【コミック】 『虹色のトロツキー』と安彦良和 【後編】 | 太平洋戦争史と心霊世界

太平洋戦争史と心霊世界

海軍を中心とした15年戦争史、自衛隊、霊界通信『シルバーバーチの霊訓』、
自身の病気(炎症性乳がん)について書いています。


 ここからは『虹色のトロツキー』の作者、安彦良和さんの話になりますが、安彦氏は機動戦士ガンダムのアニメーターとして有名でした。私も彼の繊細な絵がホント好きでした。



ガンダム 


 ガンダムシリーズも好きでしたが、「ZZ」(ダブルゼータ)とか、安彦さんの絵ではないガンダムは、あまり見る気がおきなかったですね。

 

 最近は「ガンダムUC」(ユニコーン)など、安彦さんがキャラデザインしたシリーズもありましたが、この年になるとさすがに見るのが辛くなってきました。最初だけ見たのですが、絵が綺麗でもやはり話に熱中できない・・・。(^_^;)



安彦良和氏 

安彦良和氏



 でも安彦氏はマンガを描いてもやはり天才的に上手い!『虹色のトロツキー』には実在の人物であった石原莞爾や辻政信が登場しますが、以前掲載していたかわぐちかいじ氏作のコミック『ジパング』にも石原、辻が登場していました。そこで共通して出てきた辻政信を比べてみます。



辻政信 
辻政信・陸軍参謀。最終階級は大佐(本人)


 
辻政信1 

かわぐちかいじ氏、『ジパング』に出てきた辻政信。


 

彼は悪役を演じますが、容姿は結構まとも、下手すると男前と言えるかもしれない程に描かれていますね。(;^_^A  かわぐち氏の絵は目が大きいのが特徴です。大きい方が表情を伝えやすいからだそうです。



辻政信2 

安彦良和氏の『虹色のトロツキー』での辻政信。


 

 安彦氏のキャラは主人公はイケメンに、脇役・悪役はブサイクにデフォルメして引き立て役と、メリハリを効かしているようです。ここでの辻政信も当然悪役です。まあ顔を見てわかりますね。


 それからストーリーですが、かわぐちかいじ氏の方は『ジパング』の草加少佐に代表されるように、人を魅惑するヒーローを中心に据えて創作しています。

 

一方安彦良和氏の方は、主人公にはイケメン・美人を設定するものの、キャラ的には普通の人が中心となっています。

 『虹色のトロツキー』の主人公、ウムボルトにしても、巷のどこかにいそうな人物で、「こうなりたい」と特に憧れ渇望するような人間像には見えません。

 

ガンダムのアムロの性格は安彦氏が作ったわけではないですが、丁度あんな感じです。彼の設定キャラは、アムロが機械オタクで目立たない人物だったように、大衆受けする人物像から少しズレたような設定の主人公が多い気がします。



アムロ 

アムロ・レイ。『逆襲のシャア』で。

 

 

安彦氏の他のコミックは『アリオン』、『我が名はネロ』、『三河物語』など読みましたが、みんなそうですね。

 

 最後に以下に安彦良和氏のインタビューで、かわぐちかいじ氏と対談した際のエピソードの部分を掲載しておきます。



     キリン       キリン       キリン       キリン


■「ガンダム The Origin」安彦氏ロングインタビュー

 

第8回 「翻弄される個人のドラマ」 大きな世界の小さな個人(過去編①)

http://p.tl/V48N

 

 

―漫画全体に話を広げると、破れたり、最後に主人公が死んだりという話も多いと思うのですが、安彦さんがそのようなストーリーを描くきっかけがあるのですか。

 

安彦:これは資質なんじゃないかって気がするんですけどね。この間、漫画家のかわぐちかいじさんと対談していて「全くわれわれ違うタイプだね」と言ったんですけど、かわぐちさんはヒーロー、天才が大好き。

 

彼の作品で日系人が大統領になるという話があって、僕だったら、大統領選挙で「勝つぞ」と思った時に殺されるか何かするんだけど。最後の最後まで「こいつ、きっと非業の死かなんか遂げるんだろう」と思って読んでいたら、かわぐちさんはそうはしないんですよね。

 

勝ったと言って親子で握手して、「頑張る」「お父さん頑張って」で終わるんですよ。「これは資質だね」って言って。

 

 そこにドラマを見る、確かにいるし、天上天下って言っちゃうと本当に世の中がそうなっちゃう大天才とか、「すげえ」と思うのは爽快ですしね。読んだり見たりするのも。「また結末暗いな」というのは、どうもどっちかというと歓迎されない、売れないという。

 

―でも、安彦さんはあえて、ご自身の主義もあって、そういうような展開を描き続けてきたわけですよね。

 

安彦:やっぱりそうなるんですよね。なっちゃうんですよね。これはあの「クリエーターとしては損だな」と思いながら、「その方がドラマなんだよな」とつい思っちゃうんですよね。

 

―ドラマを求めている?

 

安彦:やっぱりドラマ作るんで、ドラマになってるかなと絶えず気にするんで。そのときのドラマがかわぐちかいじ的なポジティブなドラマであったり、僕みたいないじけたドラマだったりってのは、やっぱりタイプじゃないかなと思うんですけどね。

 

なかなかそれは、「どうやったらどっちのが受けるか」みたいなことでは調整がつかない問題だと思いますね。