『櫻の園』『野獣死すべし』『アポロンの地獄』『金曜日の寝室』『パンツの穴』他、2021・1月 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

作品評価は観客視点の満足度を基準にしています。

(☆5が満点 ★が0.5点) 鑑賞作品は製作年度の古い作品から紹介しています。評価が違う際はご容赦ください。 

 

 

『赤西蠣太』(1936年 原作志賀直哉 監督脚本伊丹万作) 江戸時代、陰謀派の秘密を探りに国元から派遣された密偵赤西蠣太((片岡千恵蔵)をめぐるお家騒動。原作者の志賀直哉が絶賛した作品。☆☆☆☆ 

 

 

『鴛鴦(おしどり)歌合戦』(1939年 監督マキノ正博(マキノ雅弘) 脚本江戸川浩二(マキノ雅弘)) 

マキノ正博のオペレッタ時代劇。熱狂的ファンがいることで知られている作品。戦時下の日本でこんなに楽天的なオペレッタ風ミュージカル時代劇が作られていたのは驚異。片岡千恵蔵が病気のため予定していた作品を変更し急遽つくられたため、千恵蔵の出演シーンは長屋内と広場のカットを2時間ほどで撮ったという。ディック・ミネのバカ殿様。☆☆☆☆☆ 

 

 

『清水港代参夢道中』(1940年 原作小国英雄 監督マキノ正博 脚本小国英雄) 

舞台の『森の石松』の演出をしていた演出家(片岡千恵蔵)が、江戸時代にタイムスリップするマキノ正博のコメディ時代劇。

広沢虎造の名調子、轟夕起子の美しさ。☆☆☆☆☆ 

 

 

『野獣死すべし』(1959年 原作大藪春彦 監督須川栄三 脚本白坂依志夫) 

アプレ世代の秀才大学院生、伊達邦彦(仲代達矢)の狂気の殺人哲学。金のために唄い踊る花売りばあさん(三好栄子)が憐れ。仲代達矢出演作のベスト5には入れたい作品。☆☆☆☆☆ 

 

 

『ブワナ・トシの歌』(1965年 原作片寄俊秀 

監督羽仁進 脚本清水邦夫・羽仁進) 

東アフリカのタンガニーカ(現タンザニア)に学術調査隊のプレハブ小屋を建てるためにやって来た日本人技師(渥美清)と小屋を建てるために雇われた現地人の間に起こる軋轢と和解。現地人と日本人技師の間で言葉や気質の違いから起こる問題がリアルに描かれる。寅さんではない渥美清が見れるのも魅力。☆☆☆☆☆

 

 

 

『大魔神』(1966年 監督安田公義 脚本吉田哲郎) 

『大魔神』の元ネタで20年近く前に観た泥人形が生命を与えられ、不思議なたたずまいで動きまわるサイレント映画『巨人ゴーレム』(1920年)の衝撃が大きかったせいか、日本の『大魔神』はやや物足りなかった。☆☆☆☆ 

 

 

『大魔神怒る』(1966年 監督三隈研次 脚本吉田哲郎) シリーズ第2作。『十戒』を彷彿とさせる見せ場があるこちらの方にストーリー、ヒロイン共に魅力を感じた。☆☆☆☆☆ 

 

 

『アポロンの地獄』(1967年 監督ピエル・パオロ・パゾリーニ) ギリシャ神話の「オイディプス王」伝説を基に、古代テーベ~現代へとワープするパゾリーニの実体験を投影させたという問題作。『テオレマ』『王女メディア』までは付いて行けたが、『豚小屋』『ソドムの市』となると・・・

暗闇の中のスキャンダラスなパゾリーニの死。☆☆☆☆☆​​​​​​ 

 

 

『金曜日の寝室』(1978年 原作阿部牧郎 監督小沼勝 脚本桂千穂・下飯坂菊馬) 

<金曜日の寝室>で何が起きたのか。真犯人は誰なのか。

主人公の男優が「新宿そだち」の大木英夫かと思った・・・

小川亜佐美のベッドシーンがあれば更に良かったが。☆☆☆★

 

 

 

『卍』(1983年 原作谷崎潤一郎 監督横山博人 脚本馬場当) 横山博人のデビュー作『純』は意欲作でその後に期待していたが、自前のプロダクションで製作したのが『卍』とは、やや意外(期待外れ)だった。樋口可南子と高瀬春奈の裸は堪能できるが・・・ ☆☆☆★ 

 

 

『パンツの穴』(1984年 監督鈴木則文 脚本中本博通・茜ちゃん) 

