『シコふんじゃった。』(1991年 監督周防正行) 本木雅弘×清水美砂×竹中直人 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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『シコふんじゃった。』(1991年 監督脚本・周防正行) 

 

出演・本木雅弘、清水美砂、竹中直人、柄本明、田口浩正

宝井誠明、ロバート・ホフマン、梅本律子、六平直政

片岡五郎、桜むつ子 ほか。 

 

教立大学4年の山本秋平(本木雅弘)は大手会社に就職が決まっていたが、単位不足で呼び出しを受ける。卒業論文の指導教官・穴山冬吉(柄本明)の研究室に行ってみると、穴山が顧問を務める相撲部で選手としてリーグ戦に出場することが単位取得の条件と言われる。相撲部の練習場に行くと、青木富夫(竹中直人)という男が独り言をブツブツ言いながら、一人稽古に励んでいた。

 

青木は8年生で教立大唯一の相撲部員だった。リーグ戦に出場するには最低5人の選手が必要なため、秋平と青木は部員の勧誘を始めるが三日たっても部員は一人も集まらず、リーグ戦出場が単位取得の条件になっている秋平はキャンパスを歩いていた太った男・田中豊作(田口浩正)に声を掛け強引に部員に引き入れる。

 

アメフト部の友人・堀野(松田勝)からラグビー経験のあるイギリス人留学生・スマイリー(ロバート・ホフマン)を紹介されスマイリーの下宿に行ってみると、スマイリーはまわしをつけ、尻を見せることに抵抗を示すが下宿の家賃も払えない貧乏生活を送っており、相撲部の稽古場に住み1日の練習時間は2時間という条件で承諾する。

 

大学のプロレス愛好会に入っていた秋平の弟・春雄(宝井誠明)はニューハーフの格好をさせられたプロレスの八百長に嫌気がさし、男らしいと言って相撲部に入ってきた。マネージャー志願の間宮正子(梅本律子)も入部し、リーグ戦に向け、教立大相撲部の猛練習が始まるが・・・。

 

本当に相撲が好きなのは正規の相撲部員の8年生の青木だけ、集まった連中は何かしらの理由で一時的に相撲部員になることを承諾したが、員数合わせで無理やり三部リーグの試合に出場したものの一勝も出来ず惨敗。応援にやって来た相撲部OBとの慰労会で顧問の穴山はリーグ戦に出場出来たことをみんなに感謝するが、OBの熊田寅雄(六平直政)は惨めな結果に「こんな情けねえ相撲部なら解散しちまえ!!」と青木たちを罵倒する。

 

「勝ちゃあいいんだろ。勝ちゃあ!!」思わず啖呵を切った秋平たちの気持ちに火がついた。教授の穴山は教立大相撲部OBで元学生相撲の横綱。穴山の助手をしている大学院生・川村夏子(清水美砂)は相撲部マネージャーだが、ここ3年部員不足でリーグ戦にも出られず元気がない相撲部顧問の穴山を応援したい。

 

マネージャーに志願した正子は春雄が目当て。春雄はプロレスの八百長に嫌気がさして相撲部に入ったと言っているが本当は夏子に恋してる。田中は中・高校と誰にも相手にされず、秋平に声を掛けられたのが嬉しかっただけ。スマイリーは家賃が払えない下宿から逃げ出し、三食部屋代がタダで練習時間も2時間だけというのが入部の理由。

 

まとまりのない寄せ集めの集団が次第に一致団結し、勝つ事の喜びに目覚めていくさまがコメディタッチの演出で巧みに描かれる。部員それぞれの性格、個性の描写も見事で、中でも緊張すると腹痛を起こし土俵上で尻を押さえて必死に耐える竹中直人の演技は絶品。大手映画会社の助監督経験がない周防正行がオリジナルでこの脚本を書き、コメディ映画のベテラン監督のような達者な演出を披露し、ウェルメイドな上質の作品に仕上げているのも驚異。1992年キネマ旬報ベストテン第1位。

☆☆☆☆☆(☆5が満点)