『スーパーGUNレディ ワニ分署』(1979年 監督曽根中生) 横山エミー×ジャンボかおる | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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           『スーパーGUNレディ ワニ分署』1979年 

原作 篠原とおる 監督 曽根中生 脚本 荒井晴彦・高田純・

   曽根中生

 

出演 横山エミー、ジャンボかおる、岸田森、内田裕也、

   古尾谷雅人、佐藤慶、今井健二、山谷初男、安岡力也

   益富信孝、深水龍作、高瀬将嗣、川島メグ 他。

 

 警察庁資料調査分室、内線82番、通称”ワニ分署”は主として公務員の犯罪摘発、及び防止にあたる秘密組織で、所属する火野三夏(横山エミー)は航空機疑惑の捜査で疑惑の人物、大和商事の常務・田島(入江正徳)をマークしていたが、ホモの若い恋人・沢英二(高瀬将嗣)とホテルに行くほか不審な行動は見られず、油断していた隙に田島は二人の男によって会社の30階から突き落とされた。田島の遺書が残されていたことから警察は航空機疑惑の責任を感じた田島の自殺と発表する。調査室長の緒方(岸田森)は三夏の失策を非難し、SPから配属された加倉リン(ジャンボかおる)と組んで捜査に当たるよう指令する。

 

 以前大和商事の副社長・武部(河村弘二)が田島と言い争っていたのを目撃した三夏は、武部と接触しようとしていた英二を捕まえ理由を問い詰めるが、雑踏の中で振り切られてしまった。  逃げた英二は二人の男に自動車事故を装って殺される。

二人を目撃した三夏とリンは地下鉄駅に逃げ込んだ二人を追い電車内で一人を捕まえる。男を駐車場に連れて行き泥を吐かせようとするが、抵抗する男のアゴをリンが力づくで外してしまった。仲間の男が現れるのを待っていた隙に別の男が現れ、一方の男を射殺し車を奪って逃走した。車は「維新塾」という暴走族を集めた右翼団体の集会場へ消えていった。張り込みを続けていた三夏とリンは「国際問題研究会」の小野寺(佐藤慶)が「維新塾」の元締めで、小野寺の上には内閣府調査室長・雨宮(今井健二)が裏で糸を引いていることを掴むが・・・。

 

 江本(阪神)対王(巨人)が対戦中のナイター中継を見ている民家の居間に、突如乗用車が窓ガラスを粉砕して飛び込んで来るという衝撃のオープニング、航空機疑惑の渦中にある大和商事の常務田島が戦争中に副社長の武部に犯され、田島の恋人の若いホモ、英二がそれをネタに武部をゆすり、「維新塾」隊員に殺される。三夏は「維新塾」の暴走族につかまりシャブ漬けにされ、救出された後リンらの助けを借り何とかシャブ中から回復する。

航空機疑惑への世間の目を逸らすために銀行に送り込まれる強盗放火殺人犯(内田裕也)と連続婦女暴行殺人犯の変態兄弟(深水龍作・古尾谷雅人)。20数分に及ぶ銀行の凌辱シーンは曽根中生の本領。航空機疑惑が戦時中の軍隊でのホモ関係、右翼団体、暴走族、麻薬密売、政府から警察への圧力へと繋がる裏世界の複雑な利害関係。荒井晴彦・高田純・曽根中生による脚本の深みが並みのポリスアクションとは一味も二味も違う本作の面白さになっている。ロングで撮影されたゴミ集積場のアクションシーンや都会の孤独感を漂わせるサキソフォンソロを使った音楽も魅力。「維新塾」の決起集会で流れる「昭和維新の歌」は『けんかえれじい』を、三夏と暴走族のオートバイやジープを使った攻防は『野良猫ロックシリーズ』を思い起こさせる。カバーガール出身の横山エミー、キックボクシング出身のジャンボかおるの演技はお世辞にも巧いとは言えないが、身体を張った二人の熱演には拍手を送りたい。佐藤慶と今井健二の役どころが逆転し、今井健二にヘイコラする佐藤慶も見もの。ラストの落とし前?のつけ方も傑作。☆☆☆☆☆(☆5が満点)