存命ピアニストとして最も評価が高い人物を挙げればアルゲリッチとポリー二は外せない。両社の共通点はショパンコンクールの優勝者という点だ。世代も似ている。しかし、ポリーニは冷静でスコアに忠実で硬質の音を持つが、アルゲリッチは情熱的で自由奔放でパワフル。方向性は逆である。しかし、この二名のピアニストが、20世紀のピアノ界において二大潮流となったことは疑いがあるまい。

ちなみに、この著者だと「ユダヤ人とクラシック音楽」を読んだ。軽いタッチで読みやすかったが、本書も二大ピアニストを軽快なタッチでまとめている。日本人のピアノ好きから論を出発し、ポリーニとアルゲリッチの足跡を追いながら世界のピアノコンクールや両名の名盤を紹介している。

 

アルゲリッチはドキュメンタリーを観て、なんとなく経歴を知っているが、改めて読むと父は外交官に持つアルゲリッチは生まれながらの天才であるが、どうやら娘を大成させようとしたパワフルパワフルマザーの存在は大きそうだ。アルゲリッチは父親違いで子供が3人いる。アルゲリッチは天才だが、家族関係は複雑で、それゆえどこか演奏にも影あるのではないかと思う。一方でショパンコンクールで優勝した際にアルトゥール・ルービンシュタインに「誰よりも上手」と褒めたたえられたポリーニは、祖父は彫刻家、ポリーニは父親も著名な建築家という家に生まれ、ショパンコンクールで優勝後はミラノ大で物理を学んだインテリである。なんとなく彼の大理石のような硬質の音には理系的な素養があると思う。

 

こんな方向性の違う2名だが日本にゆかりがあり、別府ではアルゲリッチを冠した音楽祭も開かれている。ポリーニは黒澤明・紫式部などに興味があるらしく、また日本建築が堪能できる奈良・京都などにも何度も訪れているが、建築家ゆえだろうか。

 

話は変わるが、ショパンコンクールでは日本を代表とするYAMAHA・KAWAIがコンクール用ピアノに採用されており、あとはスタインウェイである。上原彩子はチャイコフスキーコンクールで、アヴデーエワはショパンコンクールでYAMAHAを弾いて優勝を果たし、日本メーカーが二大コンクールを制覇した。実のことショパンコンクールは日本人が常連だが、優勝者はいない。ピアノ大国としてはショパンコンクールで優勝を出したいところだ。最高位は第2位に入賞した内田光子で、第3位には横山・山本・関などがおり、第4位には小山・中村などがいるが、優勝はいない。ちょうど今年はショパンコンクールイヤーになるはずだったが、残念ながらコロナの影響で延期になってしまった。実のことベトナム人ではダン・タイ・ソン、中国人ではユンディ・リ、韓国人ではチョ・ソンジンが優勝しているから、なんとなく日本人が優勝しても良さそうだが、日本人の場合は出場者が多すぎて審査員が日本的な演奏に飽きてしまうという採点上の問題もありそうだ。

 

個人的には延期されたショパンコンクールに出場すれば上位争いすると予想されるのは牛田智大・藤田真央だろう。牛田は中村紘子に見込まれており、またショパンコンクール in ASIAでは何度も優勝し、難関コンクールの前哨戦の浜松国際ピアノコンクールでは第2位だった。藤田真央ははクララハスキル国際ピアノコンクールで優勝し、チャイコフスキーコンクールで第2位に入賞した。両名ともにショパンコンクール上位入賞できる実力派である。もちろん、コンクールになんか入賞しなくても活躍できる実力はすでにある。ただもし出場するなら応援したいものだ。コンクールで様々なコンテスタントを聴いて成熟したりする場合もあろう。

 

なかなかコロナでピアノコンサートも行きにくいが、Youtubeなどで聴く音楽はやはり味気ない。生で聴くのとはやはり違う。コロナが沈静化したらまたピアノコンサートを聴きに行きたいものだ。