元外交官で作家の佐藤優氏の解説です。2014年5月12日、安倍総理とイスラエルのネタニヤフ首相が「日本・イスラエル共同声明」に署名しましたが、佐藤氏はこの声明には重要な意図が隠されていることを指摘しています。
■『くにまるジャパン』5月16日放送分2〈佐藤優〉 日本・イスラエル
http://www.youtube.com/watch?v=0LYOP08wsZ4
アナウンサー:今日付けの東京新聞の佐藤優さんの本音のコラム、「日本・イスラエル共同声明」。この事がどうして大きく扱われないのかという風に、佐藤さん仰ってるんですが、日本とイスラエル共同声明、どんな事が話し合われたんですか?
佐藤:まず名前からしてもですよ、日本・イスラエル間の新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明なんて言う、「包括的パートナーシップ」って入ってるわけですよ。
包括的パートナーシップっていうのは、友達なんだけれど色んな事これからやっていきますよ、という事ですよね。ですから準同盟国位に近づいてくる。
それで、ポイント2つあって、双方はサイバーセキュリティに関する協力の必要性を確認し、両国の関係諸機関に対話を行う事への期待を表明した。
期待への表明だけども、サイバーテロ対策っていうのは実は裏があるんです。日本じゃできないの、攻撃しないから。サイバー技術、防衛技術は攻撃している国しかつかないんです。攻撃して初めてつく、そういう技術なんですよ。でも日本は専守防衛だからそれできない。そこで知恵働かした知恵者がいたんですね。
イスラエルは、例えばイランのスタンドアローン・システムの原子炉、外と繋がってないんですよ。それなんだけれども、突然遠心分離機おかしな動きをしちゃう。
これどうしてかというと、新聞報道ベースですけどね、イランの技師がヨーロッパに出た時に、イスラエルの工作員が部屋を15分はずしてコンピュータを部屋に置いている時に、コンピュータの中にウイルスを差し込んで入れちゃうわけですよ。
そしたら、USBをそこに入れて、切り離されているスタンドアローン・システムの原子炉に入れたら、感染しちゃったと。だから切り離されているコンピュータをどういうふうにして破壊するかとか、そういった技術までを含めて、世界の超トップなんですよ。
だからドイツなんかすごく怒っているわけなんですね。ドイツの機材に対して入り込んできたとか、アメリカもびっくりする位の力があるわけなんです。だからイスラエルの力をもってすると、例えば邦丸(くにまる)さん(アナウンサー)のプライベート・コンピュータの中身を覗きたいと思ったら、多分2~3時間でできると思います。
文化放送のアドレスがあるとするならば、そこの所から入って色んな事をやったりとか、或いはスノーデンさんが言っているような別のシステムでと。だからそれを逆に防御するシステムを持っているわけですよね。
それを手に入れると北朝鮮とか中国、ロシアに対して鉄壁防御が出来るわけなんです。その代わり、技術はイスラエルと共有しますからイスラエル抜けますよ。こういう事にどうも踏み込むっていう事じゃないかと僕は思うんですよ。
アナウンサー:安倍さんと、それからイスラエルのネタニヤフ首相が今週の月曜日(5月12日)ですね、東京で署名してます。
佐藤:それから防衛協力の要請を確認して、閣僚級を含む両国の防衛当局下の交流拡大で一致したと書いてあるんですが、これだけじゃどういう事かわかんないけど僕はね、無人戦闘機でイスラエルの技術得るんじゃないかと。
この無人戦闘機はアメリカのグローバルホークは値段が高い。それから色んな機能がたくさん付いているわけですよ、特に殺傷系の機能が。
イスラエルのはもっとピンポイントで偵察をするとか、或いはピンポイントで誰か暗殺するとか、そういう技術がものすごい優れているわけですよ。値段も安い。どうもこういう技術入れる事考えているんじゃないかなと思うんですよね。
となると、アメリカ一辺倒じゃなくて、アメリカの同盟国であるイスラエルと組むことによって技術を向上させると共に、アメリカと兵器の値段ってあって無き物なんですよ。言い値で買わないといけないんだけども、ちゃんと競争原理を入れていると。
というと今回の日本・イスラエルの共同声明っていうのは、日本の安全保障とか外交政策、今まで日本はアラブ寄りでしたからね。これガラッと変える相当デカいもので、私は集団的自衛権の問題なんかよりもずっと実質的に日本が変わっていくという事だと思うんですよ。
アナウンサー:イスラエルに対する嫌悪感を持っている国々からすると、安倍さんとネタニヤフさんの共同声明の署名っていうのは、日本国内では全然それ程報道されないけども・・・。
佐藤:世界でも報道されてないですからね。だから知らないうちに物凄く大変な事が進んでいるんだと思うんですよね。
イスラエルの無人機
アナウンサー:敏感な国からすると「えーっ!?」っていうことになるわけです?
佐藤:まだあんまり気付いてないと思いますね。今日書いたので気付く人も出てくるかもしれませんけど。
ただ、こういう事を私は何で書いたかというと、やはり知らしめて関係を改善していかなきゃいけないと。重要な事はやはりきちんと説明しないといけないと思うんですよ。
アナウンサー:武器輸出三原則を解禁っていうニュースも一時期ありましたよね。こうなってくると技術協力をするってことは、日本の企業とイスラエルの企業との共同開発っていうのは、タガがどんどん緩んでいく可能性がありますわね?
佐藤:そう思います。ですからナントカ重工系っていう所が非常にこれから元気になってくるわけですよ。
それと同時に先ほど邦丸さん(アナウンサー)仰った武器輸出三原則の緩和の時のポイントは何だったのかっていうと、一番大きかったのは実はイスラエルなんですよ。
次期の主力戦闘機のF35、この部品の42,3%が日本で造っているんですよ。イスラエルは戦争で使う可能性が高いですから。ここで武器輸出三原則を緩めておかないと、イスラエルへの輸出ができない。
となると、この部品は全部韓国に持ってかれちゃった所なんです。だからあそこで緩めなければ、大きな防衛利権は韓国に行っていた。そしたら朴槿恵(パク・クネ)さんもう少し機嫌よかったかもしれませんけどね。
ですから、意外と報道されているんですよ、断片で。しかしそれが、大きな経済的な意味や政治的意味を持っているっていう事が、よく解説されていない事柄っていうのがあるんですね。
その一つっていうのが、今度の日本・イスラエル共同声明なんですよ。ですから安倍政権というのは、相当やっぱり今までにない踏み込んだ事を色々やってます。