ探検隊』(監督・根岸吉太郎 原作・干刈あがた 脚本・森田芳光 1986年) 

 

夫(田中邦衛)が単身赴任した先で職場の同僚女性(藤真利子)と関係を持ったことを妻(十朱幸代)に打ち明けたことから子供たちとの間にも隙間が見え始める。干刈あがたの直木賞受賞作の映画化。キャリアウーマンの妻と気が強い愛人?の間で右往左往する田中邦衛が見ものだが、この作品もわざわざ映画館で観るほどの内容ではなくテレビドラマでも十分な印象。☆☆☆★                                                                                          

 

 

『告白』(監督・脚本・中島哲也 原作・湊かなえ 2010年) 

 

幼い子供を殺された中学教師(松たか子)の生徒たちへの復讐劇。子供を死に追いやった二人の生徒は直ぐに生徒たちの前で明らかにされ教師は学校を退め、子供を死に追いやった生徒の一人はエイズ感染への怖れか心を病んで不登校になり、もう一人の生徒は居直って登校し続ける。生徒同士の見せかけの危うい関係は家族関係も同様で、学校(クラス)という虚構の共同体の崩壊がさまざまな映像テクニックを駆使して見事に描き出されている。☆☆☆☆☆                                                                        

 

 

『犬猿』(監督・脚本 吉田恵輔 2018年) 

 

地道に仕事に励む真面目な弟(窪田正孝)と刑務所帰りのやくざな兄(新井浩文)、見た目は可愛いが仕事はサッパリで女優への夢を捨てきれない妹(筧美和子)、頭は切れて仕事は出来るが見た目のよくない姉(江上敬子)。それぞれの相手に対する積り積もった不満が爆発し、やがて理解し合い、ハッピーエンドでメデタシメデタシとはならないのが吉田恵輔作品の面白さ。☆☆☆☆☆     

 

                                                                     『トラック野郎 一番星北へ帰る』(監督・鈴木則文 脚本・掛札昌裕・中島信昭・鈴木則文 1978年) 

 

りんご農園で働く子持ち未亡人(大谷直子)に一目ぼれした桃次郎(菅原文太)がダムで沈み消えてしまった岩手の故郷と母の思い出を語る場面は名シーン。人情噺に下品な笑いとお色気、恋がたきのライバルとの殴り合いに終盤の桃次郎とトラック野郎たちの心意気をみせるデコトラを使ったアクションの絶妙なバランス。☆☆☆☆★                                            

 

 

『この子の七つのお祝いに』(監督・増村保造 原作・齋藤澪 脚本・松木ひろし・増村保造 1982年) 

 

幼い頃、死ぬ間際に言われた母(岸田今日子)の言葉を忘れず遂行しようとする女(岩下志麻)の復讐劇。第一回横溝正史ミステリー大賞受賞作の映画化作品という理由からかスプラッター映画のような陰惨さ。事件の真相を追いかける雑誌記者たち(杉浦直樹・根津甚八)にもリアリティがなく、ラストの岩下志麻の一人台詞の大芝居もどこか空々しく響く。☆☆☆                                

 

 

『極道の妻たち 赤い絆』(監督・関本郁夫 原作・家田荘子 脚本・塙五郎 1995年) 

 

シリーズ第8作。岩下志麻が刑務所を出た後スーパーマーケットの店員になり、復讐の鬼になった古田新太に追われ新宿の地下の下水溝を逃げるシーン、鈴木砂羽の刺青、ラストのエキスポランド前で宅麻伸が姐さんの岩下志麻に撃たれ凄い勢いでバウンドして倒れ、ニカッとして息絶えるシーンが見どころ。毬谷友子、鈴木砂羽、佳那晃子ら女優陣とジャニーズ系の赤坂晃を活かした塙五郎の脚本に拍手。☆☆☆☆★                                                                   

 

 

『ニライカナイからの手紙』(監督・脚本・熊澤尚人) 

 

幼いころ別れた母(南果歩)から毎年誕生日に届く手紙。祖父(平良進)と二人、沖縄八重山諸島で暮らしていた風希(蒼井優)は高校卒業を機にプロのカメラマンを目指して母が住む東京へ向かう。二十歳の誕生日が来たらすべての真実を話すと書かれた母の手紙を頼りに約束の待ち合わせ場所へ向かう風希。高校を卒業したばかりの田舎育ちの娘が身寄りもない東京へ出て暮らすことの孤独感がリアルに身に染みる。映像に強いこだわりを持つ熊澤尚人監督らしい美しい沖縄の情景。☆☆☆☆★                                                               

