JCB、ロシア業務停止 カード決済制限、ビザなどに同調
ロシアのウクライナ侵攻を受け、国際ブランドを持つ日本のクレジットカード大手ジェーシービー(JCB)は8日、ロシアでの業務を停止すると発表した。-
時事通信

 

アメリカの大手クレジッカード会社の「ビザ」や「マスターカード」などと同調してJCBもロシアでの業務停止をア発表。日本のメディアだと日本も欧米企業に歩調をあわせているとか、ロシアへの制裁に民間企業も参戦みたいな報道のされ方をしているが、これは単に債権回収の問題である。

 

次のレートはロシアルーブルと円の為替レートであるが、ウクライナ侵攻後に暴落しており、デフォルトリスクも高まっている。ルーブル建ての売掛債権が回収できなくなる可能性があり、デフォルトまでいかなくともルーブルで返済されても、返済直後にさらに暴落して価値がなくなっている可能性がある。企業がロシア事業を停止しているのはこの債権の回収リスクの高まりゆえである。ただ義憤にかられて企業が事業を停止しているわけではない(ウクライナ問題への批判の意図もないわけではないと思うが)。ここらへんの悪さしている奴を懲らしめるという水戸黄門的な単純な発想は平和ボケの日本人らしい。

※楽天証券のスクリーンショット(LINK

 

プーチン大統領は、クリミア占領ではウクライナがすぐに降伏したので、今回もすぐに折れると思ったら、かなり抵抗してきたので焦っていると報道されている。計画も遅れているし、欧米・日本等からの経済制裁も強力である。上記の通りルーブルも暴落している。ロシアは欧米諸国や日本を非友好国に指定したが(LINK)、これはドルでの返済だと債務不履行に陥るので、ルーブルで返済できるようにするための措置である。ロシアの政府や自治体・企業などは、指定された国・地域の債権者に対して、ロシアのルーブルによる債務返済が可能になるので、これでデフォルトを回避するつもりである。ただロシア経済の延命にしかならない。

 

ただプーチンは振り上げた拳を下ろす気配がない。原発も攻撃しているが、これは明らかなジュネーブ条約違反である。プーチンもそんなことは百も承知のはずだが(ちなみに、プーチンは法学部卒である)、それでも原発を攻撃するのは、戦略的に電力供給を止めてウクライナ国民が情報を得る手段を遮断し、かつ、暗闇にすることで恐怖を煽って心理的な負荷をかけて屈服させるためとの分析がある。しかし、プーチンは原発を切り札にする気だと思う。つまり、原発事故をウクライナ国内で複数起こせば、ウクライナは大半の地域が放射能汚染されて住めなくなる。放射能汚染によって巨大な緩衝地帯を作り出す気かもしれない。

 

フィンランドとスウェーデンもNATO加盟に転じたが(LINK)、おそらく国境を接するフィンランドはロシアからの侵攻を受けるかもしれない。ボスニア湾があるのでスウェーデンまでは侵攻する可能性は低いと思われる。北欧は平和なイメージだが、もともとフィンランドはスウェーデン王国の一部で、一部ロシアに領土が割譲などされ、独立を果たしたのは20世紀になってからという新しい国だ。国土面積こそ日本の9割ほどであるが、人口550万と兵庫県程度の人口規模の小国だ。Global Firepowerの2022 Military Strength Ranking によると、ロシアは第2位の軍事力であるが、フィンランドは第59位だから侵攻されれば一捻りである。ウクライナは世界22位だが、ロシアにあっという間に防空設備を破壊された ― ちなみに、日本は世界第5位の軍事力である。

 

悲観的なケースだと、ウクライナは核兵器なり原発事故で放射能汚染されて、その後、フィンランドも軍事侵攻にあう可能性がある。一方で、楽観的ケースではプーチンが失脚し、西側寄りの政権が誕生し、ロシアが西側に寝返ることである。すでにロシア経済は疲弊しているので、西側寄りの政権が誕生すれば、北方領土も解決するかもしれない。そうした場合、困るのは中国であり、楽観的ケースの場合、不安定化の最大要素は中国になる。正直、まだウクライナ問題がどうなるか分からない中でどうこういっても仕方がないが、ウクライナ問題は長期化しそうである。両者引かないが、たぶんロシアはもはや毒皿主義で破れかぶれなので核兵器や原発の爆破もあり得ると思う。どちらにしろ割りを食うのはウクライナだ。緩衝地帯の悲劇である。

