『女番長 野良猫ロック』1970年 監督長谷部安春 梶芽衣子×和田アキ子×藤竜也 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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『女番長 野良猫ロック』1970年

 

監督 長谷部安春  脚本 永原秀一

 

出演・梶芽衣子、和田アキ子、藤竜也、和田浩治、范文雀、

ケン・サンダース、睦五郎、中丸忠雄、久万里由香、島敏光、

小磯マリ、十勝花子 他。 

 

 新宿を遊び場にするメイ(梶芽衣子)らのズべ公グループは、トシエ(小磯マリ)たちのズべ公グループと敵対し、トシエの恋人・勝也(藤竜也)がリーダーの黒シャツ隊が控えたトシエらと新宿の高架下で乱闘になったが、オートバイに乗った流れ者の女・アコ(和田アキ子)が現れて窮地を救われる。

 

メイの恋人・道男(和田浩治)はくすぶっている自分に嫌気がさし、幼馴染みの人気ボクサー・ケリー藤山(ケン・サンダース)を使った八百長試合で黒シャツ隊を裏で支配する政治結社”青勇会”に取り入ろうとする。”青勇会”の幹部・花田(睦五郎)や

勝也、道男、メイ、アコらが見守る中、花田の思惑とは違い八百長試合は失敗に終わった。

 

”青勇会”の事務所に連れて行かれた道男は、勝也や花田に激しい制裁を受ける。異変に気付いたメイやアコは”青勇会”の事務所に駆けつけるが・・・

 

『野良猫ロック』シリーズ全五作中の第一作で、和田アキ子が所属するホリプロの企画制作映画のため、当時ホリプロに所属していたモップス、オリーブ、オックスなどのグループサウンズや

アンドレ・カンドレ時代の井上陽水も出演、70年代初頭のゴーゴー喫茶やファッション、風俗、新宿西口近辺を中心にした街の風景も活き活きと映し出されている。圧巻はオートバイに乗ったアコとバギーカーに乗った勝也が、新宿駅の地下階段、地下商店街、歩道橋を昇り降りし爆走する激しいチェイスアクション。

恐らく無許可の隠し撮りだろう、一歩間違えば大事故になりかねない<暴走ここに極めり>という今や伝説のシーン。

 

メイがトシエと対決する序盤シーンの「メイ遅いぞ。またあいつとイチャイチャやってたんだろう」「うるせえや。バカヤロー。昔一緒に遊んだ仲だと思えばこそ勝手なことをしても見逃してやったのさ。だけど、ガマンにも限界ってものがあるのサ。

今日こそケリをつけてこの街から叩きだしてやる」

「泣きべそかいて逃げ出すのはどっちかね」。

勝也が率いる黒シャツ隊のアジトに連れ去られた仲間のユカ(大橋由香)を救い出しに来た場面の「どこの馬の骨か知らねえが、すぐこの街を出て行け。メイ、てめえたちもだ」

「いつからこの街が青勇会やアンタたちのもんだと決まったのさ。勝手なこと言うんじゃないよ」「誰もが勝手なことをやれる。それがこの街じゃねえのかよ。そんな凄んでみせたってちっとも怖かねえよ。自由に楽しんでいる奴を力で追っ払おうたって、そうはいかないよ」「その自由ってのが気に食わないとしたら?」「追っ払えるもんなら追っ払ってみな」「なるほど。覚えておこう、帰れ」日活ニューアクションの旗手・永原秀一による気の利いた小気味いい台詞の応酬。メイと道男の会話シーンを2分割し、”青勇会”に向かうシーンでは両サイドを黒味にして道男の追い詰められた孤独感を表現、土曜日午後から月曜日朝までの出来事を曜日タイトルを字幕で入れ、フラッシュ点滅させるなどスタイリッシュな長谷部安春の演出。

 

自由の街<新宿>に集う若者たちの孤独とアンニュイ、自由を阻む者への無言の抵抗。”青勇会”の事務所に向かうアコとメイ。

支部長・権藤(中丸忠雄)に厳しく叱責される花田。花田を嘲笑う勝也。激高した花田は勝也を射殺。駆けつけたメイにナイフで突き刺される花田。メイは花田の銃弾に倒れアコが残った。

新宿の夜明け前。「どうしても行くの?」「うん」「どこ行くの?」「さあ」「どこから来たの」「マリはこの街に残んのか?」「うん。だってこの街はあたいたちの街だもん」

「じゃ、さよなら」。流れ者の女ライダー・アコは風のようにジュクにやって来て、夜明け前の高層ビルが建築中のジュクの街から風のように消えて行く、さすらいのヒーロー?。

 

 メイたちズべ公グループのサブリーダー的存在でメイを見守る范文雀、アコを慕うキュートな久万里由香、やさぐれた十勝花子もいい。シリーズ化を待望させる素晴らしい出来栄え。

☆☆☆☆☆(☆5が満点)