 

 

                                          『おと な  り』(監督・熊澤尚人 脚本・まなべゆきこ 2009年)

 

 函館港イルミナシオン映画祭シナリオ部門佳作作品が原案。新進のプロカメラマン(岡田准一)とフラワーデザイナーを目指す女性(麻生久美子)がアパートのお隣同士で暮らしているが、顔も名前も知らずお互いの生活音だけでその存在を確認し合っている。仕事やプライベートで色々あったあと、隣に住んでいたのが中学時代の同級生であったことを知らずに、それぞれカナダとフランスへ旅立とうとするが・・・。「おと な  り」は「音鳴り」「お隣り」の意味。エンドクレジットに流れる声と歌の演出が秀抜。映画のメインテーマ曲は、はっぴいえんどの「風をあつめて」。☆☆☆☆☆          

 

 

                                            『ひまわり』(監督・行定勲 脚本・佐藤信介・行定勲 2000年) 

 

小学校時代の同級生が乗った釣り船が台風で遭難して死亡したニュースがテレビに流れ、葬儀に出席するために久しぶりの故郷に集まる同級生たち。死んだ同級生・朋美(麻生久美子)にはさまざまな噂が流れ、遺体もまだ発見されていなかった。通夜の夜、集まった面々はそれぞれ彼女との関りを話し始める。小学校時代の消えない記憶と悔恨、今を生きる現在のやっかいな問題。『GO』や『世界の中心で、愛をさけぶ』でブレイクする前の行定監督の自主制作的作品。麻生久美子も粟田麗も津田寛治も堺雅人も若い。☆☆☆☆★                                       

 

 

                                      

 

『天使のはらわた 名美』(監督・田中登 原作・脚本石井隆 1979年)

 

 強姦された女性のその後を女性週刊誌に連載していた土屋名美(鹿沼えり)は、さまざまな被害女性を取材しているうちにストリップ劇場の取材先で出会ったエロ雑誌記者・村木(地井武男)の過去が大手出版会社のエリート社員だったことに興味を覚え調査を始める。村木の妻は家で見知らぬ男に強姦されたあと、行方をくらませ強姦した男と一緒に生活しているのだった。錯乱した村木は名美を犯そうとするが実は村木は不能者だった。村木の紹介で強姦された元看護婦(青山恭子)を訪ねた名美はその病院で行われた異常な出来事にショックをうける。村木に地井武男、名美に鹿沼えり、水島美奈子を強姦する男に古尾谷雅人、強姦している古尾谷雅人を見て興奮しカマを掘る男に庄司三郎、ストリップ劇場の白黒ショーで山口美也子と草薙良一、冒頭の雨の中の強姦シーンで港雄一、幻想シーンで出版社の十数人の男に襲われる鹿沼えりなど『天使のはらわた』シリーズの中でも屈指の強烈な出来映え。☆☆☆☆☆                                                                                             

 

 

『虹の女神 Rinbow Song』(監督・熊澤尚人 脚本・桜井亜美 斎藤美如 網野酸 2006年)

 

 大学の映画サークルに所属するあおい(上野樹里)はおかしな経緯から同じ大学に通う智也(市原隼人)と知り合い、智也を映画サークルに誘う。お互い好意を持ちながら気持ちとは裏腹の憎まれ口をたたき合い、そのまま大学を卒業してあおいは映像制作会社に就職。初めて担当したドキュメンタリーで才能は認められたが、上司(佐々木蔵之介)にもっと大きな世界を見てこいと発破を掛けられロサンゼルスに旅立った。あおいの穴埋めで映像会社に採用された智也は撮影現場でドジを繰り返し落ち込む日々。そんなある日あおいが飛行機事故で死んだという知らせが入る。お互いに好意を持ちながら素直に言い出せず、やがてそのことが最悪の結果を生んでしまうという人生の残酷さ。ほろ苦いあと味が残る大学映研系恋愛映画の佳作。☆☆☆☆★