 

 

フランスの人口学者のエマニュエル・トッドの「老人支配国家 日本の危機」を読了。やたら日本での出版が多いが、歴史人口学の速水融との交流等があったこともあり、日本への関心が高いようだ。何かのインタビュー記事で柳田國男の「蝸牛考」に言及していた。

 

本書は「文藝春秋」などの雑誌に発表された評論やインタビュー記事などをまとめたものであり、どこかで既視感ある話が多いが、まとめてエマニュエル・トッドの考えを読めるという点では良い本である(最近は過去の焼き直し本が多く乱造感も否めないが)。

 

本書の主な章立ては次の通りである。

I 老人支配と日本の危機
II アングロサクソンのダイナミクス
III 「ドイツ帝国」と化したEU
IV 「家族」という日本の病

 

あらためて読んでみると彼の先見性はすごいと思う。ソ連崩壊、アラブの春、トランプの勝利、ブレグジットなどを予見してきたが、本書では米国の影響力の低下と日本の核保有についても主張している。ちょうどウクライナ危機で、米国の及び腰と日本の核保有がホットな話題になりつつある昨今を考えると、トッドの指摘は恐ろしいほどに的中する。随所に彼の鋭い知見が散りばめられており、トッド初心者にも一読をおすすめしたい一冊である。大学時代に彼の講演会(2011年)にいってからずっと興味を持ってきたが(LINK)、フランス最高の知性だと思う。ちなみに、私の大学院時代の研究も彼の人口学的知見にインスパイアされた部分がある。

 

すでに何度も繰り返されているが、彼の予見で日本人にとっての朗報は、中国は覇権国にはならないという。教育水準・少子高齢化などの人口指標をみると、とてもアメリカに伍するまでにはならないという。実際、2100年には中国の人口は5~7億人程度に減るとみられ、一時的にアメリカを追い抜いたとしても、再度転落する。

 

それにしてもトッドはトランプ当選を予見していたが、それは死亡率から読み解いたという。中年白人人口の死亡率の上昇している点に着目し、グローバル経済で米国内の中年白人の仕事が競争的な環境になり、さらに仕事も奪われたりなどしていることが影響しているのだという。彼らにとってトランプのような自国経済中心主義は魅力的に映るのだという。そして、トランプを批判するヒラリー筆頭の民主党は共和党の批判で自己定義しているが、あまりにも空虚だと思う。民主党は黒人重視などを唱えるが、民主党の経済政策はグローバル化を志向し、黒人層の仕事を奪うものであり、実は相いれない。トランプを人種差別主義者と批判するが、彼が批判するのはラティーノであって、他の人種は目立って批判しおらず、逆に彼の向上などの雇用を米国に戻す政策は黒人にメリットがあった。差別主義者・自国中心主義とトランプを批判したが、米国内部の利害関係は複雑に絡んでおり、ヒラリー当選を主張していたメディアはあまりにも図式を単純化し過ぎていたという。彼の鋭い考察には恐れ入る。

 

彼の見方というのは人口や家族形態が人々の意識をある程度規定しており、それによって社会意識が形成されるというものである。例えば、日本のように「長子相続」だった直系社会では、長男が家督を相続するので、生まれながらに見えざる序列があるという意識が刷り込まれ、人種的優越性などを主張しやすいという(日本・ドイツ・ユダヤ社会等)。逆に遺産を平等に分配する平等主義核家族のフランスでは「平等」などを重んじる傾向が強い。息子はすべて親元に残り、大家族を作る外婚制共同体家族は、親は権威的だが子供は平等に扱われる。外婚制共同体家族の区には中国・ロシア・ベトナムであるが、共産主義・社会主義が馴染みやすいのはそのためだ。

 

彼はこの家族形態というベースに加えて、人口動態(識字率・出生率・年代別死亡率)などの指標を組み合わせ、さらに膨大な歴史などの知識をもとに思考を行っている。その思考の指摘内容は恐ろしいほどに当たる。EUにおけるドイツ問題・ユーロ問題・中国の衰退なども遠くない将来に現実化しそうだ。

「今さら」とはいえ、この国の貧しい現状を改めて痛感する。3日の経済財政諮問会議で、内閣府が衝撃データを提出した。35歳から54歳の「働き盛り」世帯の所得がナント、100万円以上も減っていたのだ。- 日刊ゲンダイ

 

