【注意】下記の内容は数年前のロサンゼルス州の話です。米国は州ごとに制度が違い、また制度改定も多いため、最新情報はご自身でご確認ください。
米国ロースクール(LL.M ※)を修了した新卒と昼に話していて意外なことを知った。もともと日本で法学部卒業後、その後、アメリカのロースクールを修了して米国弁護士になる方は少なからずいたのだが、最近はちょっと様子が違うらしい。新卒の彼もLL.Mを修了し、優秀なのになぜか米国の弁護士資格を持っていない。
※LL.Mは法学修士号のことで1年の履修期間で修了出来る。海外の法学部を卒業し、米国で法学の学位を取得したい人向けのコースである。本来的には米国のロースクールは3年制であり修了すればJD(法務博士号)が取得できる。
というのも、米国だと司法試験の出願基準が(州によって違うが)、(A)他国又は米国の他の州で弁護士資格を有していること、もしくは(B)出身国の司法試験受験資格を持ちかつロースクールで20単位以上の単位取得していること、になっていることが多いらしい。もともと日本は司法試験の受験資格がないので②のパターンで米国弁護士を目指す人が多かった。つまり、日本は受験資格がないので、LL.Mコースで20単位を取得できれば試験に臨めたのだ。
しかし、法科大学院制度が出来てしまい、日本では法科大学院を修了しないと司法試験受験資格が無いので、LL.Mを修了しても試験を受けられなくなってしまった。また、もともと弁理士は、①の弁護士資格(米国でいう特許専門の弁護士)に該当すると判断されていたようだが、いまでは①に該当しないと判断されているらしい。
というわけで、日本人が米国弁護士になるには、①日本で弁護士登録後にLL.M留学、②日本の法科大学院を修了し、米国でLL.Mに留学、③日本の予備試験に合格し、米国でLL.Mに留学のいずれかのパターンでしか米国弁護士になれない状況である。
日本の現状では法科大学院進学には多額の費用とリスクが伴い、おまけに司法修習生の多くは借金を抱えているわけで、LL.M留学する経済的余裕のある人は少ない。企業派遣でLL.M留学する方もいるが、レアなケースである。というわけで、米国の弁護士になるのにわざわざ日本の法科大学院にまで手間をかける人はいないので②のパターンで目指す人は相当な物好きであろう(というか、キャリア中断のリスクが甚大)。一部のエリートは、③の予備試験合格後に留学するのだろうが、予備試験は合格率3%の試験で狭き門である。米国の司法試験は7~8割が合格する試験のために、日本の予備試験をクリアするのは至難の業である。
もともと旧司法試験時代は受検者が2万人を超えてきていて、ピークでは5万人もいたが、いまでは平成29年だと6,700人しかいないという寂しい状態である。昨今の問題は、企業法務部員の人材の不足だと聞く。かつては司法試験受検者が多かったので、試験に受からない場合、企業法務に流れる人も多かったが、法科大学院という経済的参入障壁のせいで、司法試験志願者の母数が激減してしまったので、一部の大手を除いて法務部員の不足が深刻だという。企業内弁護士は激増しているが、この増加よりも、法務部員志望の激減が深刻らしい。おまけに上述のように米国弁護士資格を目指すにも、法科大学院のせいで受験資格を得にくい状況のため、日本人米国弁護士の人材供給も今後は悪化するだろう。
法科大学院という良くわからない制度は、国内の法曹志望を激減させただけではなく、日本の米国弁護士志望者にも高いハードルを突き付けて、法曹の裾野を削っていっているのである。司法試験合格率を7~8割ぐらいまで上げるか、法科大学院制度をさっさと廃止しないと、日本の法曹志願者は今後、深刻になり手がなくなるだろう。





