『ふがいない僕は空を見た』(タナダユキ監督        脚本向井康介 原作窪美澄 2012年) | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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『ふがいない僕は空を見た』2012年

 

監督・タナダユキ 原作・窪 美澄 脚本・向井康介 

出演・田畑智子、永山絢斗、窪田正孝、原田美枝子、山中祟

銀粉蝶、小篠恵奈、田中美晴、梶原阿貴、三浦貴大、山本浩司

吉田羊、藤原よしこ、峯村リエ 他。

 

相米慎二の「お引越し」(1993年)で映画デビューした田畑智子がキャリアを重ね、到頭こういう役を演じる所まで行き着いたか、というのが初めて見たときの印象だった。数年ぶりに再見した。劇伴をほとんど使わず、現実音のみの演出で、向井康介の脚本もリアルな台詞を使い現実感を生みだしている。

 

子供が出来ないことを義母に厳しく責められ、現実から逃れるためアニメキャラのコスプレに嵌まる里美(田畑智子)。

アニメ同人誌即売会で知り合った高校生の卓巳(永山絢斗)と

里美の自宅でコスプレ衣装を着たセックスが始まる。

しばらくして卓巳に別れを切り出され一旦別れるが、里美を忘れられない卓巳が里美のマンションを訪ねて関係が再燃。

 

一方、卓巳の高校の友人良太(窪田正孝)は団地で認知症の祖母の世話をし、夜はコンビニ、朝は新聞配達のアルバイト。

卓巳の母(原田美枝子)に弁当を作って貰ったりするのが、憐れみを受けているようで鬱陶しい。ある日、卓巳と里美のコスプレセックスのコピー写真が校内にバラまかれていて・・・

 

1本の映画が前半(卓巳と里美)と後半(良太)のテーマに分かれ、終盤にそれを一つのテーマ(人が自分らしく生きることの困難さとそのような人生への共感)にまとめようとしたのは成功したのだろうか。オムニバス映画を観たようなこの構成にやや違和感を覚えた。娯楽映画を見慣れた人にはこの映画は作り手が満足することが優先で、観客目線という視点が欠けた映画に見えたのではないか。

キネマ旬報ベストテン第7位。

毎日映画コンクール女優主演賞、田畑智子。

(☆☆☆☆)(☆5が満点)

 

追記 「今週観た映画」は終了し、今後は一作品毎に簡単な感想を書いて行く予定です。