ネット記事だが、言及されている内閣府の資料をみると結構衝撃的だったので記事にした。

※ 資料リンク:令和4年第2回経済財政諮問会議

 

資料4-1「我が国の所得・就業構造について」の「年代別の世帯・所得分布(再分配後)」のデータをみるとかなり驚く。各年代の世帯において所得の大きな低下がみられるのだ。ちなみにいうと、1994年は消費税は3%だったが、現在では消費税は10%であるし、社会保険料も現在よりも安かったし、大学の学費も安かったことを考えると、貧困化のインパクトは額面以上である。

 

次のデータは、各年代別の世帯における年間所得の中央値である。中央値は一番上と一番下から数えてちょうど真ん中にくる値である。25~34歳のレンジだと1994年では25~34歳の半数の世帯が405万円以上の所得だったが、2019年には半数の世帯が351万円未満に落ち込んでいる。

・25~34歳:405万円(1994) ⇒ 351万円(2019)

・35~44歳:569万円(1994) ⇒ 465万円(2019)

・45~54歳:697万円(1994) ⇒ 513万円(2019)

・55~64歳:554万円(1994) ⇒ 472万円(2019)

・65歳以上:317万円(1994) ⇒ 291万円(2019)

 

若年層だと年収500万円は高給取りと言われるほどだそうだが、上記データを見ると、もはや中央値が351万円なので、たしかに年収500万は高給取りという意識が芽生えても不思議ではない。ネット記事だと若者の中では年収400万円すら高給取りと論じる記事もヒットする(LINK1LINK2)。なお、世帯所得なので、夫婦で共働きで各年収200万なら世帯所得が400万円となるので、上記データは結婚している人も含めてのデータとしてみると、単身世帯に限定すれば、さらに低い水準である。

 

実際、「年代別の世帯・所得分布(再分配後)」の「就職氷河期世代の単身世帯・所得分布(雇用形態別・再分配前)」をみてみると、「おおむね就職氷河期世代を含む「35~44歳の単身世帯」の所得は、1994年には500万円台の所得階級の世帯が最 も多かったが、2019年には300万円台が最も多くなっている。と書かれている(下線は筆者による)。独身貴族といわれたのは昔の話である。

 

全体的に所得水準が低下しているが、そんな中、早大の橋本健二教授が「アンダークラス ― 新たな下層階級の出現」という本で、アンダークラス(非正規労働者のうち、パート主婦、専門・管理職以外の人々。日本には約930万人におり、平均年収186万円の層。)の存在を指摘している。非正規雇用で不安定かつ低賃金にあぐねている層である。依然として世界第3位の経済大国とはいえ、日本の内部の貧困化は想像以上に進行している。

 

すでに新入社員の年収では韓国・香港・シンガポールに負け始めているが(東京限定でみるとそうでもないが)、アジアで抜きんでた経済大国だったのは完全に昔話になりつつある。一方で日本がもはや途上国だとかいう極論も一部で聞かれるが、これはナンセンスだ。2000年以降のノーベル賞受賞者数(自然科学分野)だと米国に次ぐ世界第2位で、経済力は世界第3位、軍事力は世界6位であり、一人当たりGDPも英国・フランスなどと変わらない水準で、一人当たりGDP3万ドル超で人口1憶を超す国は依然として米国と日本しかない。ピークを過ぎた老衰国家であるのは事実であるが、そこまでは落ちぶれたかというとそうでもないと思う。フランス・イギリス・ドイツなどの大国も様々な問題を抱えているからだ。

 

日本は経済大国・技術大国から極東にあるそこそこ豊かな島国への回帰という緩やかな展開期にあるのだと思う。たしかに経済格差は拡大するし、世界経済での存在感は下がるだろうが、北欧やスイスのようにひっそりと豊かな国を目指せばいいと思う。アンガス・マディソンの研究では日本のGDPの世界に占める割合は概ね2~3%だったから、20世紀後半からバブル崩壊までが異常値だったのである。

 

 

NFTが最近のキーワードになってきている。まだ黎明期であるが、これから大きく飛躍するだろう。NFTとは、”Non-Fungible Token”であり、ブロックチェーンを用いた非代替性トークンのことである。ブロックチェーンといえば、暗号資産(仮想通貨)を連想する人も多いと思うが、ブロックチェーン技術は二当事者間の取引を改竄されずに、恒久的な方法で記録することができる公開の分散型台帳であり、暗号資産(仮想通貨)はその技術を応用したものである。

