「戦前日本はインテリジェンス大国」への異論 | 太平洋戦争史と心霊世界

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君は必要とされているのだ 

日本製作の伝単



 先日、「戦前日本はインテリジェンス(諜報)大国だった」の記事(以下のリンク)に、あるブロガーさんから反対ご意見をいただきました。

 

 

■戦前日本はインテリジェンス(諜報)大国だった

http://p.tl/3EFl

 

 

 まず、その際は睡魔に襲われ数行のそっけないご返答になってしまい、申し訳ありません。(^_^;) 再度ここで説明させていただきます。

 

 正直なところ、戦前日本のインテリジェンス分野について私自身、自己知識としてまだ全体を網羅できていない状態です。ですから今のところ、戦前の諜報分野は全体としての良し悪しを結論付けられません。

 

 その点で先日の記事タイトル「インテリジェンス(諜報)大国だった」と書いてしまったのはまずかったですね。これは文献の著者、佐藤優氏が著作で述べていた見解であり、私自身が断定したわけではなかったのです。  

 

 思えばこれまで書いた拙記事と相反する意見を載せてしまったわけです。今までは米軍にいとも容易に解読されてしまった日本外務省や、帝国海軍の暗号を批判していたのですから。(以下記事参照)

 

 

■非効率だった日本の暗号システム 

http://p.tl/Pqlu



日本軍部指導者諸君 

アメリカ製作の伝単

 

 

 また日本では諜報は日陰の分野で、軍隊でも満足な教育を施していなかったとも、どこかで書いた記憶があります。

 

 しかし一方で、戦時中の日本のプロパガンダ戦略を見ると、必ずしも日本のインテリジェンスは全て駄目だったと否定できない気もしたのです。以下に日本と米国の伝単の比較がありますが、日本の方が緻密に作成されています。

 

 

■宣伝謀略ビラ 【日本製作編】(1)

http://p.tl/Zsdq

 

■宣伝謀略ビラ 【アメリカ製作編】

http://p.tl/VSHo

 

 

 また謀略放送においても、「東京ローズ」が電波に乗せて送る「ゼロアワー」という報道番組は、聞き手の連合国側でも大変な人気を博していました。

 

 佐藤優氏も、終戦後の米国の日本でのプロパガンダは実に巧妙であったが、戦時中の謀略は特筆すべき程のレベルではなかったと分析しています。字数の関係で具体例は挙げませんが。

 

 佐藤氏の『国家の謀略』から引用しますが、「戦前の日本はインテリジェンス大国だった。旧日本陸軍は、今日のインテリジェンスに相当する概念を秘密戦と規定し、それを(積極)諜報、防諜、宣伝、謀略という4つの下位概念に区分した」と述べています。

 

 しかるに日本は暗号分野で蹉跌を踏みましたが、全体としてのインテリジェンス分野では首肯しうる部分もあるのではないかと思った次第です。



ルーズベルト大統領の風刺画1 

日本製作の伝単


 

 ただブロガーさんが指摘された「日本陸軍の暗号だけ傑出しても、海軍が筒抜けだったのだから、帝国全体としての安全は全うしえなかった」というご意見も、最もですね。

 

 佐藤氏は中野学校出身者に直接聞きとり調査などを行っており、この組織を持ってして彼を、日本はかつてインテリジェンス大国と言わしめているのではないかと推察しています。

 

 しかし私自身中野学校は未開拓な分野であり、まだ手を付けておりません。ではなぜ自分にとって不確定な見解を「インテリジェンス大国」と記事タイトルに据えたのかというと、佐藤氏のこれまでの精緻な分析を担保にした部分も大きかったのです。

 

 「事実に反する『日本褒め殺し』記事は書かない方が良い」というご意見もいただきましたが、このような意図はありませんでした。自分としても、事実を針小棒大、過小評価することは本意ではありません。

 

 時々「戦前日本は素晴らしかった」という、「自信の無い日本人を鼓舞するための提灯記事」を散見しますが、あれも良し悪しだと思います。

 

 ということで、私自身としては戦前日本の諜報分野については、まだ核となる見解が立っておらず、流動的です。この分野に関しては、さらに刻苦勉励する必要がありますね。

 

 お読みくださいました方も、一家言ありましたら異論でも結構ですので、ご意見いただければ幸甚です。