「仁義なき戦い 代理戦争」深作欣二監督 1973年 | レイモン大和屋の <シネ!ブラボー>

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映画感想、読書感想を備忘録として書いてます。
三浦しをん氏のエッセイを愛読しています。
記憶に残る映画と1本でも多く出会えることを願っています。

 シリーズ第3作目。「代理戦争」を特徴づける要素に絞って簡単な感想を。題名が「代理戦争」となっているように、関西の明石組に神和会という二大巨大組織に広島、呉、山口の暴力団組織なども絡み、抗争関係が複雑な様相を呈している。組同士の抗争図、人間関係図が複雑で、広島の村岡組、打本組、呉の山守組(金子信雄)、広能組(菅原文太)の勢力争いが1,2度観ただけでは容易に理解出来ない。シリーズの中で一番複雑な抗争関係だ。山守組と対立する打本組(加藤武)、広能組(菅原文太)と最終的に袂を分かつ村岡組若頭武田(小林旭)の登場がこの作品を大いに盛り上げる。山守にさんざんコケにされて悔しがる加藤武の泣きの演技が絶品。日活の大スター小林旭にしか出せない雰囲気と風格。チンピラ工員から広能の小学校時代の先生(汐路章)の紹介で広能組組員になる倉元猛(渡瀬恒彦)と母親(荒木雅子)のエピソードがやるせない。広能組のボンクラ組員西条勝治(川谷拓三)とその女富江(池玲子)の関係、裏切り。金子信雄、遠藤太津朗、山本麟一、菅原文太、小林旭、成田三樹夫、山城新伍、加藤武、室田日出男、田中邦衛が一同に会すクラブのシーンは壮観。茨城なまりの広島弁、中村英子が花を添える。群像劇としての単なる役の割り振りを超えて、生身の人間臭さが息づいている。そこに醸し出されるある種のユーモアと鉄砲玉になって死んで行く若者の哀れさ。川谷拓三が演じた西条勝治は当初荒木一郎が演じる予定だった。(経緯、事情は色々書かれている)。川谷拓三の熱演は良かったが、池玲子とのバランスにやや無理を感じた。(荒木一郎で見たかった)。いずれにせよ、1973年の1年という間に「仁義なき戦い」シリーズが3作公開されたのは、今の映画製作の常識から考えると驚異としか言いようがない。☆☆☆☆★(☆5が満点)