 

NFTを分かりやすく言えば、いままではネット上のデータは容易にコピーできたところ、オリジナルのデータを、これはオリジナルですよと証明してくれるものである。これを用いると、例えばデジタルのアートをつくったとしよう。いままではすぐにコピーされてしまい、どれがオリジナルか分からなくなるが、NFT技術があれば、これがオリジナルデータであると証明ができるのだ。

 

本書はそんなNFTのビジネスや法的問題・会計問題についてオムニバス形式で各分野の専門家が執筆した本である。結構、専門的な話(私にとっては・・・)もあって、細かい議論は読み飛ばしてしまったが、NFTの現在位置を知るには良本である。まだ新しい技術なのでビジネスの可能性は大きいが、それだけ法的・会計上の問題も多いようだ。

 

最近ではFacebookがメタに社名変更したが、これはメタバースのメタである。メタバース界でもNFTは利用されている。メタバース内でのファッションアイテムや土地の売買ではNFT技術が用いられている。正直、VR空間がどれだけ普及するか分からないが、スポーツ・ゲームなどではそこそこ広がると思う。どうでもいいが、最近は本の解説動画もあるので、クイックに学べるので本当に便利な世の中になった。

 

 

 

 

この前、先月受験したビジネスコンプライアンス検定上級に無事に合格した。こちら企業のコンプライアンスに関する知識・活用力を測る試験である。BASIC・初級・上級があるが、私はBASIC・初級はすっ飛ばして上級を受験した(BASICは合否ではなく得点によってレベル評価が測定される)。

 

【合格率と受験方法】

合格率は初級・上級の合算で55%となっているが、おそらく合格率は、初級が80%で、上級が30%程度ではないかと思う。ちなみに、自宅でオンライン受験であるが、カメラ・音声がONで、PC画面もスマホで撮影しながら受験なので不正は不可能になっている。

 

【概要】

上級はコンプライアンスの基礎知識に、民法・労働法・独占禁止法・個人情報保護法・会社法などの法令問題など、かなり幅広い。毎度同じような論点が多いので過去問3年分やっておけば大丈夫であるが、法律問題は細かい知識がいるので(しかも判例ベースだったり)、法学の素養がない人がいきなり上級を受けるのはかなり大変だと思う。択一のみであれば、コンプライアンス知識の問題は回答しやすいので、合格点を取るという点ではビジネス実務法務検定2級より簡単ぐらいかもだが、1000文字の論述があるので、トータルでビジネス実務法務検定2級レベルかな?(論述に不慣れな人からするとやや難だと思う)。知識だけではなく、事例問題もあるので、結構実践的な内容であり、良いと思う。

 

【得点率について】

採点方法が素点ではなく、各パートの得点率(正答割合)になっており、各パートの得点率の平均で合否が決まる(70%以上の得点率で合格)。例えば大問1が得点率100%、大問2が得点率50%だと、平均して75%が最終的な得点率となるようである。

 

【論述について】

択一については過去問をやり込めば合格水準は超えると思うが、過去の受験体験談をみると、論述がダメで落ちている人が多いようだし、実際、論述パートについては過去問にも特に解答例がないので対策が難しい(過去問ではここに問題があると単に論点を指摘しているだけ)。ただ公式テキストの「企業法とコンプライアンス」のフルセットコンプライアンスに準じて書けば高得点になる(と思う)。私のときは、論述で3つの問があり、1問目は大きく外したが(というか真逆のことを書いた笑)、2問目・3問目については的確にかけた(さらに2000文字も書いた)。結果的には得点率95%でほぼフルスコアあった。単に減点方式というより加点するところは加点してくれているのだと思う(問1はまるっきり間違えたが、問1の配点が5%であるわけはあるまい)。

 

【テキスト】

次が公式テキストであるが、まぁ、読み物としても面白い。各法律の概略と、実際の事例も豊富でなかなか良本。たぶん上級の論述は本書無しだとクリアは難しいと思う。フルセットコンプライアンスが何かを理解して、事例に紐づけて論述できるレベルまでもっていく必要があるので。

 

 

【受験を薦める人】

全体的にコンプライアンス関係の知識も身につくので、内部統制・監査とかリーガル系の職種の人は受けてみてよいと思う。単に職務に関係なく興味本位で受験ならBASICか初級で十分だと思う。上級は論述とか結構対策が大変である。