本日は午前中にも映画「理想郷」を観たが、終演が近かったので梯子で観賞。

 

フランスの社会派サスペンス。原子力発電という国策ビジネスで陰謀が渦巻く。フランスの原子力発電会社の中国企業との提携を告発したアレバ社の労組の代表の女性(本作の主人公で実在の女性;Maureen Kearney)が、裏の勢力からの警告を受け自宅で暴行の被害にあうが、いつの間にか、それは自作自演の虚偽の告発だと冤罪をかけられてしまう。

原発という国策に潜む陰謀、政治と大企業の闇、告発者を消し去ろうとする闇の勢力、女性蔑視などのエッセンスが絡まり合い、非情なフランスの現実を描く。事件の被害者が、捜査機関の望む被害者像に該当しないからと、自作自演だと断定し、ストーリーを捏造するという構図は世界共通のようだ。それにしても本作が実話ベースというのに驚かされる - 本作は仮名を用いずにそのまま実名で映像化している。

中盤まで絶望感が持続するが、終盤で幾分は好転してよかった。特に控訴審の弁護士さんは凛々しくてとにかく力強くて格好良い。しかし、ニュースの報道の通り、アレバ社は大量解雇の憂き目にあっており、本作の主人公の懸念は現実化してしまった。

フランスの国策事業の原発とその陰謀を巡り、被害者となった女性の体験したことをファクトベースで描いた良作。イザベル・ユペールの名演が随所に光った。そして、「フクシマ」やら「カミカゼ」などの日本語が随所に聞かれたのが興味深かった。

それにしてもフランス人は自己主張が凄い。日本人だと”言外の意味”やら”忖度”やら、非言語的コミュニケーション能力が重要だが、フランスはとにかく言語化して強く主張する。この文化は日本には絶対に根付かないだろうが、個人的には見習いたいと思う。声を上げなければ消し去られてしまうからだ。日本では上映館も少ないが、多くの人に鑑賞いただきたい名作である。

 

 

★ 3.9 / 5.0