新型コロナウイルスの影響で売り上げが減った中小企業などを支援する国の家賃支援給付金500万円余りをだまし取ったとして、警視庁捜査2課は25日、経済産業省経済産業政策局に在籍するキャリア官僚の男2人を詐欺容疑で逮捕した。逮捕されたのは同局産業資金課係長の桜井真容疑者(28)と同局産業組織課の新井雄太郎容疑者(28)。捜査2課は同日、東京・霞が関の経産省を家宅捜索した。コロナ下で苦境に直面した企業を支援する立場の経産省の職員自らが給付金を詐取したとされる今回の事件は、同省に対する社会の厳しい批判を引き起こしそうだ。-日経新聞
キャリア官僚2名が逮捕されたことで激震が走っているが、おまけに逮捕理由が中小企業庁(経産省外局)が所管する家賃支援給付金の詐取だから悪質である。自己の所管する省庁の給付金だから支給基準などは熟知していたはずであり、専門知識を悪用した官僚の信用を失墜させる犯罪である。おまけにほぼ同時期、別件でも経産省は逮捕者を出している。こちらはキャリア官僚とは報道されていないのでノンキャリだろう。
衆議院は25日、4月に国会内の女子トイレで発生した盗撮への関与を政府職員が認めたと発表した。経済産業省は「職員が重要参考人となっていることは事実だ。警察による捜査中でありコメントは差し控えたい」としている。 経産省はこの職員の立場などは公表していないが、幹部ではないとしている。関係者によると国会に出入りする男性職員で、通行証を持っていたという。- 朝日新聞
ちなみに、覚えている人は少ないかもしれないが、2019年には元経産省キャリアは覚醒剤で有罪判決(懲役3年執行猶予5年)を受けている。経産省は7700人規模だが、これだけ数年間で逮捕者を出すのはだいぶ倫理観が下がっているのではないかと思う。当方の前職は1万人以上職員がいたが、私の在職3年余りで逮捕者はいない。
覚醒剤取締法違反(密輸、使用)などの罪に問われた経済産業省元課長補佐の西田哲也被告(28)に対し、東京地裁(三浦隆昭裁判長)は10日、懲役3年執行猶予5年(求刑・懲役3年6カ月)の判決を言い渡した。- 朝日新聞
他にも官僚の不祥事はいくらでも出てくる。単にマスコミが報道ネタとして公務員バッシングを繰り広げているので報道されやすい(マスコミの不祥事は報道されない)こともあるが、これとは別に歪んだ選民意識などがなかなか払しょくできないことも理由の一つであろう。最近では東芝の件で、経産省の影もちらつく(LINK)。東芝問題をみると、おそらく経産官僚の脳内には、いまだに官僚が正しい社会・経済を導くという古臭いエリート意識があるのだろう(実際のところ官僚主導でうまくいった例はあまりないと思われるが)。
今回話題の二人のキャリア官僚は、二人とも名門慶應高校卒のようだが、桜井容疑者はエスカレーターで慶應大に進学したようで、卒業後はメガバンクに就職し、その後、経産省に2018年入省している。一方、新井容疑者は慶應大を中退後に、東大法を経て東大法科大学院を修了し司法試験に合格して経産省に入省している。今回、給付金詐欺のために使用された会社の本店の住所は新井容疑者の自宅だったようだ。調べたところ、文京区の普通の賃貸で家賃は10万ほど(登記情報は公知なので書いてもいいが、個人の自宅も兼ねるので記載は控える)。新井容疑者は法科大学院を経て司法試験合格後の入省なので社会人になって1年程度で逮捕という計算である。今回詐取した約550万円の金額は、いままでの勉強に費やして時間と費用を考えるとペイしない金額である。
一方で、桜井容疑者は高級腕時計に高級車を所有し、月50万の家賃の千代田区のタワマンというから驚かされる。金遣いが荒いと噂だったそうだが、なぜ頭が良いはずなのに、こんな目が付くような分かりやすい散財をしたのだろう。詐取した給付金の取り分は知らないが、詐取したのは550万ぽっちなので高級車を買ったらほとんど残っていないだろう。キャリア官僚とはいえ、28歳ぐらいだと給与は残業代含めても600万前後だろうから、月50万のタワマンの家賃は到底賄えない。単に実家がお金持ちだったり、投資で儲けたのかもしれないが、今回の給付金以外の資金源から詐取している可能性もある。
昨今では官僚不人気と言われるが、そりゃそうだろうと思う。まず若手のうちは給料が安いのに、労働時間はやたら長く国会会期中の霞が関は不夜城といわれる。残業代があるからいいじゃんという声もあるだろうが、予算は決まっているので、月につけられる残業代には上限があるそうだ。これだけ過労の環境で頑張っても、官僚の不祥事もあって国民の不信感は募っており、経済的にもレピュテーション的にも見合ったリターンがない。
それゆえキャリア官僚といえば「東大法」が鉄板だったが、いまでは国家総合職試験の合格者のうち東大生の占める割合は約7人に1人まで下がっている。ちなみに、国家公務員総合職の2021年度合格者の所属大学では、第4位が岡山大、第9位が千葉大、第12位が広島大など地方中堅国立大も目立つ。東大生の合格者は256人であるが、もともと10年ほど前は400人前後が合格していたわけだから4割減である。ちなみに、大阪大は第15位、名古屋大は第16位、一橋大が第18位で最難関の大学ほどもう官僚を目指さないということだろう。いまや東大生の人気企業は大手メーカーや不動産・三大総合商社に加えて外資系コンサルが食い込んでいる。日本で最高クラスの頭脳は、グローバル企業に流出しているのだ。
今回のニュースを個人の職業倫理感の欠如に求めるのもいいが、構造的に改善しないとなかなか中央省庁の質の維持は難しいように思う。