言語:日本語、公開:1944(昭和19)年、製作国:日本、時間:95分、監督:山本嘉次郎、出演者:大河内傳次郎、藤田進、森雅之
この記事は大分以前に書いたのですが、一部手直ししてアップしました。それにしても昔の記事はより拙く見えて、我ながら読むのが恥ずかしくなります。
昭和19年の太平洋戦争末期に製作された、南方基地での海軍航空隊3人トリオが主役となる話です。
映画の中でも飛行機が不足しているという設定なので、思ったより飛行機の出番はあまりなく、地上での人間ドラマが主体となっています。
三上、村上、川上は「サンカミ」(三神?)と呼ばれ、雷撃隊の神様と言われる同期生でした。ある日三上の駐在する南方基地の島(場所は不明)へ着任するため、村上と川上が空母に乗艦して到着しました。
プロパガンダなので、映画内容も勝ち戦で誤魔化しているのかと思ったら、案外正直に当時の戦局の雰囲気を出していたのには驚きました。
飛行機が足りず、常習化する米軍からの空襲・攻撃、物資不足など、昭和19年の末期的状況が、映画でもそのまま表現されています。国策映画なのにこれでいいのか・・・あまり戦意高揚にならなそうなんですが・・・。
空襲で壊された日本人の女性オーナー(右)の食堂へ、いつも来る馴染みの予備士官(左)が立ち寄ったところ。このおばさんの言うことが激しい。敵の捕虜が捕まったという話をしています。
士官「(米軍捕虜を)土民が寄ってぶち殺そうとしているのを、やっと止めて連れてきたんだ」
食堂のおばさん「なぜ土民に殺させてやらなんだですか!?そういうヤツ、ワシに殺させておくんなまし!ワシが殺してやりますが!」
この後おばさんは「殺させろ!」と暴れまわって手が付けられなくなります。
現地の人を「土民」と言っているのも気になります。当時はそれが普通の言葉だったのですが、今では差別用語ですからね。
捕まった米軍捕虜。昭和19年の戦時中なので本物の捕虜を使ったのでしょうか。
米軍捕虜の尋問後に話し合う士官2人。後方中央は薪を運ぶ部下の飛行士。
そんなアメリカが絶対に負ける道理はない。もし負けたら、世界の真理が逆立ちする時だ。こう言うんだ。
それなのにこっちじゃ優秀な操縦者が、飛行機がなくて薪を取っている。(画像中央、後ろ姿の人物)こんなバカなことがあるか!」
士官B「こっちが一人死んで、あっちの10人殺しゃいいんだ。それ以外にこっちの戦争に勝つ道はないよ。
敵の最大の弱点は人命を失うことだ。その弱点を一番有効に使うのが俺たちの雷撃隊よ。輸送船なり、母艦なり、こっちが一人命を捨てりゃ、たった一発の魚雷でやっつけられるんだ。そんなボロい話はないぞ」
この辺がやはり、戦時中に作られた映画だと感じました。
戦後製作の映画だったら、「もっと人命を大切にしろ」などと突っ込む士官が出てくると思います。戦後は人命が大事ですから、そのような価値観の方へ話を誘導せねば、視聴者から共感を得られません。
でも映画ではこの会話の後、そのようなフォローはなし。では特攻で逝こうという流れになってしまいます。
「サンカミ」トリオのうちの村上と川上(中央)は特攻に出撃。爆撃機の操縦桿を握り・・・
あとには参謀だった三上だけが生き残りました。
戦争の状況が末期的様相を示していることがあからさまに語られており、驚きの映画でした。
まだ東京大空襲(昭和20年3月)など、本土空襲が本格化していない時期ですが、もう日本国内にも「これは負けるのでは」という空気が蔓延していたのかもしれません。