菊池桃子芸能界デビュー作。中高生役が多数エキストラ出演したが、『パンツの穴』という題名では学校の撮影許可が取れない恐れがあるため、現場では全員題名をひた隠しにして『青春の日々』という映画を撮影しているとウソをついていたという。(ウィキペディアより)鈴木則文監督らしい筋の一本通った青春コメディの傑作。☆☆☆☆☆​​​​​​ 

 

 

『いつか誰かが殺される』(1984年 原作・赤川次郎 監督崔洋一 脚本・高田純)

原作がつまらないのか脚本がダメなのか、演出(監督)がダメなのか。薬師丸ひろ子や原田知世がヒロインを演じてもこの内容では厳しそう。渡辺典子は作品に恵まれなかった?☆☆☆★ 

 

 

『パンツの穴 花柄畑でインプット』(1985年 監督小平裕 脚本掛札昌裕 ) 

5万8千人以上のヒロイン応募者の中から菊池桃子にソックリという理由で志村香が二代目ヒロインに選ばれたそうだ。菊池桃子版の『パンツの穴』は大ヒットだったが、こちらはコケてしまったらしい。映画は掛札脚本小平演出の軽快なテンポで進み、

桃子・則文版に見劣りしない面白さ。さすが東映。☆☆☆☆☆ 

 

 

『櫻の園』(1990年 原作吉田秋生 監督中原俊 脚本じんのひろあき) 

私立の女子高校櫻華学園の創立記念日に毎年恒例で行われている演劇部による『桜の園』の上演会。当日の朝、集まった女子部員たちに告げられる突然の上演中止の情報。女子高演劇部の内情、部員たちの本音がリアルな台詞で描写される中原俊の名作。

上田耕一は放送の声だけで分かったが、その他の出演者ですぐに名前が出てきたのはつみきみほだけ(演劇部員22人はオーディションで選考)。中島ひろ子、白島靖代は後で調べて名前と顔が一致。南原宏治の高校教師。女子高校生と演劇好きには垂涎の永久保存映画。☆☆☆☆☆ 

 

 

『お引越し』(1993年 原作ひこ・田中 監督相米慎二 脚本奥寺佐渡子・小此木聡)

親の離婚が小学生の子供に与える影響。桜田淳子の関西弁。

言った方は忘れていても、言われた方は忘れない言葉の罪ふかさ。みんな悩んで大きくなった。いびつな三角形のダイニングテーブルを初めて見た。田畑智子のデビュー作。☆☆☆☆☆

 

 

 

 

『午後の遺言状』(原作監督脚本・新藤兼人)

 日本映画界の巨人新藤兼人の後期を代表する一本。

居ながらにして軽井沢に別荘をもった気分が味わえる。

認知症の元舞台女優を演じる朝霧鏡子の数十年振りの映画出演も見どころ。乙羽信子の遺作。☆☆☆☆☆

 

 

 

 

『どんてん生活』(2001年 監督山下敦弘 脚本向井康介・山下敦弘)

 パチンコ店の開店前に知り合った男(山本浩司)に誘われて、裏ビデオのダビングをやることになったプータローの曇天生活。山下敦弘の大阪芸大の卒業制作作品。目的もなく生きる若者の曇った日常生活がリアルに淡々と描かれる。

『リアリズムの宿』に繋がる山下リアリズム。☆☆☆☆ 

 

 

『パッセンジャーズ』(2008年 監督ロドリゴ・ガルシア) 映画を観ての感じ方受け止め方は人によって違うので、この作品を○○○○○○○のパクりとか観る価値がないとは言い切れないが、才能ある監督なら同じ脚本、出演者でもっと面白い作品を作れたのではないだろうか。☆☆☆★ 

 

 

『太陽』(2016年 原作前川知大 監督入江悠 脚本前川知大・入江悠)

21世紀初頭、ウイルスにより人類の大半が死滅、かろうじて生き残った人類は二つに分かれて暮らしていた(映画冒頭のテロップ)。快適で便利な生活を追い求める人類の一群と自然の恩恵に感謝し不便さや非快適である生活を受け入れようとする人類の一群。そこに共存の道を見い出すことは可能なのか。

今日的なテーマに挑む作り手の意欲は感じるが、映画表現としては空回りしているような印象を受ける。入江悠は『SR サイタマノラッパー』3部作以来意欲的な作品を撮り続けているが、

観客が見て楽しめる娯楽性という意味ではむしろ後退しているように思えてならない。☆☆☆★ 

 

 

『セトウツミ』(2016年 原作此元和津也 監督大森立嗣 脚本・宮崎大・大森立嗣) 

川べりの石段に腰をおろしてただしゃべるだけの青春。

「どいつもこいつも走りまわって汗かかなあかんのか。

何かクリエイティブなことせなあかんのか。

この川でヒマを潰すだけの青春があってもええちゃうんか」

池松壮亮と菅田将暉の絶妙な掛け合い。☆☆☆☆☆