『夜のピクニック』『吉原炎上』『ストロベリーショートケイクス』ほか、8月の映画鑑賞記録2020年 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 7月27日以降に観た映画の備忘録的感想と星取りです。

個人的な感想なので評価や星取りに信憑性はありません。

評価が違う際はご容赦ください。(☆5が満点) 

 

『夜のピクニック』(監督・長澤雅彦 脚本・三澤慶子・長澤雅彦 2006年) 

北高3年の甲田貴子(多部未華子)は今年の「歩行祭」に参加するにあたり、ある決意を胸に秘めていた。それはクラスメートの西脇融(石田卓也)と話をすること。この3年間一度も話すことがなかった二人にはある秘密があった。高校生を主人公にした映画はこれまでも数あれど、24時間で80キロを歩くという恒例の学校行事をストーリーの軸にした作品は初めてだろう。原作者恩田陸の母校水戸第一高校の伝統行事「歩く会」がベースになっていて、原作者の実体験・実感が込められているのが感じられる。長澤監督はディレクターズカンパニーで井筒和幸監督の助監督などをしていたそうだが、達者な演出。ドラマチックな出来事は何もない、ごく普通の等身大の高校生の「歩行祭」という特別な行事の中で、彼らにとって一生モノの思い出として残るであろう「歩行祭」という「祭り」。中心になる出演者も当時10代後半か20代の初めで違和感がない。貫地谷しほりと柄本佑がコメディリリーフ的な役割を巧みに演じている。(☆☆☆☆) 

 

「ストロベリーショートケイクス」(矢崎仁司監督・狗飼恭子脚本2006年) 

都会で生きる4人の女性を主人公にした都市生活女性ドラマ。

デリヘルの電話番をしている恋に恋する池脇千鶴、好きな元同級生に本心が言えずいつも仮の自分を装うデリヘル嬢中村優子、

恋人との関係で悩むOL中越典子、編集者に理解されず人知れず苦しむイラストレーター岩瀬塔子、それぞれがこの都会でもがきながら自分の居場所を探している。魚喃キリコ(ななんキリコ)の原作を女性シナリオライターが書いているのでリアリティがある。(☆☆☆☆★) 

 

「おさな妻の告白 衝撃ショック」(西村昭五郎監督・いどあきお脚本1973年) 

監督も脚本も誰なのか知らずに見始めて、これはなかなか凄いと思った。ラストのスタッフクレジットを見ていどあきおが脚本を書いていると知って納得。監督は田中登かと思ったが、西村昭五郎と知ってこれも納得。片桐夕子はその後にっかつ以外での出演作も多いが、ロマンポルノ以外でも十分やっていける演技力を感じた。(☆☆☆☆) 

 

「ラストキャバレー」(金子修介監督・じんのあきひろ脚本1988年) 

1988年といえばバブルの真只中でロマンポルノ終焉の頃。

経営するキャバレーが都市開発の立ち退きで閉店することになり、元従業員だったホステスを集めて最後のパーティが開かれる。キャバレー経営者の父と高校生の娘の姿をそれぞれの視点から深刻になりすぎず、金子修介らしいカラっとしたセンスで描く。主演かとうみゆき、大地康雄、高樹陽子。(☆☆☆☆) 

 

「吉原炎上」(五社英雄監督・中島貞夫脚本・笠原和夫脚色・構成1987年) 

吉原遊郭で生きる遊女たちを、春の章(二宮さよ子)、夏の章(藤真利子)、秋の章(西川峰子・現仁支川峰子)、冬の章(かたせ梨乃)という構成で描き、それらをつなぐ中心になるのが、名取裕子と根津甚八の出会いと別れ。脚色・構成の笠原和夫によれば「五社は脚本にあるドラマ性が把握できていない。どうしても画から入る。画の方では刺激的なものを作る人なんだけど、その画が全体のドラマの中でどれくらいの価値があるのかという解釈ができていない。一番ポイントにしていたのは根津の演じた男。ドラマ全体の流れを整理してくれていない。必要のないシーンで大芝居をさせすぎ」と五社演出に対する不満を述べている。(WIKIPEDIAより) 一観客の立場で言えば五社英雄監督に溝口健二のような深い人間洞察の劇は望んでいないので、これだけ女優の魅力を引き出してくれれば、ドラマの部分の不満を差し引いても十分お釣りがくるのではないだろうか。(☆☆☆☆☆) 

 

「鬼龍院花子の生涯」(五社英雄監督・高田宏治脚本 1982年) 

こちらは夏目雅子の代表作だが、笠原氏が言う五社演出の「必要のないシーンで大芝居をさせすぎる」所が仲代達矢の演技に顕著に出てしまいマイナスに作用しているのを感じた。演劇的な芝居というのだろうか、どの芝居もオーバーで山本圭の演技も「若者たち」を見ているようだった。夏目雅子の少女時代を演じている仙道敦子が抜群にいい。(☆☆☆☆) 

 

「男はつらいよ 寅次郎恋歌」(山田洋次監督・朝間義隆・山田洋次脚本 1971年) 

シリーズ第8作。柴又に越してきて喫茶店をはじめた親子の面倒を見てやる寅次郎だったが、金の面倒だけは寅さんもどうにもならず。(☆☆☆☆) 

 

「男はつらいよ 寅次郎夢枕」(山田洋次監督・朝間義隆・山田洋次脚本 1972年) 

シリーズ第10作。幼馴染みのお千代さん(八千草薫)と再会し、「トラさんとなら一緒になってもいい」と言われた寅次郎だったが、"とらや"に下宿中の大学の先生もお千代さんにぞっこんで。世の中何かとうまくいかぬもの。(☆☆☆☆) 

 

「日本侠客伝 浪花篇」(マキノ雅弘監督・笠原和夫・野上龍雄・村尾昭脚本1965年) 

シリーズ第2作。死んだ弟の遺骨をもらうため大阪港にやってきた健さん。そこには沖仲士たちをピンハネする新沢組(大友柳太朗)がいて・・・。悪の頭領が大友柳太朗でその配下に天津敏、関山耕司。長門裕之と恋仲の女郎に八千草薫。健さんを恋い慕う浪花女に入江若葉。沖仲士の面々が個性的で台詞のやり取りの面白さは笠原・野上・村尾の脚本トリオの功績。それを生かすマキノ演出の上手さ。派手な殴り込みシーンはなくても面白い「侠客伝」。ラストに藤山寛美を持ってくるのが憎い。(☆☆☆☆☆) 

 

「愛の嵐」(リリアーナ・カヴァーニ監督1974年) 

第二次大戦中ナチスの親衛隊将校だった男(ダーク・ボガード)が寵愛していた少女(シャーロット・ランプリング)と十数年後ウィーンのホテルで再会し、倒錯的な愛が再燃する。シャーロット・ランプリングの演技が見もの。(☆☆☆☆☆) 

 

「紳士は金髪がお好き」(ハワード・ホークス監督1953年) 難しい理屈は抜きにマリリン・モンローとジェーン・ラッセルの踊りと演技を楽しむミュージカル。(☆☆☆☆) 

 

「マンハッタンの哀愁」(マルセル・カルネ監督1965年) パリで突然妻に別れを切り出された男(モーリス・ロネ)と外交官の夫と別れた女(アニー・ジラルド)が夜のマンハッタンで出会って・・・。ジョルジュ・シムノン原作。マル・ウォルドロン音楽。ロバート・デニーロが映画初出演。カルネの繊細な心理描写の演出。(☆☆☆☆)