
元外交官で作家の佐藤優氏による、NSC(国家安全保障会議)と特定秘密保護法に関する解説を4回に分けてご紹介します。
■『くにまるジャパン』11月1日放送分1〈佐藤優〉
【ニュース】NSAアメリカ国家安全保障局がグーグルやヤフーに侵入し、電子メールなど大量の情報を入手しているとの疑惑が先月(10月)30日、新たに浮上しました。国内からNSA批判が噴出しそうです。
ヨーロッパへの同盟国への盗聴疑惑が外交問題に発展する中、オバマ政権への対応が国の内外で後手に回っているとの印象が強まっています。
――NSA、アメリカ版じゃなくて今度日本版のNSCというのを創ろうとしているわけなんですけども、このアメリカ国家安全保障局が盗聴ということをやっている・・・。
佐藤:国家安全保障局っていうのは、本当にやっていることをよく分からなくするための名前で、本来の仕事は国家盗聴局です。ですからNSAが盗聴やっても全然業界人には驚きじゃないんですよね。泥棒が泥棒しているようなもんで。
――日本版NSCと特定秘密保護法がセットになっているということなんですが。
佐藤:これはセットです。
――以前から佐藤優さん、NSCを創るというのは、秘密を守る云々ということだけじゃなくて、この国のあり方まで変えてしまう事になると仰っていたのですが。
佐藤:そうです。NSCとは何をやるかを一言で言うと、戦争するかしないかを決める所なんですね。ところが、日本では憲法9条あります。交戦権放棄してますから戦争しないことになってるんですよ。
そうすると戦争について決める機関がないんですよね。今までは、攻めてきた時だけに反撃するということだから、主体的に判断しないわけでいいんですよ。もっぱら守る専守防衛と。しかしよく考えてみると、守ることは攻めることじゃないかと。こういう発想にもなってくるわけですよね。
ですからNSCを創るってことは、日本が戦争できる体制にしていくと。となると、ちょっと古い言葉なんですけど、統帥権という言葉があるんですよ。統帥とは軍隊を指揮する最高の権力っていう意味です。
それが戦前は天皇のもとにある。天皇のもとで参謀本部(陸軍)と軍令部(海軍)が持っているという事になったんです。陸軍大臣、海軍大臣は内閣に属してるんです。
それとは全く関係ない所で、天皇と直結しているっていう独立している組織という事になって、そこが段々肥大して戦争への道へ進んじゃった訳ですよね。NSCはそれと同じような機能果たすことになりますね。
――戦前、大日本帝国憲法には統帥権というものが書かれていたんですか?天皇が有しているけれども実際に行使するのは参謀(陸軍)、軍令部(海軍)ということになってたわけですね。
佐藤:それと同じような事をやろうとしているというか、国際情勢変わっちゃったんですよ。だからサイバーなんていうのは、何が攻めで何が守りかなんてよくわからないんですよね。こういうものに対処しないといけないし、国境を越えた国家じゃないところ、例えばテロリズムの脅威にどう対処するかということになると、今までの形で対応できない。
実はもう、曖昧な形で20年前くらいから日本の国家のあり方って変わっちゃって、集団的自衛権も事実上やっているわけです。イラクに行ったりとか、インド洋で洋上補給して、ツジツマが合わなくなっちゃったんです。その今の辻褄合わせをしているのが特定秘密法であるし、NSCを創るっていう話であると僕は見ているんです。
――ただNSCと特定秘密保護法案ですね、この危うさというのは随分言われるようになってるんですが、確信的にこれはまずいって所がありましたら・・・。
佐藤:それ以前の問題なんですよね。実は、安倍政権だけじゃなくて前の民主党政権もそうだったんだけども、あの人たちは白紙委任状を国民から得てるんだと勘違いしているんだと思う。自分たちが考えて国家のためになるっていうんだったら何やっても構わないと思っている。
ところが、NSCに関してはまず言わないといけないのは、戦争するか、しないかを決めるための機関ですよと、これをはっきり言って、こういう機関を創るっていうことについて、国民の皆さん、理解してくださいと。
或いは国民が理解できないという事だったら、創るっていう議論は待たないといけないんですよ。そういう所を一切やらないで、自分たちが思う所でお国のためになるからと、ブワーッと暴走している感じですよね。それが怖いです。
ですからそこの所で、色んなカモフラージュなんですよ。例えばさっきのアメリカのNSA。NSCってアメリカにもあるんですよ。一文字違い。国家安全保障局っていうと、ああ、国の安全を保障するものだっていう一般論として、いいことですか、悪い事ですか?いいことだと思う。
これがもし国家盗聴局や国家通信傍受局って言ったら?それはいやだと、だからカモフラージュしているわけですよ。
今NSCっていうのは、NSCのいろんな議論を見ていると、この前みたいに大きな台風があった時にもNSCなのか?或いは伝染病、地震対策、金融危機は?これはNSCじゃないかと、こういう議論になってるんですね。これ全然関係ないんですよ。危機管理とNSCとは関係ないんです。
それから、テロに対する情報とか北朝鮮情報とか今での普通の外交じゃだめだよねと。だから対外情報機関を創らないといけないと。これもNSCと関係ないんですよね。これ対外情報機関の話です。
NSCは情報間違えていても行く!って決めたら戦争すること決めちゃうんですよ。じゃ、NSCは何やっているのかと。それは秘密だから言えないと、こういう話になるんですよ。