『桃尻娘 ラブアタック』『化石の森』『極道の妻たち 地獄の道づれ」『わたしは光をにぎって2021 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 最近鑑賞した作品の個人的な備忘録で作品評価に客観性はありませんので、皆様の評価と異なる際は御容赦下さい。

 ☆5が満点 ★が0.5点

 

 

『青の帰り道』(監督・藤井道人 原案・おかもとまり 脚本・アベラヒデノブ 藤井道人 2018年) 

高校を卒業してそれぞれの道を歩むことになった男女7人の仲間を描いた群像劇。中盤過ぎからの演出には力が漲り監督の力量を感じさせる。ただ、作品の土台ともいうべき序盤シーンの7人の結びつきの描き方が表面的で弱いため後半に入ってもスンナリ作品の中に入って行けず違和感が付きまとった。そのため、ラストで6人が昔の自分たちを思い起こすシーンも胸に迫ってくるものが無かったのが惜しい。題材は面白かっただけに脚本次第では傑作になった可能性。撮影中の出演者逮捕による中断など様々なアクシデントを乗り越えて作品を完成させたのは立派。 ☆☆☆☆       

 

 

『ラーメン食いてぇ!』(監督脚本・熊谷祐紀 原作・林明輝  2018年) 

妻の死でラーメン店をやめ自殺しかかっていたラーメン店<青蘭>の店主・紅烈土(石橋蓮司)は孫娘(中村ゆりか)が後を継ぐと聞いて自殺を思いとどまりラーメン作りを孫娘とその親友・コジマ(葵わかな)に伝授する。その頃高名な料理評論家・赤星(片桐仁)はテレビ番組取材中の事故でキルギスの高原をさまよいながら「青蘭のラーメンが食いてぇ!」と叫んでいた。

リアリティには欠けるが、ラーメン作りの工程と画面から漂うラーメンの魅力は伊丹十三監督『タンポポ』に見劣りしない。

元ラーメンズ、片桐仁のコントまがいの演技は御愛嬌。

ラーメン店店主・石橋蓮司の迷演技。☆☆☆☆                                                               

 

 

 

『レオン』(監督・塚本連平 原作・清智英 大倉かおり 脚本・吉田恵里香 2018年) 

会社乗っ取りの陰謀工作による自動車事故で社長(竹中直人)と派遣OL(知英・ジヨン)が入れ替わり大騒動がはじまる。

男女が入れ替わるという映画のアイディアはしばしばあるが、

竹中直人の女装ほど気色悪いものも中々見られないという意味では貴重な作品。知英(ジヨン)が韓国出身の元アイドル歌手だとはこの作品で初めて知った。☆☆☆☆★                                                           

 

 

                              

『おろしや国酔夢譚』(監督・佐藤純彌 原作・井上靖 脚本・野上龍雄 神波史男 佐藤純彌 1992年) 

天明2年12月(1783年1月)大黒屋光太夫ら17名が乗った廻船(運輸船)が伊勢から江戸へ向かう途中嵐に遭って遭難、8か月の漂流後ロシア帝国の属領地に漂着する。寒さや飢えのため死者が続出、4年後生き残った6人は日本へ帰ることを望み続けるが・・・。映画として脚色され史実とは異なる部分があるとはいえ、直接的な映像でフィクションのドラマを通して歴史と政治外交、自然と人間について考えるには格好の作品。☆☆☆☆★                                                              

 

 

                              

『化石の森』(監督・篠田正浩 原作・石原慎太郎 脚本・山田信夫 1973年) 

大学病院の暗部にメスを入れた『白い巨塔』のような作品かと思っていたら、中学時代の同級生(二宮さよ子)と東京で再会したインターンの主人公(萩原健一)が肉体関係を持った同級生と共謀して殺人を遂行し、患者の母親とも関係してのっぴきならない状況に追い込まれるという予想外の展開に。息子(ショーケン)と一緒に暮らすことにこだわる母親(杉村春子)や怪しげな新興宗教、異常な嫉妬心を持つ患者の夫(日下武史)が登場し収拾がつかなくなった印象。二宮さよ子と八木昌子のベッドシーンが見れたのは良かったが。☆☆☆☆                                                      

 

 

『桃尻娘 ラブアタック』(監督・小原宏裕 原作・橋本治 脚本・金子成人 1979年)

