人は死なない-ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索-/バジリコ- ¥1,365
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タイトル通り、医師がスピリチュアリズムについて紹介した本で、随分前に東京シルバーバーチ読書会からもご紹介を受けたことがありました。
内容は著者、矢作直樹氏がスピリチュアリズムを信じるまでに至った体験談と、シルバーバーチなどの心霊・スピリチュアリズムの歴史や事象の紹介に費やされています。
まずこの方は臨床医なので、医師の立場から自然科学について論じています。
「生命とは我々が考えるほど単純なものではなく、自然科学としての現代医学が生命や病気について解明できているのはほんのわずかな部分でしかない。
患者さんやご家族からすれば、我々医師は生命ないしは体についてのプロフェッショナルとして期待されていることでしょう。
しかし、我々医師が『あらゆる総合である存在としての生命』について知っていることは、実のところ本当にごく限られたものです」と、自然科学とは地上世界の極めて限定された事象の解明に過ぎないと述べます。さらに自然科学は万能ではなく、おのずと限界もあります。
「本来自然科学の目的は観察対象がどのようにして起こっているのかを明らかにすることであり、それがなぜ起こっているかを問わない。
この『なぜ』を問うことは、従来形而上学の役割でした。つまるところ科学は、その守備範囲を『解けるもの』に限定しています。
20世紀に入って目覚ましい成果を上げた量子力学も、万物がなぜ在るのか、なぜ活動をしているのか、この宇宙全体をコントロールしている力とは何か、といった根源的問いには答えることはできません」
著者の矢作氏は大学時代に登山にのめり込んでおり、その際の不思議な体験も取り上げています。彼は冬山の一人登山に危険を感じつつも、そのスリルが止められず毎年雪山を訪れていました。
ある雪山を縦走していた時のことです。彼は足を踏み外し、あっという間に滑りに滑って、なんと東京タワー3個分の高さから雪の積もった谷間まで滑落してしまいました。しかし身体はかすり傷を負っただけで奇跡的に助かったのです。
落下当時は死を覚悟した矢作氏ですが、無事に雪山を踏破し帰り際になると、懲りずにまた山を再訪したいという思いがそぞろ強くなってきました。来年は大学最後だから絶対来るぞと。その時です。
「突然、岩小屋沢岳の方角から、『もう山には来るな』という谺(こだま)のような声が聞こえました。
私はハッとして思わずあたりを見回したけれど、もちろん誰もいない。幻聴?いや、はっきり聞こえた。瞬間、すべての思考が停止しました」以来彼は憑き物が落ちたように登山と訣別するのですが、このような不思議な体験がベースになり、詰まるところシルバーバーチなどのスピリチュアリズムに行きついたのでしょう。
ちなみに矢作氏が聞いた谺(こだま)のような声は、彼の守護霊だったのではないかとシルバーバーチ読書会でも主催者の方が話されていました。
これは推察ですが、矢作氏はスピリチュアリズムを世に紹介するまで死ねなかったのかもしれません。奇跡的に助かったというのは、霊界からのサポートも厚かったのだと思います。しかし彼は霊界からの警告を無視してしまった。
そこで矢作氏にはっきり聞こえるように、霊界側は「もう山にくるな」というメッセージを送ったのではないかと思います。
奇跡的に助かり回心するというパターンは、先週真珠湾攻撃での飛行隊長であった淵田美津雄・海軍大佐を取り上げましたが、これと同じケースですね。
他にも交霊会で母親と語る模様など、体験談が収録されています。スピリチュアリズムを既に知っている方には一部自明の内容ですが、体験談の部分は興味深かったです。シルバーバーチ書は内容が難しい、という方にもお勧めの本です。
【参考】東京シルバーバーチ読書会
『人は死なない』-ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索、矢作直樹、バジリコ株式会社、2011年