
元外交官で作家の佐藤優氏による、NSC(国家安全保障会議)と特定秘密保護法に関する解説を4回に分けてご紹介するうちの3回目です。
■『くにまるジャパン』11月1日放送分2〈佐藤優〉
――以前から佐藤さんがご指摘されているアメリカのレッドゾーン外交。ここまで入ったらお前たち許さないからなっていうレッドゾーンがどんどん後退している中で、アメリカは日本のNSCについては?
佐藤:もうそんな余裕ない。アメリカは日本のことなど考える余裕全然ない。もう足もとに火がついている。だからオバマさんもかわいそうなんですよ。盗聴してたなんて知らないですよ。もしかしたらオバマさん自身が盗聴されたかもしれない。
これ今までの蓄積で、結局は日本でも気を付けないといけないんですよね。通信傍受とか、プライバシーを国家が調べるという事になると、担当している人間がのぞき屋の心理になってくるんです。なんでもいいから覗きたい、知りたいと。
それでファイルを積み重ねることだけが目的になって、情報っていうのは有り過ぎると無いのと限りなく近くなりますからね。そういう愚かな事やってるわけですよ。
――盗聴に関して言うと、日本はやってないというが、間違いなくやってますよね?
佐藤:やってるし民間でもできますよね。たとえば広域何とか団体みたいなものが盗聴してますよね、対立組織のこと。あと合法的な形での通信傍受できるわけです。電波法では、通信の傍受っていうのは第三者に漏らさなければ何やっても構わないんです。
ですから無線通信機があって、その無線通信機に自分で暗号解読装置を付けて、何か聞いて、政府無線の通信を解読してもそれ自体は違法にならないのですよね。
――今回、石破茂自民党幹事長が、国会議員も特定秘密保護法の対象になりうると。要するに秘密会ってのがあるんですよね、国会の中で。
佐藤:そうすると、国会議員の中に外国人の奥さんがいると、その秘密会への参加資格はないってことになりますよね。
――秘密が漏れる可能性が大だと思えば秘密会、つまり国会で非公開に行われ国の大事なことを決める秘密会というのは実際開かれているんですか?
佐藤:秘密会は国会にないですね。或いは、国会議員の中でも学生運動とかで逮捕歴がある方もたくさんいますからね。そういう人たちも排除される可能性があるわけですよ。
そうすると国民の代表である人間が、選挙以外の理由によって一部の人が排除されるってこと、これが認められていいのかってことになりますよね。
――そうなると国会そのものの存立が危なくなってきません?
佐藤:まさに正しいわけで、だから統帥権なんですよ。統帥権っていう発想だから民主制と馴染まないわけです。このNSCの発想、特定秘密法の発想っていうのは詰めていくと、必ず民主主義とは馴染まない点があるわけですよ。
国家っていうのは、民意の統制を離れて暴走することがある。暴走が一番起きるのが戦争の時なんですね。ですからまさにそこの、ウルトラマンのヘソみたいなとこなんですよ。この問題は考えないといけない。
まず。何が一体本当の問題になっているのか。戦争が問題になっているんだよと。我が国は戦争できる体制に転換しようとしているんですと。だからそれに関して国際情勢変わっているから仕方がないと考えるのか。
或いはそういう状況であっても戦争という手段だけは取らないという、これが前の戦争の負け戦を踏まえた上での我が国の方針だからと、これはちょっと違うんではないかと。
こういう本当は国民的な議論をしたうえで、選挙を経て決めないといけないことが、なし崩しになっちゃってるわけですよ。
すると、さっきの秘密会を行うでしょ?その秘密会の多数決で議員を除名にすることだってできるんですよ。そうするともし与党が三分の二を取って、秘密会システムを使っていけば合法的に野党全部追い出しちゃうことだってできるんですよ。
じゃどこで運営するかっていうルールブックのことをそのまんまやればいいってことじゃなくて、これはやっていいんだ、いけないんだってことは、やはり国民の世論を見てストップしないといけないわけですよ。