 妊娠して堕胎費用を捻出するためにピンサロで働き始める女子高生・裕子(亜湖)とそれに付き合う親友・レナ(竹田しほり)。ピンサロのナンバー1ホステス・ドヌーヴに原悦子。社長令嬢のカマトト女子高生に栗田洋子。ロマンポルノの暗さがまったくないアッケラカンとした明るさは俳優陣と脚本・金子成人、監督小原宏裕の高等な技術。☆☆☆☆☆                             

 

『百万円と苦虫女』(監督・脚本・タナダユキ  2008年) 

 

短大卒、就職浪人でアルバイトをしている佐藤鈴子(蒼井優)は同僚のバイト仲間・リコ(平岩紙)とルームシェアしてアパートを借りるが、引っ越し直前リコは彼氏と別れ、同居することになったリコの彼氏と揉めて収監され、20万の罰金刑を言い渡される。娑婆に出てきたものの家族関係は最悪でみんなの前で「100万円貯まったら出て行きます」と宣言する。海の家のバイト、桃農家、ホームセンターのアルバイト、どのバイトも人間関係が濃密になりかけると逃げ出してしまう鈴子。若いころ自分がやりたい事、自分の居場所が見つからず仕事や場所を転々とするのも悪くないし、鈴子もやがて落ち着くべき所に落ち着くのだろう。鈴子に農家の仕事を世話する笹野高史と、もも農家のひとり息子・ピエール瀧がいい。オリジナルでこの脚本が書け、演出が出来るタナダユキはやはり才能がある。☆☆☆☆☆      

 

 

                              

『パートナーズ~盲導犬チエの物語~』(監督・下村優 脚本・荒井晴彦 井上淳一 2010年) 

「劇団東俳つくしんぼクラブ」社会福祉プロジェクト第一弾(劇団東俳スタッフ・所属子役・俳優が各種福祉施設へ慰問活動を行うクラブ)近代映画協会製作。学費がタダで技術が習得できる盲導犬訓練学校に入学した19歳のフリーター・小山内剛(浅利陽介)が、盲導犬が10か月になるまで育てるパピーウォーカーの家族やロックライブ中の事故で失明した女性・真琴(大塚ちひろ)、盲導犬学校の教官(夏八木勲)らとの交流の中で成長する姿を描く。盲導犬の訓練と殺処分される犬たちの現状など映画を通して得る知識も多い作品。真琴(大塚ちひろ)のピアノ演奏会の客の中に脚本を書いた荒井晴彦氏が紛れて好演技。☆☆☆☆☆                       

 

 

                             

『極道の妻たち 地獄の道づれ』(監督・関本郁夫 原作・家田荘子 脚本・高田宏治 2001年) 

 

『極妻』シリーズ第14作で高島礼子版としては第4作。関西暴力団のトップが石橋蓮司、関西進出を企む関東の参謀に中尾彬、さんざん利用された挙句ようやくそれに気付き無残に殺されるのは『極妻』シリーズ定番の草刈正雄。高島礼子の姐に敵意を燃やすファムファタールとよた真帆が素晴らしい。姐に手を貸すやさぐれの元刑事・西岡徳馬がいい味。☆☆☆☆★                                                 

 

 

『わたしは光をにぎっている』(監督・中川龍太郎 脚本・末木はるみ 佐近圭太郎 中川龍太郎 2019年)

 

長野の野尻湖畔で祖母とふたり民宿を切り盛りしていた20歳の宮川澪(松本穂香)は祖母(樫山文枝)が介護施設に入ったのを機に亡き父の友人で東京の下町で銭湯を営む三沢京介(光石研)を頼って上京する。東京でアルバイトを探すものの仕事も同僚ともうまくいかず、京介の銭湯を手伝うことに決めた。銭湯にやって来る地元の人たちとの繋がりも出来徐々に明るさを取り戻した矢先、街の区画整理事業で銭湯が廃業することに・・・。

 

過剰な説明や音楽による盛り上げを使わず、どのショットも美しい佇まいを持っている。光石研のいぶし銀の味が光る。監督が誰なのかを知らず観ている内に日本でこんな映画を作ることが可能なのは中川龍太郎以外にいないだろうと確信、やはり間違いではなかった。『走れ、絶望に追いつかれない速さで』で注目して以来、着実に歩みを続けている中川龍太郎に今後も期待。☆☆☆☆☆