【コミック】 『虹色のトロツキー』と安彦良和 【前編】 | 太平洋戦争史と心霊世界

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虹色のトロツキー (1) (中公文庫―コミック版)/安彦 良和
¥660
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 ガンダムのアニメーターで有名な安彦良和氏の戦史コミック全8巻です。以前最初の数冊だけ購入してそのままとなり、最近残りを買い足しようやく読み終わりました。

 

 物語の舞台は昭和1314年の満州で、日蒙混血の青年、ウムボルトが主人公となるノモンハン事件の話です。彼が「トロツキー計画」という日本陸軍の一部で画策された謀略(史実にはない架空の話)に関わることで、物語が進行していきます。

 

 満州の建国大学に入学したウムボルトは、その後ドロップアウトして抗日馬賊に身を投じたり、のちに日本陸軍の特務機関に協力、最後は興安軍(モンゴル近い辺境の満州国軍)としてノモンハン事件に巻き込まれるなど、場の視点は日本側、モンゴルや満州側など目まぐるしく変わっていきます。

 

 このコミックは一度サラッと読んだだけでは、内容が複雑でよく把握できないかもしれません。

 時代考証に膨大な時間を割いたことは想像に難くなく、人種の坩堝のような満州社会の内情をコミックとして描ききる部分など、作者の歴史への通暁ぶりに感嘆します。

 

 満州という事で、日本人、満州人、モンゴル人、ロシア人、朝鮮人など様々な民族が登場しますが、各民族を彼ら固有の視点から生き生きと語らせている点にも、安彦氏の知性の深さが伺えますね。

 

 話は虚実入り混じっていますが、実在の人物も多数登場させています。石原莞爾、辻政信、李香蘭、「ゾルゲ事件」に関わった尾崎秀実(ほつみ)、甘粕正彦、満鉄顧問だった松岡洋右(ようすけ)、そして下品な川島芳子・・・。(^_^;)


川島芳子 

「男装の麗人」、川島芳子



 『虹色のトロツキーは』19901996年まで連載されましたが、中身は全く古さを感じさせません。満州とノモンハン事件を知るには面白いコミックだと思います。

 

 

■『虹色のトロツキー』(ウィキペディア)

http://p.tl/LtHA



虹色のトロツキー 
安彦良和さんの漫画はやっぱり元アニメーターだけあって、コマの見せ方がアニメっぽいんですよね。